中村橋之助(現・中村芝翫)が演じる、人間味あふれる秀吉!家康役・内藤剛志の演技も光る「太閤記 天下を獲った男・秀吉」
2026.2.17(火)
現在放送中のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」(2026年)が話題を呼んでいるが、弟の豊臣秀長を主人公とする点が新鮮だ。これまで秀吉を主人公とする作品は数多いが、秀長が主役になるのは珍しい。だが、今回は豊臣秀吉が主役のドラマの中で、2006年にテレビ朝日系で放送された「太閤記 天下を獲った男・秀吉」にスポットを当てたい。2026年3月2日(月)に東映チャンネルで放送される。
本作は中村橋之助(現・中村芝翫)が主演し、戦国時代を舞台に豊臣秀吉(木下藤吉郎)の出世と活躍を全6話で描いた歴史時代劇だ。秀吉の若き日から織田信長との出会い、桶狭間の戦いから墨俣築城を経て周世を遂げ、本能寺の変を経て天下取りに向かう激動の生涯を描いている。
■「英雄」ではなく、人間臭い独特な秀吉像を作りあげた橋之助
(C)東映
歌舞伎俳優の橋之助が主演したこともあり、本格時代劇としての格調の高さを感じさせる。本作では、庶民の子として生まれた藤吉郎(秀吉)が才覚と人心掌握、機転で成り上がっていく過程を快活さと人間臭さを前面に出しており、橋之助の艶のあるセリフ回しと軽快な立ち回りが心地よい。
本作の秀吉像は豪胆な英雄というより、人間臭さを感じさせ、「人に取り入り、場を和ませる」。卑屈さを感じさせることも多いが、時に大胆な行動で周囲を驚かせる。そんな庶民性のある秀吉像を橋之助らしく、立体的に演じている点が印象的だ。「天下人」としての秀吉よりも、木下藤吉郎時代の魅力により比重を置いている。
「おんな太閤記」(1998年)など、秀吉役を得意とした西田敏行などは、容器で人たらし、最初から主役のオーラが全開で"英雄らしい"演じ方だった。竹中直人の場合は、人心掌握や情報戦に優れた知略化としての面が色濃く、笑顔の裏に冷酷さがあるような人物像。橋之助は彼らとはまったく異なるアプローチで、威厳がなく、卑屈でカッコ悪い一面を丁寧に演じている。時に空気を読み過ぎたり、失敗したりすると凹む。決してカッコよくはないのだが、だからこそ魅力的だ。
「人たらし」として有名な秀吉だが、多くの作品ではそれが天性の才能だと解釈される。しかし本作では、相手の顔色を観察し、立場を瞬時に計算する。失言したらフォローするという、人生の処世術として体得した形で描かれる。農民出身の「凡人」であった秀吉が、懸命に努力して出世を遂げていく。そんな秀吉像は橋之助だからこそ作りあげたと言っていい。英雄的な芝居をせず、感情を溜めて目線や姿勢で身分差を巧みに表現する。まさに舞台的だが誇張しない演技術が光り、独特な秀吉像を成立させた。
■織田信長役の村上弘明、徳川家康役の内藤剛志の演技も光る!
(C)東映
共演陣は、正室のねねを演じた星野真里をはじめ、織田信長役を村上弘明、松平元康(徳川家康)役に内藤剛志、前田又左衛門(利家)役に甲本雅裕、明智光秀を風間トオル、千宗易(千利休)を藤田まことが演じている。
村上弘明の信長は、圧倒的存在感を誇り、冷酷さと合理性、そして異端性を前面に出した信長像。秀吉を"道具"として使うが、その才能は認めている様子だ。秀吉は信長の威厳に恐れをなしているが、秀吉の出世が信長の「影」であることを強く印象づける。華のある村上の容姿と力強いセリフ回しもよく似合っている。
家康を演じた内藤の演技も絶妙で、派手さはないものの「底知れない実力」を醸し、秀吉とは対照的な成長ルートを歩む人物として描かれる。その場にいるだけで只者ではない感じを表現しているのは、さすがに実力派の内藤らしい。
歌舞伎俳優の中村橋之助を主役に据え、時代劇の常連である村上弘明や内藤剛志、藤田まことを重い役に配置し、派手なスター性より、役柄の分かりやすさ重視した本作の配役は、秀吉を中心に人物関係を巧みに整理し、極めて見やすい戦国ドラマになっている。大河ドラマ等と比較すると、駆け足感こそあるものの、見ごたえは十分だ。秀吉の人物像をはじめ、他の作品とは一線を画した映像作品として、もっと評価されるべきかもしれない。
文=渡辺敏樹
放送情報
太閤記 天下を獲った男・秀吉
放送日時:2026年3月2日(月)15:00~ (第1、2話を無料放送)
放送チャンネル:東映チャンネル(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合があります。
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