池井戸潤作品初参加の阿部サダヲが好演！上戸彩、玉森裕太(Kis-My-Ft2)との息の合った掛け合いも見応えのある「シャイロックの子供たち」

2023.2.16(木)

組織で働く人々にフォーカスを当て、業界の内部に鋭くメスを入れた社会派エンターテイメントの傑作を生み出し続けている作家・池井戸潤。メガバンクを舞台とした「半沢直樹」シリーズに代表されるように、元銀行員という自身の経歴を生かした著作の多くが映像化されてきたが、その最新作となる映画「シャイロックの子供たち」が、2月17日(金)に公開される。

2018年に大ヒットした「空飛ぶタイヤ」の本木克英監督をはじめ、メインスタッフが再集結し、メガバンクで起きた現金紛失事件の顛末が描かれる本作。「映画『シャイロックの子供たち』公開記念特番」では、阿部サダヲ、上戸彩、玉森裕太らキャストへのインタビューやメイキングを交えながら、その見どころに迫っていく。

今回初めて映画化された「シャイロックの子供たち」は、池井戸自身が「ぼくの小説の書き方を決定づけた記念碑的な一冊」と名言。まさに池井戸作品の原点であり最高峰とも言える1作で、昨年ＷＯＷＯＷでドラマ化されたことも話題を集めた。そんな原作やドラマ版とも展開が異なり、独自キャラクターが登場する今回の映画版では、池井戸潤も太鼓判を押す脚本により、完全オリジナルのストーリーが紡ぎ出されていく。

メガバンクのとある支店で、現金紛失という事態が発生し、ベテランのお客様係である西木(阿部サダヲ)は、営業課の部下の愛理(上戸彩)や、後輩の田端(玉森裕太)と共に事件の真相を探ることに。そこで浮かび上がってきたのは、一見平和に見える組織で働く銀行員それぞれの"裏事情"。やがて遂にある真実へと辿り着く西木だったが、それはメガバンクに蔓延る不祥事の始まりに過ぎなかった...。

池井戸作品らしく、１つの事件を背景にあぶり出される複雑かつ濃密な人間ドラマが描かれる本作。その中で物語の軸となるのが、阿部サダヲ、上戸彩、玉森裕太が演じた事件を追う3人の主要キャラクターだ。

阿部サダヲが演じる"暴く男"こと西木雅博は、普段は穏やかで明るい人柄だが、鋭い洞察力や冷静な一面も併せ持つどこか掴みどころのない男。阿部は自身の持ち味である飄々とした空気感で、この一見平凡な"中間管理職"の人物像を体現しており、急に饒舌になるなどメリハリのある演技を見せている。やる気があるのかないのかよく分からない...そんなどことなく信用ならない雰囲気を漂わせ、物語に深みを与えている。

西木と同じ支店で働く営業課の真面目な部下・北川愛理を演じるのが上戸。同じくメガバンクを題材とした「半沢直樹」では、主人公・半沢直樹を支える妻・花役での明るくキュートな姿で、緊迫感溢れる物語の中で"一服の清涼剤"的な存在を担っていた。ところが一転、今回は現金紛失の犯人に"疑われる女"として登場。きっぱりと身の潔白を訴えるも、ふと浮かべる思い詰めた表情など、何か裏を感じさせる絶妙な演技を見せている。

そしてKis-My-Ft2の玉森裕太が演じるのは、お客様二課に勤める田端洋司。西木らと共にメガバンクに蔓延る闇に直面しながらも、現金紛失事件の真相を突き止めていこうと奮闘する"疑う男"を熱演している。

組織内のあらゆる人物に向けていく疑念に満ちた険しい眼差し、次第に正義の価値観を揺さぶられていく繊細な表情など、巨大な問題にぶち当たった若き銀行員の心の葛藤を、控えめながらも巧みに表現してみせた。

組織で繰り広げられる人間ドラマこそ、その真骨頂と言える池井戸作品らしく、脇を固めるキャラクターも重厚感溢れるクセモノ揃い。出世コースから外れた支店長・九条馨に柳葉敏郎、常に怒号を発する超パワハラ副支店長・古川一夫に杉本哲太、事件を追う本部検査部の嫌われ者である黒田道春に佐々木蔵之介など、実力派たちが圧倒的な熱量で役に命を吹き込んでいる。

また、映画オリジナルキャラクターで謎の男・沢崎肇に柄本明、銀行の顧客で怪しげな言動を見せるキーマン・石本浩一には橋爪功という大ベテランが起用。腹に一物を抱えた素振りで物語に更なる謎をもたらしていく。

そして謎が謎を呼び、深淵なる池井戸ワールドの深みに嵌っていくのだが、果たしてメガバンクに蔓延る事件の真相とは何なのか。映画版ならではのオリジナルストーリーにも着目しながら、その行方を見届けたい。

文＝HOMINIS編集部

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