市川染五郎、荒木飛羽、山中柔太朗ら才能豊かな俳優たちが美しくもおぞましい"標本"に...西島秀俊が静かなる狂気を見せる衝撃作「人間標本」

2025.12.17(水)

「告白」(2010年)、「母性」(2022年)など数々の小説が映像化されてきた"イヤミスの女王"こと湊かなえが、「本当にイヤな物語」と自ら語る同名小説を実写ドラマ化した「人間標本」(12月19日(金)からPrime Videoで全5話一挙配信)。

"親の子殺し"というテーマで描かれる衝撃作の実写化だけに製作発表時から反響を集め、親子役で共演する西島秀俊と市川染五郎をはじめ、山中柔太朗(M!LK)ら旬な俳優たちなど、絶妙なキャスティングでも期待感を募らせてきた。

名匠・廣木隆一監督が「母性」以来、湊作品を手がけた「人間標本」は、盛夏の山中、アクリルケースに飾られた6人の美少年たちの遺体、"人間標本"が見つかるところから幕を開ける。

世間を震撼させる事件について「人間標本は私の作品です」と自首した蝶研究の権威である大学教授・榊史朗(西島)は、なぜ息子を手にかけるほどの犯行に至ったのか...取り調べを通じて、徐々にその狂気的な一面が露わになっていく。

幼い頃から蝶に興味を持ち、「人間の最も美しい瞬間を永遠に留める」という一心で狂気に染まっていく榊を西島は淡々と表現。

これまでも「クリーピー 偽りの隣人」(2016年)、「ドライブ・マイ・カー」(2021年)など、何を考えているか分からない共感性の低い役どころで存在感を放ってきたが、本作でも"芸術"を理解しない者への冷笑的な眼差しや口調など、温度感ない微笑を浮かべながらサイコな人物を怪演している。

一方、父へ全幅の信頼を寄せる息子に対する場面では目の奥まで笑った優しい表情も浮かび上がる。「これは大変な仕事を受けたな、というのが最初の印象でした」とインタビューで語ったように、子を殺した親というショッキングなキャラクターを、深みを持って表現しており、なぜ息子を手にかけてしまったのかという物語のミステリーを深めている。

また、祖父譲りの才能を持つ純粋な息子・至を、初の現代劇ドラマ出演となった歌舞伎界の若きプリンスである市川が上品かつ無邪気な表情で演じたほか、芸術的な才能を持ちながらも標本とされてしまう美少年たちも旬な俳優たちが演じた。

劇中でそれぞれが蝶に見立てられるように異なる性格、特徴を持っており、例えば内なる情熱を秘めながらもそれを表に出すことができない物静かな赤羽輝の葛藤を、M!LKの山中が持ち前のクールな空気感を活かして表現している。

二原色の色覚で白と黒の水墨画を描く白瀬透を「あのコはだぁれ？」(2024年)など話題作で注目を集める荒木飛羽が演じ、独特の世界を持つ個性派を繊細そうな雰囲気と色気を漂わせながら演じる。

さらにダイナミックなウォールアートを得意とするヤンチャっ子・石岡翔役には「ブギウギ」(2023年)でのデビュー以降躍進が続く黒崎煌代、難関美術予備校に通うエリート・深沢蒼役には「豊臣兄弟！」(2026年)への出演も控える松本怜生、人の悪意を風刺画として描く黒岩大役に「ブルーピリオド」(2024年)などの秋谷郁甫...と、どこか危うい一面を漂わせたそれぞれの蠱惑的な佇まいには思わず目を奪われる。

そんな若者たちを後継者候補として競わせ合う"色彩の魔術師"と呼ばれる著名な芸術家・一之瀬留美を宮沢りえがゴージャスなオーラたっぷりに演じ、娘・杏奈役の伊東蒼とは「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016年)以来、9年ぶりに親子役で再共演を果たすなど、実力派が脇を固めている。

アーティスト・清川あさみが美術監修及びアートディレクターを務め、蝶をキーワードとした耽美的な美術まで、美しくも猟奇的な世界観を作り上げている「人間標本」。あとを引く狂気と悲哀のラストまで、湊かなえワールドに翻弄されることだろう。

文＝HOMINIS編集部

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