本木雅弘、松坂桃李ら名優たちの息詰まる競演!役所広司の鬼気迫る演技も見逃せない「日本のいちばん長い日」
2023.8.1(火)
平和への思いを強く噛み締めたい1日となる「終戦の日」が今年も近づいてきた。1945年8月15日、日本は一体どのように終戦を迎えたのか。映画「日本のいちばん長い日」では、日本歴史上でも"最大の決断"が下された瞬間の裏側を描いている。
半藤一利の傑作ノンフィクションを、原田眞人監督のメガホンによって、岡本喜八監督の1967年版以来48年ぶりに再映画化した本作。太平洋戦争末期、日本に対して無条件降伏を迫る連合国軍によるポツダム宣言が発せられた。降伏か、本土決戦か。連日連夜、閣議が開かれ議論は紛糾するが結論は出ない。続いて広島、長崎に原爆が投下され、いよいよ苦渋の決断を迫られる...。日本の前途を巡って、ギリギリの攻防が繰り広げられた緊迫の24時間を描く。
(C)2015「日本のいちばん長い日」製作委員会
日本を代表する名優たちの息詰まる競演も大きな見どころだ。陸軍大臣の阿南を演じたのは役所広司。昭和天皇の身を案じつつ、ポツダム宣言を受諾しようとする政府、徹底抗戦を唱える陸軍の若手将校の狭間で揺れる阿南の苦悩を体現し、鬼気迫る演技で釘付けにされる。
昭和天皇役の本木雅弘は、大きなプレッシャーがかかる役柄だっただろうと想像するが、一人でも多くの国民に生き残ってほしいと願う天皇の慈悲深さを、静かな情熱を漂わせながら見事に演じ切っている。
日本の降伏を国民に伝える玉音放送は、きっと誰もが記録資料を通して耳にしたことがあるはずだが、劇中では昭和天皇が玉音放送を吹き込む場面もある。本木が声のトーンや話し方も研究して臨んだことが伺えるなど、しっかりと胸に残るシーンとして表現した彼の役者魂に驚かされること必至。また本作を観ると、玉音放送が流れるまでには、録音原盤を守ろうとした人々がいたことも分かる。彼らの繰り広げるドラマも注目ポイントだ。
(C)2015「日本のいちばん長い日」製作委員会
そして、終戦に反対してクーデターを計画する若手将校の一人である畑中少佐役を松坂桃李が担った。血気盛んな若者で、陸軍の栄光を守ることに命を注いでいる畑中。日本が降伏へと傾く中、「まだ戦える!」とやり場のない怒りを机にぶつける瞬間は、狂気を宿した彼の瞳に恐ろしさすら感じる場面となっている。
畑中が暴走していく様子をヒリヒリとするような緊張感と共に演じた松坂だが、純粋なまでの信念と覚悟が伝わるキャラクターとして畑中を演じており、見ている側も大いに心を揺さぶられるはず。
さらに閣議を動かしてゆく鈴木貫太郎首相を演じた山崎努(※「崎」は正しくは「立さき」)、ただ閣議を見守るしかない迫水久常書記官役の堤真一など、豪華キャストが熱演を披露しており、当時を生きた人々のそれぞれの立場、それぞれの正義、それぞれの信じる道が交差する中、時代は大きくうねり、8月15日を迎えたことがひしひしと伝わってくる。
スリリングな展開に手に汗握るような映画体験ができるうえ、戦争の暴力性や悲惨さを痛感できる本作。ぜひ映画をきっかけに、終戦の日について思いを馳せてみてはいかがだろう。
文=成田おり枝
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