板垣李光人、中村倫也の"声優"としての佇まいに「羨望のまなざしを送っていました」映画『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』インタビュー
2025.12.1(月)
映画「ペリリュー ー楽園のゲルニカー」が、12月5日(金)に全国公開される。
武田一義の人気マンガをアニメーション映画化した本作。舞台は太平洋戦争末期のペリリュー島。マンガ家志望の兵士・田丸均(CV:板垣李光人)は、亡くなった仲間の最期の勇姿を遺族に向けて書き記す「功績係」に任命される。だが、田丸はなかなか仲間の死を受け入れられない。そんな彼の支えとなったのは、同期ながら頼れる相棒・吉敷佳助(CV:中村倫也)だったーー。
今回は、可愛らしいタッチでありながら、圧倒的なリアリティで戦争を描く本作の主人公・田丸の声を担当した板垣に話を聞いた。
――田丸というキャラクターへの印象を教えてください
「分かりにくい例えかもしれませんが、"綺麗に剥けたゆでたまごみたいな心だな"と思いました。白くてつるんとしていて、柔らかく、弾力があって、触れると人肌に温かい。そんな心だなと。軍隊の中で隊長になるタイプではないけれど、彼がいるとその場が少し温かくなるような、うれしいような...。ゆでたまごも、主食ではないけれど、あるとうれしいじゃないですか。
田丸が生きている時代は、国のあり方や価値観、教育も、今の時代とまったく違うわけです。今だと理解し得ない価値観は土台としてあるのですが、やはり、そこに生きているのは、自分と変わらない同じ人間なんだと感じます。田丸が自分の仕事やこの戦い自体に抱く葛藤や、家族や戦友に対する気持ちも、今の僕たちが抱く気持ちとなんら変わらないんだな、と共感しました」
――仲間の勇姿を、時には嘘を交えて美談に仕立てる「功績係」について、どんな印象を受けましたか?
「当時は、国のために命を落とすことがなによりも誉れとされていた時代です。そこで、いかに『嘘も交えながら遺族に勇姿を届けるか』って、当時も今もはっきりと是非がつけられない感覚がありますよね。
『嘘をつく』って良くないこととしてありますが、日本に残る家族たちがその嘘によって救われるのであれば、それが必ずしも悪いとは言い切れない...。非常に複雑な想いがあります」
――手紙と共に「絵を描くこと」は、マンガ家志望の彼にとってどんな意味があったのだと思いますか?
「もちろん何かを書き記す使命感はあったと思います。一方で、いつ仲間が命を落とすのか分からない状況の中、自分の世界と向き合えるものがあるというのは、メンタルを保つ意味で心強い作業だったのかなって。
原作を読んでいてもそうなんですが、"田丸は絵を描くことが好きなんだろうな"ということがよく伝わってくるんです。今の価値観で測れるものではありませんが、戦場で絵を描くって、彼にとって兵士ではない『21歳の等身大の田丸』に戻れる瞬間だったのかなと思います」
――そんな田丸が戦場で上等兵の吉敷と出会います。吉敷との関係性については、どんなことを感じていらっしゃいましたか?
「一見すると『田丸が頼りなく、吉敷がしっかりしている』と感じる方が多いと思うんです。もちろんそうでありながら、吉敷も人の温かさや柔らかさなど、自分が持っていないものを田丸に感じているんですよね。だから、お互いがお互いに同じ分の体重をかけあいながら、寄りかかっている関係がいいなと思います」
――板垣さん自身は、田丸にとっての吉敷のような戦友と呼べる方はいますか?
「作品ごとに感じますね。季節的に暑い寒いとか、あまり寝る時間がないなどの中、スタッフさんと共に『いい作品を届ける』という目標に全力を尽くしていると戦友に感じますし、クランクアップすると、その戦いが終わった感覚もあります」
――本作はいかがでしたか?アフレコになるので、いつもよりはスタッフさんもいらっしゃらなかったと思います
「普段は様々な方が同じ空間にいて撮影をしますが、今回はブースの中に一人でした。音響監督さんや監督さんは別部屋にいらっしゃるので、向き合うのはマイクとモニターのみ。孤独な戦いだったなと思います」
――そこで追い詰められることはなかったのでしょうか?
「アフレコは3日間あったのですが、初日に中村さんとご一緒できたのがすごく大きかったです。僕は映画『かがみの孤城』で一度声優の経験がありますが、慣れていたわけではありませんでした。今回、慣れていく段階で中村さんがいてくださったので、本当に心強かったです。
中村さんは俳優としても声優としてもベテラン。同じブースで一緒にかけあいをさせていただいたときは、大変勉強になり、すごいと感じることばかりでした。ただただ尊敬で、羨望のまなざしを送っていましたね。
また、俳優と声優の両方を理解していらっしゃるからこそ、自分のような俳優がアフレコをするうえでやりやすい進め方も提案してくださいました。たとえば、普段俳優は相手の役者と生身でキャッチボールをするので、『仮音声でもいいから、相手の声はあった方がいいのではないか?』と提案してくださったり、『役者の現場は普段こういう感じだから、こう進めてもらえないか?』とお願いしてくださったり...。中村さんのおかげでアフレコがやりやすくなりました。すごく助けていただきましたね」
――田丸はマンガ家になる夢を持っています。板垣さんは俳優のお仕事をする中で、夢を持っていらっしゃいますか?
「自分の性格的に、先のことがあまり想像できないんです。結果がすぐ出るようなものだったらいいんですが、遠すぎる夢や目標に対して努力ができないんですよね(笑)」
――1個ずつ潰していくということですね
「そうです(笑)。この先、自分が何を経験して、何に出会って、どう考えが変わるかまだ分からない。ひとつのことに対して、まっすぐ芯を持って貫ける方はすごいと思うんですが、自分はそうではなくて...。夢や目標というよりも、次の作品に対してどう向き合うかを考える。そうして積み重ねていく先に、なにかあればいいなって思いますね」
――たとえば、目の前に壁があったとしたら、どう乗り越えていくタイプなんですか?
「あまりにも高すぎる壁だった場合は、"どうにかこうにかして回り道できないかな"と考えます。そうしないと、シンプルに疲れますからね(笑)。もちろん毎回演じる役が違いますし、今回であればアフレコという壁がありましたが、でも始まったらやるしかない。あまり"乗り越えないと!"と思いすぎず、"やるしかない"と挑むほうだと思います」
――今回はアフレコという壁がありました。声優のお仕事をがっつりと体験してみて、面白さや難しさなど感じたことを教えてください
「自分の外側・見た目を使わないので、年齢や性別なども超越した役ができるのは面白いなと思います。難しい点でいうと、キャラクターの台詞や、『この台詞とこの台詞の間は◯秒間空ける』など、すべての尺が決まっているのは難しかったところですね。
また、戦争を扱う映画となると、戦うシーンも出てくるわけです。そこでの息を息ではなく、声として音にしないといけない。とっさに出る声や息づかいって、体の動きがあってついてくるものなのに、それをマイクの前で動かず、立った状態ですべて表現しないといけない...って、この作品ならではの難しさですし、なによりも"声優さんって本当にすごいんだな"と思いながら演じていましたね」
取材・文=浜瀬将樹 写真=内田大介
スタイリング=五十嵐堂寿
ヘアメイク=KATO(TRON)
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