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プロデビューから勝率8割を維持している藤井聡太!その凄さを歴代勝率ランキングから振り返る

2023.5.27(土)

プロデビューから破竹の勢いで勝ちまくり、毎年8割の勝率をあげている藤井聡太竜王。将棋界における「勝率8割」がどれくらいのことなのか、歴代の高勝率を見ながら振り返っていこう。

まずは藤井竜王の記録から。デビューは2016年12月だが、この年度は対局数が少ないため(10局)、記録部門からは除外。実質の初年度は2017年度からとなる。ちなみに将棋界の区切りは年ではなく年度のため、各年の4月~3月の成績によって決まる。
2017年度 61勝12敗 (0.8356)
2018年度 45勝8敗 (0.849)
2019年度 53勝12敗 (0.8153)
2020年度 44勝8敗 (0.8461)
2021年度 52勝12敗 (0.8125)
2022年度 53勝11敗 (0.8281)

勝率は過去の棋士と比較しても非常に高く、2018年度は歴代3位、2020年度は歴代4位、2017年度は歴代6位タイ、2022年度は歴代8位と、歴代トップ10記録に4回も入るほどの数字だ。それでは他の上位はどのようなものだったか見ていこう。

勝率歴代5位の記録を持つ羽生善治九段
勝率歴代5位の記録を持つ羽生善治九段

⒞囲碁・将棋チャンネル

歴代5位は羽生善治九段が1995年度に記録した46勝9敗(0.8364)。この記録がすごいのは羽生が七冠を制覇した年であり、すべてのタイトル戦番勝負を戦った上での勝率であること。一般的に若手の頃の方が予選なども多く勝率は稼ぎやすく、トップ棋士になると実力の拮抗した対局が多いため、勝つのが大変になってくると言われていた。藤井という例外が出てくるまで、タイトル戦を戦うトップ棋士としては飛び抜けていた。なお、羽生は勝率8割を他に2回達成しているが、いずれも10代の頃のものである。

勝率歴代2位の記録を持つ中村太地八段
勝率歴代2位の記録を持つ中村太地八段

⒞囲碁・将棋チャンネル

歴代2位は中村太地八段が2011年度に記録した40勝7敗(0.8511)。こちらも中村が若手時代のもの。このうち2敗は新人王戦で奨励会三段に喫したものであり、これらの敗戦がなければ記録更新の可能性もあったと、リアルタイムで見ていて思ったのを覚えている。中村もこの翌年にはタイトル戦に登場するなど上位棋士となり、自身の記録に迫ったことはない。

歴代1位は中原誠十六世名人が1967年度に記録した47勝8敗(0.8545)。50年以上破られていない記録で、一時代を築いた中原の若手時代の記録だ。この記録がすごいのは棋聖戦五番勝負に出場してのものであること。結果は2連勝からの3連敗で敗れているが、仮に第3局を勝っていたら......。なお、中原はこの前年度も勝率8割を達成している。

他の棋士に目を向けると大山康晴十五世名人は意外にも勝率8割を達成していない。もっとも大山が若い頃は棋戦そのものが少なかったり、戦争があったなど、勝ち星を稼ぎにくかった事情がある。50代後半で勝率7割を2度達成するなど、規格外の記録がある。

渡辺明名人は2018年度に40勝10敗で勝率8割を達成。王将戦、棋王戦と2つ番勝負を戦っている。ただ、この前年に順位戦を降級。B級1組で全勝と、不調からの反動も大きいと言える。

さて、先述した中原の記録を今後破る棋士は出るか。十分に力をつけた若手棋士が絶好調を維持すれば常に更新の可能性はあると言えるが、現実には50年以上破られておらず、簡単ではない。ではデビューから6年連続で勝率8割超えを達成している藤井はどうか。すでに六冠で、今後七~八冠も視野に入りますます条件は厳しくなる。だが、年齢的にはまだ力が伸びる時期であり、昨年度は早指し4棋戦で全勝するという史上初の快挙もやってのけた。今後10年以内での記録更新という意味では、低段の若手棋士よりも藤井の方が可能性が高いかもしれない。

文=渡部壮大

放送情報

第72期 ALSOK杯王将戦 七番勝負 第6局 藤井聡太王将 VS 羽生善治九段
放送日時:5月28日(日)13:00~
放送チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます