横浜流星が昭和の不良のように一本気な男を熱演した青春群像劇「青の帰り道」
2023.4.5(水)
昭和の時代には"青春スター"と呼ばれる人たちがいた。古くは石原裕次郎や小林旭。現在ではお父さん役を演じることが多い、中村雅俊や時任三郎だってそうだった。平成のテレビドラマでは木村拓哉や長瀬智也がそのポジションにいた。もし、令和にもそんなスターがいるとしたら、横浜流星はその筆頭に挙げられるだろう。
横浜流星は、映画「キセキ -あの日のソビト-」でGReeeeNのメンバーをモデルにしたメインキャストになって以来、2022年の主演映画「線は、僕を描く」まで、10本以上の映画で高校生や大学生の役を数多く演じ、青春の挫折と希望を演じてきた。2018年に公開された「青の帰り道」もそんな王道の青春ストーリーだ。
群馬県のある町、田んぼに囲まれた道を通って同じ高校に通っていた男女7人は、シンガソングライターを目指すカナ(真野恵里菜)を中心に、仲間として強い絆で結ばれていた。しかし、卒業後、東京に出たカナとその親友・キリ(清水くるみ)、地元に残って工事現場で働くことにしたリョウ(横浜)やコウタ(戸塚純貴)はそれぞれ人生の困難にぶち当たる。気ぐるみキャラで売り出されたカナとそのマネージャーになったキリは、一見、成功を収めたかに見えたが、その心には満たされない空洞が空いていた。そして、地元に残り大学の医学部を目指して浪人していたタツオ(森永悠希)は、数年で受験をあきらめ、高校時代、カナと一緒に音楽を作っていた頃に戻りたいと願うが...。
(c)映画「青の帰り道」製作委員会
真野は、可憐な外見からアイドルとして扱われるが、自分のやりたい音楽を諦めない強さを持つカナを好演。成功と引き換えに、次第に精神的に追い詰められていく様もリアルに演じている。一方、横浜が演じるリョウは転落人生まっしぐら。地元では悪い先輩たちとつるんで工事現場の部品を横流ししてクビになり、逃げるように東京に来てからはオレオレ詐欺で荒稼ぎしていく。世をすねた生き方をして、いつ刑務所に行ってもおかしくないリョウだが、仲間に向ける友情だけは素直で、カナが鬱屈を抱えて荒れていっても、まっすぐに彼女を支えようとする。一本気だから道を誤るし、一本気だから仲間との絆が回復すれば戻ってこられる。そんなリョウを嫌いになることはできない。
横浜がタバコをくゆらし「いつかデカいことをやる」とイキがってみせる姿は、まさしく"不良"が主人公になっていた昭和の青春映画のようで、強い瞳の表情でクラシカルなスター性を発揮している。入念な役作りをしつつも、最終的には役柄を自分のように引き寄せて一体化する横浜ならではの、他の作品では見せない顔が見られる。
そんな横浜流星も、2012年に「仮面ライダーフォーゼ」で俳優デビューしてから10年が経過。2023年9月で27歳になる。「青の帰り道」の藤井道人監督とまたしても組み、ゴミ最終処分場で働く男を演じた「ヴィレッジ」は4月21日(金)に公開される。そろそろ青春スターからは卒業し、大人向けのサスペンス映画の主役にもなれることを証明するチャンスであり、その意味でも注目の最新主演作だ。
文=小田慶子
放送情報
青の帰り道
放送日時:2023年4月22(土)9:00~、2023年5月8日(月)18:45~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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