二宮和也がその演技力を遺憾なく発揮し、ポンコツロボットとの友情を育んだ映画「TANG タング」
2023.6.9(金)
アイドルという枠を超え、今や押しも押されもせぬ俳優として第一線で活躍する二宮和也。そんな彼がちょっとポンコツで愛らしいロボットと"共演"し、大人のファンタジーに挑んだ作品が映画「TANG タング」だ。鮮やかな映像美と細やかな心理描写に定評のある三木孝浩監督がメガホンを取り、まるで人間のようなロボットとの友情と、ダメな大人が大切なものを取り戻していく再生の物語を紡いでいる。
(c)DI 2015 (c)2022映画「TANG」製作委員会
舞台は高性能なアンドロイドが一般家庭にも普及した近未来の日本。訳あって無職となった元研修医の健(二宮和也)は、弁護士として働く妻・絵美(満島ひかり)に家のことも任せ、ゲーム三昧の日々を送っていた。そんなある日、健の家の庭に、記憶を失くした旧式ロボットのタングが現れる。妻に愛想を尽かされ家から追い出された健はタングを処分しようとするが、そこからタングとの思いがけない旅が始まることになる。
物語の軸となるロボット・タングは、「STAND BY ME ドラえもん」(2014年)などで知られる制作プロダクション・白組のVFX技術によって描き出されている。そこで重要となるのが、タングと"共演"する俳優の演技力だ。健とタングの友情物語がストーリーの中心であるため、自ずと主演の二宮は一人芝居が大半となる状況。最初はタングを邪険に扱うも徐々に歩み寄っていく健の変化はとてもリアルで、タングと温かな絆を育んでいく様をしっかりと感じさせる。これだけの一人芝居をやってのけた二宮の演技力はさすがの一言だ。
(c)DI 2015 (c)2022映画「TANG」製作委員会
健と過ごすうちに少しずつ言葉が成長していったり、子供のようにトコトコと歩き回ったりするタングの言動は愛らしさそのもの。対する二宮が今回演じる健はゲーム好きで、家に引きこもってばかりのダメ男。ゲーム好きという点は二宮自身にも通じるが、性格は正反対なのだという。しかし、家ではぐうたらして妻の小言にもあれこれと言い訳する健のダメ男っぷりは、見ているこちらもイライラしてくるほど清々しい。しかし、そんな彼にも実はつらい過去があった。そんな過去の傷に思いをはせる姿や、タングの健気さに思わず優しい笑みを浮かべる様子など、そのどれもがとてもナチュラルで、演技ということを忘れさせるのである。
主演の二宮だけでなく、妻役の満島ひかり、ロボット学者役の奈緒、タングを監視する謎の男を演じる小手伸也など、粒ぞろいの俳優たちが共演する本作。大人の成長を感じられる温かなファンタジーとして楽しめる一作だ。
文=本永真里奈
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