映画監督&脚本家・金沢知樹が語る、物語を本物にする俳優・草なぎ剛の魅力
2023.6.24(土)
草なぎ剛(※草なぎの「なぎ」は正しくはゆみへんに「剪」)出演作「サバカン SABAKAN」と「ミッドナイトスワン」が日本映画専門チャンネルで特集放送される。「サバカン SABAKAN」の監督を務めた金沢知樹さんに"俳優としての草なぎ剛"の魅力を分析してもらった。
「サバカン」は草なぎ主演のラジオドラマ企画が基になっている。金沢さんはその収録の際に草なぎのすごさを目の当たりにした。
「『サバカン』は僕がmixiに投稿していた半分リアル、半分フィクションの日記がベースになっています。ラジオ収録で初めて草なぎさんに会ったんですけど、印象深かったのが終盤のあるシーンで『ちょっと待って...』と言われて、収録ブースの中を見たら泣いていたんですよね。『あの草なぎ剛が、俺が書いた台本で泣いてる...!』という驚きもありつつ(笑)、この人は感受性の高さが他の役者と違う、だからこそ草なぎさんの言葉はダイレクトに入ってくるんだと感じました」
同時期に観賞した「ミッドナイトスワン」で金沢さんは気付いたことがあったそうだ。
「主人公の凪沙という人物を"草なぎ剛という人がやっている"のがすごかったです。女性のアイデンティティーを持った役柄ですが、草なぎ剛で語りかけてくる、というか。われわれが作っているドラマや映画はフィクションですが、その中でも草なぎ剛という"本物"の人間で生きてくれるから、フィクションが本物になるのか、と。そこに気付かされたので『ミッドナイトスワン』を見た時はすごく興奮しました」
「ミッドナイトスワン」©2020 Midnight Swan Film Partners
金沢さんは「『サバカン』での演出は長崎弁のイントネーションぐらいで、ほぼ言うことがなかったです」と撮影を振り返る。
「登場人物のモデルになった幼なじみにも出てもらっているんですけど、いわば素人じゃないですか。でも、草なぎさんは"人"でやっているので、そんな彼との絡みもすごく相性がいいんです。現場で覚えているのは、一度だけ『もう1回やらせてください』と草なぎさんから言われたこと。理由を聞くと『欲が出た』と。つまり、いい芝居をしようとして"芝居し過ぎちゃった"ということです。すごい境地まで達している人なんだと感じましたね」
半自伝的な「サバカン」という身近で小さな話を映画にしていいのか不安もあったそうだが、反響は予想以上のものだった。
「『これは自分の物語でもある』という観客からの声がとても多くてびっくりしました。いまだに作品に自信はないんですけど(笑)、自分の好きな地元の街で、好きな家族や友達の話を、好きなキャストやスタッフと作れたということで、本当に自分の"好き"を全部詰め込んだから、良かったのかもしれないです」
かなざわ・ともき●1974年生まれ、長崎県出身。舞台の脚本・演出の他、短編映画「半分ノ世界」(2014年)やドラマ「半沢直樹」(TBS 系)などの脚本を担当。「サバカン SABAKAN」で映画監督デビュー。
取材・文=山崎ヒロト
放送情報
サバカン SABAKAN
放送日時:2023年7月9日(日)23:30~
ミッドナイトスワン
放送日時:2023年7月9日(日)21:00~
チャンネル:日本映画専門チャンネル
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