骨の髄まで"悪役"になりきった安田顕の演技力を見よ!社会の暗部をえぐるドラマ「絶叫」
2023.3.22(水)

2015年に放送されたTBSのTVドラマ「下町ロケット」では熱い思いを秘める技術者を演じ、2019年公開の映画「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」では、悲しみに直面する主人公の心情を余すところなく表現し涙を誘った。また2020年放送のドラマ「アリバイ崩し承ります」では、渋い魅力を放つ刑事部の管理官を演じ、物語を盛り上げた。
幅広い役柄をこなすだけでなく、その人物に十二分になりきって世界観と物語を深めてゆく力量を持つ俳優・安田顕。安田が務めるさまざまな役柄の中でも、ピッタリハマる役柄のひとつが"悪役"だ。
髪を上げて無精髭を生やし、威圧感のある低い声と重い存在感で周囲を闇に染める。安田が社会の暗部でうごめく悪役を演じきった作品として注目したいのが、2019年に放送された連続ドラマ「絶叫」だ。
原作は社会問題を題材としたミステリーを得意とする葉真中顕の小説で、安田はこの作品で生活保護受給者を食い物にする、いわゆる貧困ビジネスで利益を得るNPO法人「カインドヘルプ」の代表・神代武役を務める。
物語は、あるアパートで女性の遺体が発見されたことから始まる。女性の名は鈴木陽子(尾野真千子)。遺体は死後約半年が経過している上、飼い猫に食べられ原形をとどめていなかった。当初は孤独死と思われていたが、刑事である奥貫綾乃(小西真奈美)が現場に違和感を抱き、捜査に乗り出す。

(C)2019 WOWOW INC.
綾乃の捜査シーンと過去の陽子を映すシーンが絡み合いながらストーリーは進行し、やがてもう1つの未解決事件、NPO法人代表・神代武惨殺事件へと繋がってゆく。捜査が進むにつれ陽子の壮絶な人生と、神代の生き様も明らかになってゆく。
陽子は東京で、派遣会社や保険会社などで働き暮らしていたが、さまざまな事情で生活が苦しくなり、墜ちていくと同時に精神的にも追い詰められてゆく。そこに現れたのが神代だ。
神代の当初の目的は、単に陽子を拉致して金を奪うことだった。神代が車内でいやらしい形に口を曲げて話す様には不気味さを覚え、人目につかない場所で金を奪う時は、怒鳴り、ひっぱたき、首を締め、陽子を弄ぶ。人を人とも思わない振る舞いを当たり前のようにやってのける姿は、まさに悪人だ。
そして陽子が暴力を振るう恋人を標的にした保険金殺人を持ちかけたことから、2人は大きな犯罪へと進んでゆく。
陽子とともに暮らすようになってからは、神代もさまざまな表情を見せるようになる。計画を練る時には、底知れない欲望を隠しているかのような笑顔を見せる。また、社会から捨てられた「棄民」について語る時は、辛い過去が透けるような寂しげな表情となる。
悪人というだけでなく、演技によって神代という人物の人生まで感じさせるところに、安田の凄さがあると言えるだろう。同時にその演技によって、日本の暗い部分を垣間見たような気にさせられてしまうのだ。
陽子はなぜ孤独死したのか、神代を殺したのは誰なのか。2人の死の真相を追うだけでなく、陽子が墜ちてゆく経緯や、社会の闇で生きる神代という存在、それらを生み出した現代日本社会の問題を、安田、尾野らの名演技とともに、じっくりと味わってほしい。
文=堀慎二郎
放送情報
連続ドラマW 絶叫 一挙放送
放送日時:2023年4月15日(土)16:15~
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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