二宮和也の自然体な演技が印象的!日本の俳優陣が戦場のリアリティを体現した「硫黄島からの手紙」
2023.7.29(土)

昨年末に公開された主演作「ラーゲリより愛を込めて」(2022年)の大ヒットも記録に新しい二宮和也。運命に翻弄されながら再会を願い続けた夫婦の11年に及ぶ愛を描いた感動作で、シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に抑留された日本人の中で生きることへの希望を捨てなかった男・山本幡男を二宮が熱演した。
同作などの演技が高く評価され、第65回ブルーリボン賞主演男優賞の初受賞を果たしたが、二宮が出演した戦争映画として思い出される作品と言えば「硫黄島からの手紙」(2006年)が挙げられるだろう。クリント・イーストウッドが監督を務め、スティーヴン・スピルバーグが製作を担当した本作。「父親たちの星条旗」(2006年)に続く硫黄島での戦いを日米双方の視点から描いた2部作の第2弾で、日本側の視点から深く掘り下げて描かれた。

(C) Warner Bros. Entertainment Inc. (C)DreamWorks Films L.L.C.
1944年6月、日本軍の戦況は悪化の一途をたどっていた。最重要拠点である硫黄島に新たな指揮官・栗林忠道中将がやってくる。過酷な灼熱の島で掘り進められる地下要塞が、圧倒的なアメリカの兵力を迎え撃つ栗林の秘策だった。最後まで生き延びて、本土にいる家族のために1日でも長く島を守り抜く。「死ぬな」と命じる栗林の指揮のもと、5日で終わると思われた硫黄島の戦いは36日間にも及ぶ歴史的な激戦となる...。
二宮が演じたのは、本土防衛の最後の砦でもある硫黄島に配属された日本兵の一人、西郷。やる気も根性もなく、文句を言いながら塹壕を掘る姿は諦めに似た哀愁を感じさせ、今時の若者のように軽口を叩き、不貞腐れ、要領の悪さから頻繁に叱られている。
兵士らしからぬ態度で戸惑い怯え、友の死に怒りや疑問を抱く西郷。次々と簡単に死んでいく仲間、命乞いをする敵兵や投降しようとする部下を躊躇なく殺す姿...。この世の地獄を目の当たりにしてなお人の心を失わず、正しく傷つき涙する。この時代に生きた一人の人間の心情を、二宮は自然体で演じた。
映画の語り部も担う西郷は、この物語と現代の人々を繋ぐ役割も担っている。彼の目を通して、戦争の悲惨さや虚しさが映し出されていた。すでに演技力への評価も高かった二宮だが、その才能は本作でのハリウッドデビューを経て世界的にも知られることとなった。

(C) Warner Bros. Entertainment Inc. (C)DreamWorks Films L.L.C.
日本陸軍きっての知将・栗林中将は、「ラスト サムライ」(2003年)でも知られる渡辺謙が熱演。他にも伊原剛志、加瀬亮、中村獅童ら日本の俳優陣が、圧倒的な熱量で日本の軍人・兵士の役を演じ切った。激戦の舞台となった硫黄島の戦いを日本側の視点から鮮烈に描写した本作。印象的な演技を見せた二宮をはじめとするキャストの熱演が、物語に一層のリアリティを持たせた。今に続く過去を懸命に生きていた一人ひとりに思いを馳せることができる、戦争映画の名作の1本と言えるだろう。
文=中川菜都美
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