ベテラン演者の小林聡美と松重豊が織りなす、みずみずしいながらも大人のラブストーリー「ツユクサ」
2023.2.3(金)
1979年にテレビドラマ「3年B組金八先生」のオーディションに合格して以来、女優として40年以上のキャリアを誇る小林聡美。1982年に大林宣彦監督の映画「転校生」で高い評価を受けた彼女は、1988年から91年にかけて放送されたコメディードラマ「やっぱり猫が好き」で一躍、お茶の間の人気者に。その後も数多くのドラマ、映画などに出演し、2006年にはフィンランドロケを敢行した主演映画「かもめ食堂」がロングランヒットを記録。同作で描かれたスローなライフスタイルにあこがれる人も多く、いまだに根強い支持を集めている。このように長きにわたって第一線で活躍してきた小林だが、そんな彼女にとって、2011年の「東京オアシス」以来、およそ11年ぶりとなる主演映画「ツユクサ」が2月7日(火)にWOWOWで放送される。
(C)2022「ツユクサ」製作委員会
「手紙」や「ふしぎな岬の物語」などを手がけた脚本家・安倍照雄が執筆したオリジナル脚本を、十八代目中村勘三郎の主演映画「やじきた道中 てれすこ」でタッグを組んだ平山秀幸監督が映画化。この2人が、実に10年間という期間にわたって温めてきたという大人のラブストーリーが「ツユクサ」だ。
物語の舞台は、地方の海辺にある小さな田舎町。50歳を目前にひとり暮らしをしている芙美(小林)は、ボディタオルを作る会社で働きながら、平凡な日々を過ごしていた。同じ職場の直子(平岩紙)と妙子(江口のりこ)は何でも話せる友達で、一緒に買い物に行ったり、おしゃべりをしたりと楽しい時間を過ごしている。そして、直子のひとり息子で、宇宙に興味を持つ少年・航平(斎藤汰鷹)とは歳が離れた親友で、一緒に遊びに行ったり、航平の髪を切ってあげたり、時には彼の相談に乗ってあげたりもしている。
平凡ながらも、穏やかな日常を過ごしていた芙美だったが、その心の奥底には誰にも言えない哀しみを抱えていた。そんなある日、芙美が車を運転していると、突然何かがぶつかり、車体が転倒してしまうという事故に見舞われる。どうやら港に隕石(いんせき)が落ち、その破片が飛んできたようだ。隕石が人間に当たる確率は1億分の1。つまり、ほとんどの人にとっては、そんなことに遭遇する機会などないということだが、それでも人生は何が起きるか分からない。
(C)2022「ツユクサ」製作委員会
それと同時に、もうひとつの奇跡が芙美に舞い降りる。ジョギングの途中ですれ違い、ツユクサで草笛を吹く中年の男性・篠田(松重豊)と出会ったのだ。草笛をきっかけに距離を縮める2人だが、篠田もまた心に哀しみを抱えていた――。
隕石にぶつかるという非日常的な事件も、ありふれたツユクサから始まるほのかな恋心も、どちらも"奇跡"であるということには変わりない。そんなささやかな日常の変化を、慈しむように受け止める芙美。平山監督が「小林さんは歳を重ねても永遠の少女ですから(笑)」と語る通り、大人のラブストーリーでありながらも、どこかでみずみずしさを感じさせるような不思議な語り口の作品となっている。そんな本作について小林は「人生、もう新しいことは起きないだろう、と思って暮らしていても、ある日"小さな奇跡"にぶつかる可能性があるかも。そんなことを想像しながら、この作品を楽しんでいただけたら」とメッセージを送っている。
文=壬生智裕
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