西城秀樹が映画初主演作「愛と誠」で見せた大いなるスター性
2023.4.22(土)
1972年のデビュー後、郷ひろみ、野口五郎と共に「新御三家」として一世を風靡した西城秀樹。そんな西城が人気絶頂期に映画初主演を務めた作品が、1974年の映画「愛と誠」だ。同作では、西城の大いなるスター性を感じることができる。
(C)1974 松竹株式会社
同作は、原作・梶原一騎、作画・ながやす巧の同名人気漫画を映画化したもので、不良少年の太賀誠(西城)と財閥令嬢の早乙女愛(早乙女愛)の純愛を描いた学園青春物語。信州の蓼科高原で、高校生の愛は不良少年の誠と偶然再会する。愛は8年前、蓼科高原でスキー滑走中に危険な斜面を滑り出してしまい、その時に体を張って助けてもらったことがきっかけで、誠に思慕の念を抱いていた。一方、愛を助けた誠は、その代償として額に深い傷を負い、その傷が原因で粗暴な性格となり、やがては家庭不和となったことで、愛への復讐心を募らせていた。再会した時、少年刑務所に送られようとしていた誠を、愛は父親に頼んで助け、自分と同じ学校に転校させた上、月謝とアパート代も持たせることで昔の償いをしようとする。だが、誠は愛の好意を利用して自由奔放に振る舞い、暴力で学園を支配しようと目論む。
(C)1974 松竹株式会社
半世紀以上前の作品であるため、ストーリーや演出などからは時代を感じるが、出演者たちの輝きにおいては時代を超えるものがある。特に西城は当時、「時代の寵児」ともいうべき人気を誇っていたこともあり、劇中でも圧倒的なオーラと存在感、内からほとばしる生命力を発揮している。
誠は不良少年で、転校初日に教師を殴り倒したり、愛からお金を受け取っても後ろめたさなどは感じず、ボクシングの試合でも反則をして勝利したりと、"硬派な不良"ではなく、"粗野で性格の悪い不良"という、決して応援したくなるようなキャラクターではない。だが、西城が演じることでどこか可愛げが生まれ、「根はいい奴なのでは」と思わせるような憎み切れない効果を生んでいる。それはやはり、西城の持つ"スター特有の愛される才能"によるものだろう。
違う言葉で表現するなら"人たらしの才能"で、これは、大スターは皆持っている、天から授かっているものなのだ。この要素のおかげで誠の人物像はかなり共感を得られる人物となっており、道を外れた言動もそこまで嫌悪感を持たせないものになっている。
(C)1974 松竹株式会社
また、演技の端々にも西城のスター性が垣間見える。ケンカのシーンが特に分かりやすいのだが、動き終わりで一瞬止まって見せているのだ。これによって動きが激しいシーンも観やすくなり、観る者に動きの激しさを強く印象付けている。デビュー2年目で映画初主演作品ということを鑑みると、演技経験が多くはないはずの中、この印象的な動きの見せ方を出来るのは、西城の持って生まれた才能なのだろう。
社会現象を巻き起こした名作のストーリーを楽しみつつ、オーラや存在感から他人の印象に残りやすい動きに至るまで、西城の生まれ持った大いなるスター性を存分に味わってみてはいかがだろうか。
文=原田健
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