天海祐希が宝塚退団後、初めての主演映画「クリスマス黙示録」で魅せる完成された演技と存在感
2023.5.16(火)
出演作はシリアルからコメディまでジャンルを問わず、どの作品においても主演を務め、それぞれで存在感を放つ大女優・天海祐希。天海といえば、宝塚音楽学校に主席に入学し、73期生として宝塚歌劇団に入団した後、史上最速のペースで月組のトップスターに就任。1995年に退団した後は、ドラマや映画、舞台などさまざまな分野で活躍し続けているトップ・オブ・トップの大スターだ。そんな彼女の役者としての魅力は"どの役を演じていても天海祐希らしさがある"ところだろう。分かりやすくいうと、これは"昭和の大スター"と呼ばれた大物俳優たちや木村拓哉といった大スターたちのみが有しているもので、彼女のそれは宝塚歌劇団退団後の初主演映画「クリスマス黙示録」(1996年)で既に感じることができる。
同作品は、天海が退団後に寄せられた多くのオファーの中から「自分を見つめ直すため」との理由で選んだもの。キャスト・主要スタッフは監督を含めてほぼ全員アメリカ人、全編シアトルロケの英語台詞という日米合作映画で、女優としてのキャリアをスタートさせるにはかなりハードルの高い選択といえる。
クリスマスを控えたシアトル市内で、日本人だけを狙った爆弾事件が多発する。犯人はパールハーバーで芽生えた日本人浄化思想の持ち主「クリスマス黙示録信奉者」だと思われた。犯人がクリスマス・イブに新たな事件を起こすと予告する中、FBI捜査官のサラ(ロリー・ペティ)が犯人のアジトを特定し、犯人のガールフレンドと思しき女性・カオリ(初瀬かおる)を拘束。サラがカオリを取り調べる中、日本の警視庁から杉村葉子(天海)警部捕が現れ、日本の財界の大物であるカオリの父親の依頼でカオリを引き取りに来たと告げる。
(C)1996 東映ビデオ・TBS・東北新社
チームを率いる役柄が多い天海の演技といえば、やはり特筆すべきはその存在感だろう。オーラと言ってしまえば簡単だが、その構成要素をひも解くと、口調から表情、目線に始まり、姿勢や歩調、立ち姿と、頭の先からつま先に至るまで、細かいところにまで行き届いた繊細な芝居が積み重なったもので、体の隅々にまで気を張って演じているからこそオーラを纏っているように感じられるのだ。
"気持ちで演じる"というのはよく聞く言葉であるが、"気持ちと体、両方で演じている"ため、自分自身らしさも自然と加味される。武道でいうところの「心・技・体」が高次元でバランスが取れている状態で、オリジナルの道を極めたフェーズといえよう。この域に達しているだけで稀有な存在なのだが、驚きなのは、20代で、退団後の初の映像作品で、全て英語の台詞という役柄で、体現しているところだ。
シアトルを舞台に、FBI主導の捜査にたった一人で帯同する日本の警部補というポジションであるため、役柄上どうしても"蚊帳の外"感が出てもおかしくないのだが、なかなかどうして、彼女の放つ存在感が葉子の存在感をも強めており、しっかりとした主演の役割を果たしている。年齢との関係で葉子の役職は警部補という設定なのだが、すでに警視くらいに見えるほどだ。
"宝塚歌劇団のトップスター"というイメージを"天海祐希"というイメージへと変えた、ターニングポイントとなる作品といえる同作品で、既に完成されている演技と圧倒的な存在感を感じてみてほしい。
文=原田健
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