松田優作×桃井かおり、息ぴったりな2人の共演は必見!大胆ながらも繊細な演技が魅力的な「熱帯夜」
2026.12.28(日)
松田優作と桃井かおりが共演、早坂暁が脚本を手掛けた「熱帯夜(全3回)」(1983年)が、2026年1月7日(水)にホームドラマチャンネルで放送される。この作品は、社会の底辺で生きる鬱屈した毎日を変えるべく、金融会社から金を奪った須藤英二(松田)と、彼に協力した金融会社のOL・矢島サチ子(桃井)の逃避行を描いたもの。
放送当時は、アメリカンニューシネマの傑作「俺たちに明日はない」(1967年)に出てくる主人公の強盗コンビ、ボニーとクライドの日本版として宣伝され、話題を集めたドラマである。松田優作と桃井かおりは共に文学座付属演劇研究所で学び、桃井(第11期生)が松田(第12期生)の一期先輩。かつて桃井にその頃の松田の印象を聞いたが、最初の出会いは最悪だったという。
しかし馴染みの酒場で一緒に飲むようになってから、松田は『俺のキープしているボトル、飲む?』と言って、前に栓を開けた気の抜けたビールを出してきたこともあったとか。気が合うようになった二人は、1972年に松田がテレビ「太陽にほえろ!」にジーパン刑事役で抜擢されると、桃井がゲストで出演。1974年には映画「竜馬暗殺」で共演するなど、交友関係が続いていった。
■最も脂がのっている時の松田優作と桃井かおりの演技は必見
(C)フジテレビ
その後の二人は、松田が「最も危険な遊戯」(1978年)に始まる『遊戯』シリーズなどで、1970年代を代表するアクションスターとして注目され、桃井はテレビで山田太一脚本の「それぞれの秋」(1973年)や「男たちの旅路」(1976,77,79年)、倉本聰脚本の「前略おふくろ様」(1975~76年)や「浮浪雲」(1978年)など、有名脚本家の代表作に起用され、人気女優のポジションを確立した。
中でも桃井に新人のときから目をかけていたのが脚本家の早坂暁で、「たった一人の反乱」(1973年)を皮切りに、「天下堂々」(1973年)を経て、後には早坂のライフワークになった自伝的作品「花へんろ」(1985~88年)で彼女を主演に迎え、大正時代から昭和中期を生きるある家族を描き出している。
■桃井かおりは夢見るシンガーソングライターを熱演
その早坂が脚本を書いたのが今回の作品で、出演当時の桃井と松田は、俳優として最も脂がのっている頃。桃井は「もう頬づえはつかない」(1979年)で各映画賞の主演賞を総なめにし、松田はこのドラマと同じ年に公開された「家族ゲーム」(1983年)で、主演賞を独占した。
そんな二人が逃亡犯を演じただけに、単なるアクションものにはなっていない。松田は熊谷真美演じる妹の幸せを思う優しい一面を持つ兄であり、桃井は素人のシンガーソングライターとしてラジオに自分の曲を投稿する、夢見る女性である。その二人が犯罪を重ねて追いつめられていく様を、岸部一徳やせんだみつお、ケーシー高峰など、異色のキャストを配して濃密に映し出している。
このドラマの前年、松田と桃井は向田邦子原作新春ドラマスペシャル「春が来た」(1982年)でも共演した。その時桃井は、テレビのドラマをなめて現場に来ている松田に、猛烈な怒りをぶつけた。その頃、「野獣死すべし」(1981年)や「陽炎座」(1981年)などの演技で、アクションものとは違った独自の表現を映画で見せていた松田が、ホームドラマを基本とするテレビ作品を過小評価していたのは確か。しかし桃井の言葉で目が覚めた彼は、「春が来た」で市井に生きるサラリーマンを見事に演じた。その後を受けて二人が共演した「熱帯夜」には、互いをリスペクトする松田と桃井の信頼関係が、作品の端々に見える。
文=金澤誠
放送情報
熱帯夜(全3話)
放送日時:2026年1月7日(水)20:00~
放送チャンネル:ホームドラマチャンネル 韓流・時代劇・国内ドラマ(スカパー!)
出演:桃井かおり、松田優作、せんだみつお、ケーシー高峰、熊谷真実、岸部一徳、神山寛
※放送スケジュールは変更になる場合があります。
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