宇垣美里がオススメの痛快ガールズムービー『キューティ・ブロンド』、偏見にのまれず「らしさ」を貫く主人公に背中を押される!
2023.4.2(日)

■だってどうしても他人事には思えなかったから
目にも鮮やかなピンクのワンピースにゴージャスなブロンドヘア、ハイヒールの足元にはお揃いのピンクの服を着た小さなチワワ。満面の笑みで闊歩する彼女の姿がででんと中央に据えられた『キューティ・ブロンド』(2001年)のメインビジュアルを見て、「ああ、一軍女子によるおしゃれ系キャピキャピ恋愛映画かあ...」なんて遠巻きにしていた人いませんか?数年前の私です。そんな人にこそ騙されたと思って観てほしい。きっとあなたはエルのこと、大好きになるはずだから!
陽気な天然ブロンド美人であるエル・ウッズ(リース・ウィザースプーン)は、ファッションと美容が大好きで社交クラブの会長を務める人気者な女子学生。政治家志望であるボーイフレンドのワーナー(マシュー・デイヴィス)ともラブラブで、プロポーズを今か今かと待ちわびていたのに、ある日突然フラれてしまう。理由は彼女の外見。ワーナーは言った、「議員の妻は『ジャッキー』だ。『モンロー』はマズいよ」と。ショックを受けたエルだけど、ワーナーをもう一度振り向かせるため、自分も彼と同じハーバード大学のロースクールに進学することを決意し見事合格。派手な見た目で周りに反発されながらも、底抜けのポジティブさと努力で立ち向かっていく。

(C) 2001 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.
欧米には「ブロンドジョーク」というものがあるほどに、「ブロンドの女性はセクシーだが頭が空っぽ」というようなステレオタイプな偏見が存在する。有名な例として挙げられるのは、先ほどのワーナーの言葉にもある「マリリン・モンロー」。本当の彼女はセルフプロデュースに長けた優れたビジネスウーマンであったのに。ほかにも、アフリカ系は足が速い、アジア系は従順、ふくよかな体型の人は怠惰、丙午の女性は気性が荒い......そんなわけあるか、自分を構成する多くの要素の中のたった1つごときで性格が決まってたまるかよ、と思う。けれどもいまだに蔓延る偏見の数々。泣きながらエルのこぼした「別れる理由は私がブロンドで巨乳だから?」という言葉に、父親がエルにかけた「法学部はブスでがり勉ばかり、お前とは別世界だよ」という決めつけに、痛いほど胸を締めつけられた。だってどうしても他人事には思えなかったから。
「女の子だから浪人しないほうがいいよ、婚期遅れるよ?」「美人なんだから仕事なんて頑張らなくても誰かに養ってもらえばいいじゃん!」、性別や見た目を理由に閉ざされかけた道のなんと多いことか。友人の一人は「胸が大きいとバカだと思われるから」と胸にさらしを巻いて泣きながら勉強していた。思い出しただけで怒りが込み上げてくる。
でもエルはそんなバカげた偏見を内面化したりはしない。バービー人形と揶揄されようとも大好きなハイブランドの服に身を包み、靴はいつだってハイヒール、豊かなブロンドをなびかせて学内を闊歩する。なじむことを優先すれば皆と同じだっさい無地の服を着れば済むことだし、最悪髪を染める手だってあっただろう。ワーナーに好かれようとするならば尚のこと。けれど彼女は自分のポリシーを曲げやしない。エルはエルのためにあのコスチュームに身を包む。だってこれが私なのよ、と言わんばかりの堂々としたその姿はあまりに眩しくて惚れ惚れした。自分の目標に向かってまっすぐに突き進むエルは可愛いくてカッコよくて、彼女を応援しているうちに自分のことを応援されているような気持ちになってきた。なんで周りに合わせて自分を変えなきゃいけないって思ってたんだっけ。あほくさ!
■決して古びることのない名作ガールズムービー

(C) 2003 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.
どんなに意地悪をされようと、姑息な手で人の足を引っ張るようなダサいマネはしないところもエルの魅力的なところだ。素直で先入観なく他者に寄り添う彼女の誠実な姿勢に感化され、やがて多くの味方が現れるようになる。まさに「情けは人のためならず」。
なお私は正直、登場した瞬間からワーナーのことが大嫌いだったのだが(そう感じる方は多いだろう。見たらわかるような外見を理由に恋人を振るような人間にロクな奴はいない。エル、悪いこと言わないからやめとけ)、そんな人ほど爽快に感じるラストが待っている。

(C) 2003 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.
1作目が日本で公開されたのは2002年。約20年前だというのにエルのハッピーなバイブスに載せて届けられるメッセージはフェミニズム的であり、固い友情で結ばれた女友達との関係は最高のシスターフッド。決して古びることのない名作ガールズムービーだ。
続編となる『キューティ・ブロンド/ハッピーMAX』(2003年)ではハーバード卒業後が舞台。愛犬ブルーザーの母犬を救うため、政治の中心地・ワシントンDCへ。こちらもエルが自分自身を信じ、信念を貫くことで人の心を動かし、やがて大きな変化をもたらす。犬という人類の友に対する優しい視点はもちろんのこと、現代の基準からするとちょっとひっかかる表現はあるにせよ、マイノリティを応援し尊重するメッセージも込められている。
エルのように失恋してしまった人はもちろん、自分ではどうしようもないことで道を阻まれようとしている人、進学や就職などの人生の転機にいる人にも、いや女性はもちろん男性もすべての人にオススメ。自分の持っている一番ファビュラスでゴージャスな服を着て出かけたくなること間違いなし。
文=宇垣美里
宇垣美里●1991年生まれ 兵庫県出身。2019年3月にTBSを退社、4月よりオスカープロモーションに所属。現在はフリーアナウンサーとして、テレビ、ラジオ、雑誌、CM出演のほか、女優業や執筆活動も行うなど幅広く活躍中。
放送情報
キューティ・ブロンド
放送日時:2023年4月1日(土)15:15~、7日(金)15:15~
(吹)キューティ・ブロンド
放送日時:2023年4月29日(土)15:15~
キューティ・ブロンド/ハッピーMAX
放送日時:2023年4月1日(土)17:15~、7日(金)17:15~
(吹)キューティ・ブロンド/ハッピーMAX
放送日時:2023年4月29日(土)17:15~
キューティ・ブロンド3
放送日時:2023年4月1日(土)19:15~、7日(金)19:15~
(吹)キューティ・ブロンド3
放送日時:2023年4月29日(土)19:15~
チャンネル:ザ・シネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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