実写版「ひぐらしのなく頃に」で前田公輝、飛鳥凛、松山愛里らが与えたもの
2023.7.18(火)

毎年、数多くのホラーサスペンス作品が制作されているが、それらの中でヒットを飛ばす作品には共通したいくつかのポイントがある。例えば、観る者を引き込むストーリーやメガホンを取った監督の手腕などがそうで、「貞子」や「伽椰子」といった作品のアイコンとなるキャラクターもその一つだ。そして、作品の登場人物を演じる役者の"怖がる"以外の演技も欠かせない要素といえる。そんな中で、登場人物を表現する役者陣の演技が作品のヒットに大きく影響している作品が、前田公輝が主演を務め、飛鳥凛と松山愛里が共演する映画「ひぐらしのなく頃に」(2008年)だ。

(C)2008竜騎士07/オヤシロさまプロジェクト
同作品は、同名人気ゲームを映画化したもので、昔ながらの村社会の様相を残す村落で発生した連続怪死・失踪事件の顛末を描いたホラーサスペンス。昭和58年5月、東京から寂れた村落・雛見沢村に、高校生の前原圭一(前田)が引っ越してくる。すぐに園崎魅音(飛鳥)や竜宮レナ(松山)といったクラスメートと仲良くなり楽しい日々を過ごしていた圭一だったが、ある日、毎年この村で行われる夏祭りの日に一人死んで一人消息不明となる奇怪な事件が起きていることを知る。

(C)2008竜騎士07/オヤシロさまプロジェクト
主人公の圭一が意図せず連続怪死・失踪事件について知ってしまったことで、事件に巻き込まれていくという展開で、"事件は村人たちによるものなのか、それとも呪いなのか"という部分が同作の核となっている。魅音やレナの怪しい言動や後半に見せるギャップ、そしてそれらによって圭一の不信感から恐怖へ変わり、半狂していく反応がホラーサスペンスの醍醐味の礎となっている。しかし今回は、あえて作品の前半に目を向けてみたい。
"怖さ"や"ゾクゾク感"というものは、物語の前段で平和で楽しい雰囲気であればあるほど落差が生まれ、その効果を倍増させる。いわば前振りが重要なのだ。さらに、"楽しさ"だけでなく、その部分でキャラクターたちの人柄で性格、関係性、背景、抱えているものや悩みを描くことで、人間ドラマの要素を濃くし、作品に厚みを帯びさせていくことが肝要。ただの少年少女が、よく分からない異形のものに襲われるだけだと薄っぺらくなってしまい"怖さ"も引き出せない。例えば、異形のものでも「こういう無念があって非業の死を遂げた」という理由づけされることによって、切なさだったり執着の強さを描写できるし、観る者の"怖さ"も増幅させることができる。

(C)2008竜騎士07/オヤシロさまプロジェクト
同作においても、前段となる圭一が連続怪死・失踪事件について知ってしまうまでが素晴らしい。都会から田舎に引っ越してきた拗ねた様子の圭一、そんな圭一を明るく迎える魅音やレナたち、周りの温かさに触れて心を開いていく圭一、仲の良い幸せな日々をすごす3人など、前田ら3人がそれぞれの役をフレッシュに瑞々しく演じている。つまり前段では、彼らの繊細で等身大の演技によってしっかりとした青春群像劇となっているのだ。
だからこそ、ホラーサスペンス部分が怖い。あの仲の良かった3人の関係性が不信感に飲み込まれていく不気味さ、恋愛が始まりそうなくらい親しかった人の変貌による恐怖感など、深みのある恐怖を生み出している。当時若手俳優だった3人のフレッシュで瑞々しい演技をしっかり堪能した上で、メインディッシュとなる落差の大きい恐怖感を味わってみてはいかがだろうか。
文=原田健
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