吉岡里帆の、言葉はなくとも十二分に心情を伝える演技にのめり込む!仲野太賀と共演した映画「泣く子はいねぇが」
2023.7.28(金)

整った面立ちに透明感のある美肌、心の動きを如実に伝える瞳。吸い込まれるような美貌はもちろん、演技力の高さと強烈な存在感で映画やドラマ、CMにも引っ張りだこの女優・吉岡里帆。
幼い頃から映画や舞台に興味があったという吉岡は、俳優養成所に通ったり、エキストラや舞台などに参加しながら経験を積んだという。努力と経験によって培われた演技力への評価は高く、近年では映画「ハケンアニメ!」で主人公の新人アニメ監督を演じ、第46回日本アカデミー賞の優秀主演女優賞など多数の映画賞を受賞している。
繊細な心情表現が求められるヒューマンドラマでは、特に吉岡の演技力が光る。ここでは吉岡が圧巻の演技で視聴者を引き込んだ、2020年公開の映画「泣く子はいねぇが」を紹介していく。

(C)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会
舞台は秋田県・男鹿半島。地元の伝統行事「ナマハゲ」をストーリーに取り込みつつ、大人になりきれない主人公・後藤たすく(仲野太賀)の成長を描き出す。吉岡が演じるのはたすくの妻・ことねで、2人の間には最初から険悪なムードが漂う。
たすくが娘の出生届を市役所に出して家に戻ると、ことねがそのコピーを見て間違いを発見。間違いを大して気しないたすくに、ことねは「何ヘラヘラしてんの?」と怖い顔を向ける。さらにたすくは、行かないはずだったナマハゲの行事に参加することを打ち明ける。ことねの表情にはもう諦めすら漂っていて、行事の日はお酒を飲まないことを約束させて参加を認める。
この一連のシーンだけでも、何に対しても真剣さが感じられず、娘が生まれても父親になる覚悟が決まらないたすくへの鬱憤を、ことねが溜め込んでいることがわかる。やつれた顔で言い放った「いつか限界になる、絶対」というセリフからも、ことねの心情が痛いほどに伝わってくる。
そして、「限界」はすぐさまやってきた。行事に参加したたすくが約束を破って酒を飲んだばかりか、ナマハゲのお面だけをつけ全裸で町を駆け回ったのだ。悪いことに、ちょうどナマハゲを取材に来ていたTV局によって、その様子は全国に放送されてしまった。

(C)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会
場面は飛んで2年後、ことねと別れたたすくが東京でひとりで暮らしている様子が映し出される。相変わらず度胸も中身もないたすくだが、地元から出てきた友人に、ことねが水商売で働いていることを聞かされ、秋田に舞い戻る。
しかし、たすくと再会を果たしたことねは、汚いものでも見るような目で「何しに来たの?」と問いかけ、真っ直ぐにたすくを見つめて養育費、慰謝料、さらには再婚する話までぶつけていく。その時のことねは、身体の中から何かが膨れ上がっているような印象を受ける。恐らくたすくに対する怒り、呆れ、諦めが入り混じった、複雑な感情が心の中に渦巻いているのだろう。
そうしたシーンを見るにつけ、吉岡が演じることねは、ふわふわした、地に足の付かない生き方をしてきたたすくに現実を突きつける存在と言える。そしてそのシーンに強烈な印象を受けるのは、吉岡がことねの心情を十二分に表現しているからだろう。

(C)2020「泣く子はいねぇが」製作委員会
特に注目したいのは、ことねがたすくの母とパチンコ店でバッタリ出会って会話する場面。この作品には独特の"間"があるのだが、その間の中で少しずつ表情を変え、気持ちが揺れ動くさまを表現するシーンは絶品というほかない。
本作は、かの是枝裕和監督が才能を認める佐藤快磨監督の初の商業監督作であり、スペインの映画祭の第68回サン・セバスティアン国際映画祭で最優秀撮影賞を受賞するなど、何かと話題にもなった。吉岡の演技と共に、日本映画の未来を担うであろう佐藤監督渾身の作品をじっくりと味わってはいかがだろうか。
文=堀慎二郎
放送情報
泣く子はいねぇが
放送日時:2023年8月1日(火)11:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
放送日時:2023年8月14日(月)11:45~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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