スペシャル版には仲間由紀恵も出演！唐沢寿明＆広瀬アリスのコンビ感が絶妙な「ハラスメントゲーム」

2023.7.12(水)

社会に蔓延るパワハラやセクハラといったハラスメント事件をテーマにした2018年の意欲作「ハラスメントゲーム」。スーパー業界大手の老舗会社を舞台に、主人公と仲間たちが社内に起こる様々なハラスメント問題を奇抜なアイデアと手法で解決していく異色作で、キャストの好演も高く評価され、SNSでも大きな話題を集めた。

「マルオーホールディングス」の富山支店長・秋津渉は、ある事情から左遷されて家族で地方に移り住んでいた。しかし突然、コンプライアンス室長として本社に呼び戻される。実はこの異動命令には、社長や取締役たちのある思惑が隠されていた...。

秋津を演じたのは唐沢寿明。スーパーの店長として誇りを持って働いていたが、コンプライアンス室の室長に異動となり、会社で起きるハラスメントとの闘いに挑む。普段は飄々としているが、固定観念を打ち破る行動力のある秋津。時に強引ながら人の懐にするりと入りこみ、核心をつく。心の叫びのような熱い言葉が周囲を変えていく。

そんな秋津と二人だけのコンプライアンス室で働く高村役には、広瀬アリスが起用された。高村は自分の意思を持ち、上司にも物怖じせず意見できる芯のある女性だ。正義感の強さを持つ一方で真面目すぎるところもあるが、古川雄輝が演じる顧問弁護士・矢澤の好意に気づかない鈍感さや秋津の言動に素直に反応する愛らしさも見せる。

破天荒な秋津に振り回されながらもその背中を見て懸命に成長し、愛する仕事に真っ直ぐに向き合う姿が広瀬とリンクする。シリアスとコミカルのバランスも程よく、唐沢との凸凹コンビ感が絶妙なヒロインを自然体で好演した。

唐沢や広瀬のほかにもCEO役の滝藤賢一、本社幹部役の佐野史郎や高嶋政宏(※「高」は正しくは「はしご高」)らベテラン勢も多数出演している。異物混入やパート一揆、リストラにカスタマーハラスメント...と、会社で巻き起こる問題は尽きない。志田未来や余貴美子、斎藤工など各話に登場するゲストたちも物語を盛り上げる。演技派キャストと共に、現代社会において多くの人が悩み苦しんでいるテーマを一話完結のシリーズで取り上げた。

2020年にはドラマスペシャルとして「ハラスメントゲーム　秋津VSカトクの女」も放送された。「働き方改革」をテーマとするスペシャル版では、過重労働撲滅特別対策班(通称カトク)の敏腕労働Gメン・鮫島冴子役で仲間由紀恵が参戦。食らいついたら標的を離さないことから"人食いザメ"と恐れられている役どころだ。

関西のおばちゃん風の変装をして潜入調査をしたかと思えば、雰囲気をがらりと変えて部下を従え颯爽と現れる。自らの正義のもと、鋭い視線で厳しい言葉を放つクールさが仲間の美しさを際立たせる。ブラック企業の疑いを受けて"カトク"に調査されることになったマルオーを救うために奔走する秋津と、徹底的な調査を開始する鮫島が手に汗握る闘いを展開させた。

本シリーズは、「白い巨塔」(2003年)、「14才の母」(2006年)、「緊急取調室」シリーズ(2014年〜)と長年多数の話題作を手掛けてきた井上由美子が脚本、「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」シリーズ(2008年〜)で知られる西浦正記が監督を担当。井上、西浦ともにテレビ東京の連続ドラマは初担当となったが、タイムリーかつセンシティブなテーマを真っ向から描いた、痛快なヒューマンエンターテイメント作に仕上がっていた。

文＝中川菜都美

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