内藤剛志が表現する、人間味あふれる十津川警部!ゲスト出演の堺正章との"演技合戦"を見逃すな!「西村京太郎サスペンス 十津川警部シリーズ3「伊豆踊り子号殺人迷路」」
2026.2.24(火)
1955年生まれの俳優・内藤剛志は、1990年代に「27クール連続ドラマ出演」という日本記録を達成し、"連ドラの鉄人"の愛称もあった。当初は悪役が多かったが、「科捜研の女」シリーズや「警視庁・捜査一課長」などで刑事役のイメージが定着。プライベートで街を歩いていると、本物の警官たちからよくお辞儀されるという逸話まである。今回は、"刑事役が似合う俳優ナンバーワン"とも呼ばれる内藤が、西村京太郎原作の十津川警部を演じたシリーズにスポットを当てたい。
内藤剛志が十津川警部を演じたTBS系の「十津川警部シリーズ」は、2017年から2019年まで全8作が放送された。十津川役と言えば、TBSの渡瀬恒彦とテレビ朝日の高橋英樹が双璧で、ともにロングランとなっている。
■堺正章演じる、原作小説にないゲストキャラクターが重要なファクターに
さて、内藤の十津川シリーズは、全8作と本数はあまり多くない。しかし、内藤演じる十津川警部が見事にハマっているので、改めて力説させていただきたい。ここでは、シリーズ3作目の「伊豆踊り子号殺人迷路」(2017年放送)を取り上げよう。
まずはストーリーから。警視庁の十津川班に寺西敬介刑事(窪塚俊介)が新メンバーとして配属される。実績十分な若手の寺西に十津川警部(内藤剛志)の期待も膨らむ。そんな矢先、休暇を取った西本刑事(高杉瑞穂)は、恋人の鈴香(辻本瑞貴)と伊豆高原へ旅行に出かけるが、旅先で悲劇が発生。
鈴香が板前の香田重信(武野功雄)を包丁で刺し殺して自殺してしまったのだ。静岡県警と共に、十津川や亀井刑事(石丸謙二郎)らも捜査を開始。その数日後に横浜で第二の事件が起こる。デート中のカップルの女性が、貴金属店のオーナーを刺殺して自殺したのだ。捜査の結果、2人の女性が共に不幸な過去を持ち、多重人格に関する同じ本を読んでいたことも判明し、十津川は著者である大学教授の香取信一郎(堺正章)のもとを訪れる...。
本作のキモは、堺正章が演じる犯罪心理学者の香取信一郎の存在だ。十津川の捜査に協力し、独自の視点で捜査に影響を与える "謎めいた知の巨人"的な存在として描かれる。じつはこの香坂という人物は原作小説には登場せず、ドラマのオリジナルキャラクターだ。さらに、本作には医療ジャーナリストの鏑木瑠偉(矢田亜希子)という人物も出てくるが、彼女も原作には登場しない。
犯罪心理学者と医療ジャーナリストという2人が登場することで、捜査の視点が単なる事実解明だけでなく、心理分析にも触れるよう脚色され、ドラマに奥行きを与えている。この点からもなかなか"攻めた"作品だと言えるだろう。
■包容力と人間味を強烈に感じさせる内藤の十津川が絶品

さて、ここからが本題だ。内藤演じる十津川警部は、歴代の十津川役と比較しても、「包容力」と「人間味」を強く押し出したという印象だ。部下の西本刑事に悲劇が訪れる展開ということで、十津川は単なる捜査の指揮者というより、部下を案じる上司としての人間性が強調される。内藤が演じると、よりそれが強く感じられるのだ。
内藤の演技は声を荒げることもなく、抑制されたトーンが軸だ。低く落ち着いた声と、相手の話をじっと聞く"間"に、十津川の温かみを感じさせる。小さな表情の変化で感情をにじませる細やかな芝居は、理知的ながらも人間味のある人物像を巧みに作り上げている。一言でいえば「柔らかい」のだ。
特に印象深いのは、堺正章との"演技合戦"である。本作では犯罪心理学者との対話シーンが重要になる。香取との対話場面では、ただ情報を受け取るのではなく、香取の言葉を自分なりに咀嚼し、静かに反論や疑問を投げかける。圧倒的な明晰さを感じさせる堺の"強い芝居"に対し、受けの演技で"対等な知性"を感じさせた内藤の演技には、静かな凄みがあった。
「相棒」の杉下右京のように派手な推理を披露することはないが、慎重に言葉を選ぶような抑えた演技で、物語全体に落ち着いたリアリティを醸し出している。派手さがないことが逆にいいのだ。十津川シリーズでは、旅情が重要な要素になるが、内藤は風景の中に立ったときの佇まいが非常に自然だ。風景を"邪魔しない"のである。景色を見つめる静かな横顔と、移動中の思索的な表情。そんな内藤の佇まいが、西村京太郎作品特有のトラベルミステリーと抜群に親和性を発揮する。
今回、TBSチャンネル1で、西村京太郎サスペンス 十津川警部シリーズ3「伊豆踊り子号殺人迷路」が放送される。派手さより「安心感」と「包容力」を感じさせ、温かい人間味を体現した内藤剛志の十津川警部には、独自の魅力がある。まさに絶品の芝居と言えるだろう。
2時間半の長尺でも疲れを感じさせず、物語を落ち着いたトーンで牽引する"軸"としての演技は見事だ。今回のオンエアにより、多くの人がその凄みを発見してもらえることを期待したい。
文=渡辺敏樹
放送情報
西村京太郎サスペンス 十津川警部シリーズ3「伊豆踊り子号殺人迷路」(内藤剛志主演)
放送日時:2026年3月1日(日)3:00~
放送チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合があります。
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