ディーン・フジオカが「第2の故郷・インドネシア」で見せた、自然に溶け込む不思議なオーラ
2023.7.25(火)
俳優として確固たる地位を確立し、ミュージシャンやモデル、映画プロデューサーと、多彩な才能を発揮しているディーン・フジオカ。最近も、台湾で制作されるNetflixオリジナルドラマ「次の被害者(中国語題:誰是被害者)」Season2への出演が発表されており、グローバルな視野と高い言語能力を持つディーンならではの演技が大いに期待を集めている。
俳優として注目されるきっかけとなった台湾をはじめ、アジア各地で活動してきたディーンにとって、第2の故郷といえば家族のいるインドネシアだが、そのスマトラ島の都市バンダ・アチェで全編撮影を敢行した作品が、2018年に劇場公開された映画「海を駆ける」だ。
(C)2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS
本作は、2016年の映画「淵に立つ」で第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査員賞を受賞した深田晃司監督が手がけた心揺さぶるファンタジー。2004年の大震災で起きた津波で壊滅的な被害を受けたことで知られるバンダ・アチェの海岸で、謎の男が発見されるところからストーリーは始まる。
(C)2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS
海に打ち上げられた謎の男は、片言の日本語やインドネシア語を話すが、その正体は分からず、日本から移住して災害復興の仕事している貴子(鶴田真由)が、いったん引き取ることになる。貴子たちが男の身元捜しに奔走する一方で、インドネシア語で"海"を意味する"ラウ"と名付けられた男の周辺では、不思議な現象が起こり始める。
(C)2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS
謎の男・ラウを演じたのが、当時、NHK連続テレビ小説の第93作「あさが来た」(2015年)で大ブレイクを果たしていたディーン。青く美しい海辺に突然現れた彼は、名前も国籍も何も分からない。それでも怯えたり焦ったりすることもなく、ただ静かに優しく微笑んでいる。性別を超越した美しさにミステリアスな雰囲気を纏う。
幼な子のようにピュアな無邪気さを湛える瞳は、どこか遠くを見つめている。人間に慣れていないかのようなぎこちない動きをしながら、多くは語らないが日本語やインドネシア語に英語まで使い分ける。どこにも何にも属さない人智を超えた存在のような難役を担うディーンの静かな演技が光る。何の違和感もなく、自然と溶け込む。その不思議なオーラにただただ圧倒された。
(C)2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS
また、ラウに関わる人々にも実力派が起用された。深田監督とは「淵に立つ」に続き3度目のタッグとなる太賀をはじめ、鶴田真由や阿部純子ら日本人キャストも、それぞれのキャラクターを好演した。特に太賀と鶴田は現地に暮らす日系人という役柄ゆえ、インドネシア語での膨大なセリフを習得すべく短期間で猛特訓を重ね、撮影中も熱心に練習を続けていたという。「鳥肌が立った」とディーンが称賛するほど見事なインドネシア語を披露した2人の自然な佇まいにも注目したい。
(C)2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS
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カンヌに見出された才能・深田監督が、7年の歳月を費やしたオリジナル脚本による渾身の衝撃作。傷を抱える街や人、様々なバックグラウンドを持つ若者たちの瑞々しい会話、優しく穏やかに彼らを見守る母の温もり。しかし、そのすぐ隣には人間の力など遠く及ばない存在がある。理由もなく命さえも奪いながら癒しや恵みをもたらす大いなる自然、時に不条理な人生の残酷さと美しさ。人間の姿をした何者かを演じたディーンの静かな微笑みに、その意味を深く考えさせられる。
文=中川菜都美
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