町田啓太が音楽に情熱を注ぐトランペット奏者を爽やかに演じた映画「太陽とボレロ」
2023.3.28(火)
同性の同僚に恋する完璧イケメンを爽やかに体現した「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」や、"見かけは青年、中身はパワフルなおばあちゃん"という難役を見事に演じた「ダメな男じゃダメですか?」など、数々の話題作でメインキャストを演じてきた俳優・町田啓太。そんな町田が、音楽を愛する等身大の青年を爽やかに演じたのが、2022年に公開された映画「太陽とボレロ」だ。
本作の舞台となるのは、自然豊かな地方都市。この地で活動を続ける弥生交響楽団は、アマチュアながら18年の歴史を誇っていたが、観客動員数の減少など、運営は年々苦しくなるばかり。楽団主宰の花村理子(檀れい)は活動を続けるため、資金集めに日々奔走していたが、結果は思わしくない。そんな中、定例公演の最中に理子の恩師でもある指揮者・藤堂謙(水谷豊)が倒れる。理子は苦渋の決断で楽団の解散を告げ、ラストコンサートの開催を提案するが、藤堂という柱を失った団員の間に流れる不協和音は、少しずつ大きくなっていく...。
町田が演じているのは、5年前に弥生交響楽団に入団したトランペット担当の田ノ浦圭介。中古車販売センターでの仕事のかたわら、音楽への情熱を持ち続けている青年だ。楽団の定期演奏会を明日に控える中、同期入団のバイオリン担当・宮園あかり(森マリア)と圭介が弥生芸術劇場で開催されたクラシックコンサートの客席にいる場面から、物語はスタートする。
(C)2022「太陽とボレロ」製作委員会
名演奏を堪能し、翌日へのモチベーションを高めるあかりとは対照的に、圭介は浮かない顔。自分たち以外に演奏会に足を運んだのが、気の合わない副指揮者の片岡(河相我聞)だけだったと、団員の意識の低さや、片岡の高飛車な態度に感情的になるなど、血気盛んな圭介を町田はテンション高めな大声とまくしたてるような口調で表現。一方で、あかりに、平均寿命が短い職業の1つにトランペット奏者が挙げられていることを伝えた上で「仕事、音楽、仕事、音楽。こんなんじゃ彼女できるまえに死んじゃうよ」と弱音を吐く。そのシーンで町田が見せる、情けなくも可愛らしい甘え方や、緊張からの腹痛に襲われた際の切羽詰まった顔、そして自身も悪口を言っていた片岡から嫌味を言われた時の作り笑顔などの多彩な表情で、圭介というキャラクターに親近感を与えていく。
そして演奏会当日、ブラックスーツに蝶ネクタイとサッシュベルトというクラシックスタイルで登場。ワイルドさと甘さの絶妙なバランスを見せるビジュアルと均整の取れたスタイルという町田の魅力を極限まで際立たせる正装は、多くの視聴者の目を楽しませてくれるだろう。
物語は、主人公の理子と創立当時から楽団を支援してきた中古車販売センターのオーナー・鶴間(石丸幹二)、そして入団5年目で、理子が経営するファッションプラザの店員でもあるあかりと、鶴間の部下でもある圭介という2組の男女の関係を軸に展開。圭介にとって信頼できる同期であり、気になる存在でもあるあかりと一緒にいるシーンは、町田がまとうリラックスした雰囲気やさらりと着こなしたカジュアルなファッションを通して、圭介の素顔を垣間見ているような気分になれるはずだ。
藤堂役を務めた水谷が監督と脚本を兼任して描く、悲喜こもごものヒューマンドラマ。理子役の檀をはじめ、実力派俳優陣による味わい深い演技の中でひときわ光る、町田のフレッシュな存在感をその目で確認してほしい。
文=中村実香
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