内藤剛志の記者役が新鮮！人間味あふれる「芸能記者・柳田信吉の挑戦　スター誕生殺人事件」

2025.12.2(火)

27クール連続ドラマ出演という記録も樹立し、"連ドラの鉄人"とも称される俳優の内藤剛志。中でも出世作となった「ホテルウーマン」(フジテレビ系)の長沢支配人役、「家なき子」(日本テレビ系)のクズな父親役により、確固たる地位を築いたと言える。今回は、そんな内藤の数多い主演作の中から、2003年にテレビ東京系で放送された2時間サスペンス「芸能記者・柳田信吉の挑戦　スター誕生殺人事件」にスポットを当てたい。

■巧妙に仕掛けられた殺人トリックに、腕利きの芸能記者が迫る！

本作は、内藤演じるスポーツ紙の芸能担当記者・柳田信吉が、連続殺人の謎を解き明かす物語だ。腕利きの芸能記者の信吉は、典型的な仕事人間で、デスクへの昇進を断ってまで現場にこだわっていた。

内藤演じる信吉は、荒っぽい一面もあるが記者としてのプライドを持ち、取材相手にも真摯に接する。妻の美佐(浅田美代子)を愛していることも分かり、後半では海外ミステリーの翻訳家として活躍する美佐が信吉に協力する場面もあって、"夫婦バディ"という新鮮な様相を見せていく。

ストーリーとしては、真犯人が仕組んだ巧妙な死体のトリックを信吉が解明する点など、本格推理的な要素がある点や登場人物の過去の因縁が暴かれていく人間ドラマ的な展開もあり、なかなか見どころが多い。ただ、本作の魅力を高めているのは、やはり主人公の柳田信吉を演じる内藤の演技の奥深さにあるのではないだろうか。

■近年での刑事役とは趣が異なる内藤剛志の演技が新鮮

印象深いのは、中盤での記者会見の場面だ。新人タレント・小杉春華(川村ひかる)と人気俳優・白鳥孝太郎(野々村真)との密会をスクープした信吉だが、春華は"ダミー"で白鳥の本命は社長令嬢の山梨京子(須磨史衣)だった。

白鳥の婚約発表会見の席上で、アダルト映画出身の春華のことを「あんな経歴の女優と真剣交際するわけがない」と揶揄した白鳥に信吉が激高する。「そんな言い方をするな。お前にだって下積みの経験くらい、あるだろう」と春華を侮辱したことを激しく責めて、会見場を追い出そうとした事務所の社員を殴り飛ばしてしまうのだ。春華は殺された酒井理沙の友人でもあり、かつて理沙が信吉に優しい言葉をかけてもらったことに感謝していたことを告げ、信吉が犯人への怒りを募らせて事件解明の意欲を燃やすという流れにもなっている。

そんな信吉の心情を素直に表現する内藤の丁寧な芝居に、視聴者は思わず共感してしまうのだ。原作小説での探偵役は、大学講師の数学者という聡明でスマートなキャラだっただけに、本作の信吉の設定と内藤の起用は制作側のヒットと言えるだろう。

この度、チャンネル銀河で放送される「芸能記者・柳田信吉の挑戦　スター誕生殺人事件」は、2時間サスペンスの王道的な作品として、見ごたえ抜群な一作。今ではおなじみの刑事役とは趣が異なる、内藤剛志の新鮮な演技も堪能できるが、惜しむらくはこれ一作で終わってしまったことだ。確かに芸能記者が何度も事件に巻き込まれるのは不自然なので、シリーズ化が難しかったかもしれないが、信吉のキャラクターがあまりにも仕上がっていて、内藤にも見事にハマっていただけにもっと見たかったという気がしてならない。

文＝渡辺敏樹

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