西島秀俊の演技力が物語の謎を加速させる!篠原涼子主演のドラマ「アンフェア」の面白さを再確認
2023.2.10(金)
2021年8月に公開された映画「ドライブ・マイ・カー」で主演を務め、第45回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞や第42回ボストン映画批評家協会賞の主演男優賞などを受賞するなど、国内外で高い評価を得ている俳優・西島秀俊。2022年には映画「シン・ウルトラマン」などの話題作に出演、1月にスタートした連続ドラマ「警視庁アウトサイダー」でも主演するなど、注目したい俳優だ。
ドラマや映画にとどまらず、声優やナレーションでも活動している西島。ここではその抜群の演技力で存在感を示した2006年放送のドラマ「アンフェア」にスポットを当ててみたい。主人公は、篠原涼子演じる敏腕女性刑事・雪平夏見。型破りだが警視庁で検挙率No.1を誇る男勝りの刑事で、刑事だった父親の死や、人質事件の被疑者を射殺したことなど、さまざまな重い過去を背負っている。
西島が演じるのは「岩崎書房」という出版社の編集者・瀬崎一郎。作家・久留米隆一郎(井上順)のデビュー30周年パーティで、かつて瀬崎のライバルだった編集者が殺害され、その少し前に新宿の公園で起きた殺人事件の現場に残されていたものと同じしおりを瀬崎が持っていたことから、事件に深く絡んでいくことに...。
(C)共同テレビジョン 原作:秦建日子「推理小説」(河出書房新社刊)
瀬崎は口数は少なめだが真面目な印象で、編集部のスタッフに差し入れをする場面では気さくな雰囲気。また、利益よりも書籍の中身が大切という熱い想いを持ち、売り上げ重視の上司に企画をボツにされた時には、不満げな重苦しい表情を見せる。そういった演技が自然なため、瀬崎という人物の感情がリアルに伝わってくる。
しおりの件で雪平に事情聴取を受けるシーンでは、視線をあまり動かさず無表情、落ち着いて淡々と受け答えをする。その時のセリフに瀬崎という人物が垣間見え、また照明の具合もあって、心に何かを秘めた人物のように映る。
何かありそうな雰囲気を漂わせつつも、物語が進むにつれて雪平との関係が深まっていくと、瀬崎も次第にさまざまな表情を見せるようになる。出版社に現れた雪平が落ち込んでいるのを見て「元気ないですよ」と声を掛ける時にはほんのりと優しく、一緒に飲みに行き「お酒、弱くて」と言った時には楽しそうな笑顔を見せる。
(C)共同テレビジョン 原作:秦建日子「推理小説」(河出書房新社刊)
しかし夕日の屋上で、携帯電話で「あなたならきっと、犯人にたどり着けます」と雪平を励ました時には、なぜか表情をこわばらせる。ドラマの所々で、瀬崎に対して「なぜこんな表情をするのだろう?」という印象を受ける場面がある。そしてそういう印象を受けるということは、西島の演技によって物語に引き込まれている、とも言えるだろう。
それができるのも、登場人物の内面を表現することに長けた西島の繊細な演技があってこそだろう。西島の演技のひとつひとつから、瀬崎の感情の動きや事件との関係を推測するのも、このドラマの楽しみ方と言えそうだ。
もちろん主演の篠原の演技も抜群で、居酒屋で飲んだくれている時や、相棒の新米刑事・安藤一之(瑛太)に対するつっけんどんな態度などはまさに男勝り。しかし事件現場で遺体のあった場所に自分の身を重ねる雪平特有の行動、また検死解剖に立ち会う時などは、心と身体を張って真剣に事件と向き合う刑事の姿を見せてくれる。
西島が登場するのは、出版社や警察に殺人予告小説が送られてくる連続殺人事件の決着を見るまで。果たして事件はどんな結末を迎えるのか。篠原演じる雪平の捜査と西島の演技に注目して、その結末を読み取ってみてはいかがだろう。
文=堀慎二郎
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