草なぎ剛の穏やかな声で物語に引き込まれる...少年時代のまぶしい夏を描く映画「サバカン SABAKAN」
2023.7.6(木)
時には映画、時にはテレビと、その類まれなる繊細な演技によって人々の心を釘付けにしてきた俳優・草なぎ剛(※草なぎの「なぎ」は正しくはゆみへんに「剪」)。優しく響く低音ボイスの持ち主でもあり、ナレーターとしても活躍している。紀行バラエティ番組「ブラタモリ」では2015年から現在まで、ゆったりとしたナレーションで好評を博している。そんな草なぎが出演した映画「サバカン SABAKAN」が、日本映画専門チャンネルで7月9日(日)にTV初放送される。
舞台は、1986年の長崎。夫婦喧嘩は多いが愛情深い両親と弟と暮らす久田(番家一路)。ある日、家が貧しく、敬遠されがちなクラスメイト・竹本(原田琥之佑)から突然呼び出され、「ブーメラン島にイルカを見に行こう」と誘われ、2人のひと夏の冒険が始まる。

草なぎが演じるのは、成長して一児の父親となった久田。子どもの頃から文才を評価されていた久田は夢だった作家になったが、近年は年下の編集者から動画配信者のゴーストライターの仕事を依頼されるなど、思い通りにいかない日々を過ごしている。そんな久田が抱える閉塞感ややるせない気持ちを、草なぎは少し目を細めた寂しげな表情と穏やかな口調で表現。編集者と打ち合わせをした帰り道のシーンでは、久田の背中から滲み出る男の哀愁を感じさせる。
一方で、娘と一緒に水族館を訪れるシーンでは、同じ人物とは思えないほどの明るく爽やかな笑顔を浮かべる草なぎ。しかし、娘が別居中の妻と2人で帰る姿を見送り、ひとりぼっちになった瞬間から、観る者の胸を押しつぶすほどの孤独感を一気に放出するという圧倒的な演技力を見せつける。
その後、創作に行き詰まっていた久田に転機が訪れる。自宅にあったサバの缶詰を見て、かつてのクラスメイト・竹本との思い出が甦り、その鮮やかな記憶を文字に残そうとノートパソコンに向かう。その時に草なぎが浮かべる必死な表情と穏やかなナレーションから、物語は80年代の長崎へと移っていく。
草なぎ演じる久田の少年時代を演じる子役の番家をはじめ、同じく子役の原田、尾野真千子、竹原ピストルといった俳優陣も、肩の力が抜けたナチュラルな演技を披露している本作。友だちや家族の温かさ、大人になっても心の支えとなる子ども時代の思い出など、人生においてかけがえのない宝物を美しい長崎の風景と共に描き出すノスタルジックな青春映画を、草なぎの優しい声と繊細な演技に注目しながら味わってほしい。
文=中村実香
放送情報
サバカン SABAKAN
放送日時:2023年7月9日(日)23:30~、2023年7月13日(木)22:10~ほか
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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