映画初主演のオダギリジョーが他人と上手く折り合えない青年を好演!鬼才・黒沢清が監督を務め、浅野忠信の深みがある演技も魅力の映画「アカルイミライ」
2023.2.17(金)
「アカルイミライ」(2003年)が3月7日(火)に日本映画専門チャンネルで放送される。「CURE」(1997年)で世界的に注目を集めた鬼才・黒沢清監督が描く異色の人間ドラマだ。第54回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞した『回路』(2001年)に続き、本作も第56回カンヌ映画祭コンペティション部門に出品された。

主人公の仁村雄二は人と接することが苦手で、生きる目的を見出せないでいた。同僚の有田守だけには心を許していた雄二は、守が飼っている猛毒のアカクラゲに興味を示すようになる。しかし、守はクラゲを雄二に託して忽然と姿を消してしまう。そんな中、雄二の前に守の父親である真一郎が現れ、 雄二はいつしか真一郎のもとで働くことに...。世代も考え方も違う2人だったが、次第に東京の河川でアカクラゲを繁殖させるという計画に熱中していく。
雄二を演じたのは、ドラマ「サトラレ」(2002年)や「天体観測」(2002年)など若手人気俳優として頭角を現し始めていたオダギリジョー。映画初主演ながら、未来への漠然とした不安と焦燥感を抱えた青年を熱演した。死んだような目でゲームに興じ、自分をコントロールできず突然怒りを爆発させる。思いを表現する言葉を持たない雄二の、ふてくされたような表情や若く尖った顔つきに惹きつけられる。兄のように慕う守にだけ見せる甘えた素振りが幼く可愛らしく、行き場を失った後の戸惑いや悲しみとのギャップが刺さる。

雄二が信頼を寄せる守は、浅野忠信が演じた。主演映画「地雷を踏んだらサヨウナラ」(1999年)などの演技で国内の映画コンクールの主演男優賞を受賞するなど、当時から既に実力派として高く評価されていた。気だるげで妙な色気を感じさせる佇まいが、作品の不思議な世界観とマッチしている。暴走しかける雄二をなだめる優しい声や微笑み、底の読めない瞳も意味ありげな言動も、作品に強烈な印象を残している。その不器用さすら、格好良い。社会の片隅に生きる守や雄二の心の闇が、小さな水槽に漂うアカクラゲの猛毒と重なって見えた。上手く言葉で伝えられない彼らの複雑な感情を、2人が漂わせる雰囲気や表情、さりげない仕草で繊細に表現している。

守の父親を演じる藤竜也の好演も、作品に奥深さを加える。社会や人と折り合いをつけられず、もがきながら生きる青年たち。後悔を抱えながらも現実を見つめ、彼らに手を差しのべる中年男。彼らの葛藤や悲哀が色濃く映し出される。雄二が真一郎との心の触れ合いを通じ、未来を探求し、少しずつ歩みを進めていく姿に希望を感じさせる。不器用な青年の生き様を描いた本作では、若き日のオダギリと浅野の個性が際立っていた。
文=中川菜都美
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