志田未来の凛とした和装が美しい!夫婦の切ない物語を映す時代劇「武士とその妻」
2023.5.12(金)
澄んだ瞳と圧倒的な演技力を武器に、子役時代からドラマや映画を中心に活躍中の志田未来。等身大の学生から、クセの強い科学捜査官、元子役という過去を持つ異色の弁護士など幅広い役柄をナチュラルに演じてきた志田が、初めて本格的な時代劇に挑戦したのが2022年放送のドラマ「武士とその妻」だ。
(C)BS-TBS
池波正太郎の短編小説「へそ五郎騒動」を前後編ドラマとして映像化した本作は、封建制度の中で生きる武士の誇りと、互いをまっすぐに愛し合い、絆を育んでいく夫婦の姿を描いた人情時代劇。信濃・松代藩にある武家に生まれたものの、次男だというだけで、家督を継ぐこともない役立たず者を意味する"へそ者"として、周囲から馬鹿にされていた青年・平野小五郎(工藤阿須加)。そんな小五郎だが、ある日、厳格な武家の一人娘としてまっすぐに育ち、藩内でも噂が立つほどの美貌をもつ恵津(志田)の婿として、山崎家に入ることに。縁あって夫婦となった2人は、つつましくも小さな幸せを掴むはずだった。しかし、小五郎が藩の重役・関口(本田博太郎)から妻の恵津、そして山崎家を辱める罵声を浴びせられたことを機に、2人の運命は大きく動き出す......。
(C)BS-TBS
志田が演じるのは、清楚な美貌の持ち主として知られる武家の娘・恵津。江戸にも店を構える薬種問屋が「恵津を嫁として迎えたい」と百両を持参するなど、引く手あまたの存在だったが、松代藩お納戸方でもあった父・山崎源右衛門(甲本雅裕)は娘の幸せを願い、自ら大信寺の成聞和尚の元を訪れて婿探しに。それをきっかけに、恵津と小五郎は夫婦となる。
日本髪に和服という出で立ちの志田は、現代劇では前髪で隠れていることが多い美しいおでこを出し、知的で凛とした雰囲気をさらに際立たせている。また、小五郎との祝言での白無垢姿は、その美しさに多くの人が見惚れてしまうはずだ。そして、白無垢姿で、小五郎にこれからの結婚生活で重要となる食べ物の好みを聞くシーンでは、「用意してくれるものならば、牛が食べている、そこらに生えているような草でも食べる覚悟がある」という小五郎の言葉に、可愛らしい笑い声を上げる。その時の志田がみせる、心から楽しそうな表情から「この人と夫婦になれてよかった」という恵津の喜びが、ひしひしと伝わってくる。
その後、2人が夫婦となって1年半後、待望の新しい命が芽生える。恵津が出勤前の小五郎に「腹にややこができたと思われます」と、妊娠したことを嬉しそうに報告する場面では、志田はその大きな瞳を輝かせることで、恵津が胸に抱いている小五郎への絶対的な信頼と、自分たちを待つ明るい未来への希望を表現している。
志田の出世作としても知られる「14才の母」、それから10年後に耳の不自由な妊婦を演じた「コウノドリ」第2シリーズの第1話。大きなお腹に優しく手を添える際に見せる柔らかな表情から溢れ出る母性は、今までの役柄で得た経験によって磨かれたものと言えるだろう。
しかし、志田が演じる恵津が放つ輝きが強ければ強いほど、その後の2人に待ち受けている悲劇が際立つ。妻の恵津、そして山崎家を辱められたことから、小五郎は家の面目を守るため、上司の関口と藩の財産で私腹を肥やしている家老・原正盛(波岡一喜)を斬ることを決意。2人は離ればなれになるだけでなく、容易に会うことすらできなくなってしまう。
共に愛情を育む小五郎と恵津。小五郎への愛情をその瞳で表現し続けた志田の演技を通して、切なくも美しい愛の物語を堪能してほしい。
文=中村実香
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