舟木一夫×和泉雅子が織りなす純愛... 身分違いの恋を初々しい二人が好演した「絶唱」
2025.11.24(月)
2025年9月に歌手の橋幸夫が逝去し、昭和歌謡の御三家がまた一人鬼籍に入った。2022年に西郷輝彦もこの世を去っている。しかし、もう一人の御三家である舟木一夫は80歳の今も現役歌手として活動を続けている。
そんな舟木の人気絶頂期である1966年に公開された映画「絶唱」をご紹介したい。本作は大江賢次の小説を原作とする悲恋物語で、舟木自身が強く望んで企画を通したという。公開された映画は大ヒットとなり、舟木の代表作にも数えられている。
■山陰の山深い村を舞台に身分違いの恋に落ちた若い男女の悲恋を描く
(C)日活
舞台は山陰地方の奥深い山村。山陰きっての大地主、園田家の一人息子・順吉(舟木)は、大学に通っていたが、休暇で帰省した際に出会った山番の娘・小雪(和泉雅子)を深く愛するようになる。
しかし順吉の父・惣兵衛(志村喬)は怒り、大地主の権力によって小雪の両親に因果を含めて小雪を追いやってしまった。結果、父に反発して小雪の後を追った順吉は、日本海の町で小雪と暮らし始める。順吉は勘当されるも、読書会の仲間である大谷(山本勝)やマサ(岸野小百合)たちに励まされ、2人は貧しくもつつましく生きていた。
しかし世は太平洋戦争のさなかで、順吉にも召集令状が届く。小雪は家計を支えるために屈強な男たちに混じって重労働に励んだ。小雪のささやかな楽しみは、順吉からの手紙と"木挽唄"を歌うことだった。やがて順吉からの便りが途絶え、無理がたたって小雪は病床に臥してしまう...。
本作の核となるのは、純愛を貫いた若い2人が戦争や病気によって悲劇的な運命にもてあそばれる悲恋のストーリー。舟木と和泉の人気絶頂期に製作されたこともあり、当時のティーンや若い女性たちが映画館に押しかけ、興行成績は大成功を収めた。
和泉は吉永小百合と松原智恵子と合わせて「日活三人娘」と呼ばれた日活が誇る青春スターで、本作でも健気な悲劇のヒロインを好演している。舟木も清純で誠実な文学青年の順吉役にぴったりで、抑制した演技が静謐な主人公の悲哀を大いに引き立てている。
当時の批評家にも「アイドルではなく、俳優・舟木一夫の実力を見せつけた」と、本作の演技を高く評価された。主題歌の「絶唱」も映画との相乗効果で大ヒットし、社会現象にもなっている。舟木は同年の日本レコード大賞で歌唱賞を受賞した。
■西河克己監督がこだわった故郷・鳥取の映像も美しい
(C)日活
監督の西河克己は、吉永小百合の主演作を多く撮ったことで知られ、「若い人」、「青い山脈」、「伊豆の踊子」、「帰郷」などの名作を残し、和泉雅子主演の「エデンの海」でも評判を呼んだ。鳥取県の出身で、故郷への思い入れが深かった西河監督。本作の舞台は原作では島根県の松江だったが、映画では故郷の鳥取砂丘や賀露港、智頭町を舞台として脚色した。
山や海、砂丘を抒情的に描写し、映像詩のような美しい画面に仕上げている。特に山深さを強調する映像は、山村の閉鎖性を印象付け、自然と人間の厳しさの暗喩としても表現されている。身分違いの恋に走った2人の影で、小雪の両親が村八分にされてしまう場面なども現実的で物悲しい。
小雪の父・正造を花沢徳衛、母のサトを初井言栄が演じているが、この2人の演技も絶品だ。「七人の侍」や「生きる」など、黒澤明作品で知られる名優・志村喬も厳格な父親・惣兵衛役でお手本のような演技で貫禄十分。古い価値観に縛られ、順吉を名家の娘と結婚させようとするが失敗する。
この名家の娘・美保子役を演じているのが太田雅子、後の梶芽衣子である。東映に移って「女囚さそり」シリーズなどで人気を博した。クエンティン・タランティーノが梶の大ファンを公言していることでも有名だ。本作では出番こそ少ないが、個性を感じさせて後に人気女優の道を駆け上がる萌芽を感じさせる。
戦争によって引き裂かれる悲恋物語は珍しくないが、本作は男が戦死するのではなく、ヒロインが病気を患うという展開だ。"木挽唄"をモチーフにするところも見事で、離れ離れになった2人が、同じ時間に木挽唄を歌おうと約束する。舟木ののびやかな歌声が耳に染み入るようで、じつに印象深い。
近年で再評価されている映画「絶唱」が、チャンネルNECOでオンエアされる。本作は舟木一夫が青春歌謡映画スターから脱皮し、単なるアイドルではなく、俳優としての評価を決定的にした一本だ。繊細で純粋な青年の内面を丁寧に表現し、悲恋を素直に演じ切った点が評価された。
和泉雅子の美しさと気品も見事で、さすがに日本映画の黄金期を築いた女優の一人に数えられるだけある。ちなみに1975年に西河監督自身が本作をリメイクしている。山口百恵と三浦友和という黄金コンビが主演し、やはりヒットした。同一監督によるリメイクという点で、両作を比較して観賞するのも一興だ。
文=渡辺敏樹
放送情報
絶唱
放送日時:2025年12月8日(月)8:00~
放送チャンネル:映画・チャンネルNECO(スカパー!)
出演:舟木一夫、和泉雅子、太田雅子、志村喬、花沢徳衛、山本勝、山田禅二
※放送スケジュールは変更になる場合があります。
-

多部未華子が自身でも「挑戦」と語る新境地の役どころ!DV被害から逃れ新たな人生を歩む女性の強さを描く「連続ドラマW シャドウワーク」
提供元:HOMINIS11/22(土) -

和田アキ子が醸し出す"ナチュラルな人間味"と"静かな深み"... 若かりし森昌子、山口百恵らとの共演も必見な「としごろ」
提供元:HOMINIS11/21(金) -

明日海りお×七海ひろき、宝塚の同期コンビが濃密な関係と妖しいペアダンスで魅せる! 大東立樹(CLASS SEVEN)も抜群の存在感を放つ、ミュージカル『コレット』
提供元:HOMINIS11/21(金) -

今さら?でも新鮮!岩田剛典の"最近ハマった沼"とは?【推シゴトーク】
提供元:HOMINIS11/21(金) -

ワールドツアー中の"セブチ"ことSEVENTEEN、葛藤や衝突まで映し出すドキュメンタリーで浮き彫りになる13人の絆や赤裸々な素顔
提供元:HOMINIS11/21(金)

