俳優パク・ヒョンシクの"原点"ともいうべき貴重な1人2役...代表作「埋もれた心」から遡ること12年、陰と陽を演じ分けた「シリウス」での存在感

2025.11.20(木)

アイドルグループ・ZE:A(ゼア)のメンバーとしてデビューし15年...11月16日に34歳を迎えたパク・ヒョンシク。

今年9月には日本ソロアルバム「PARK HYUNGSIK Japan 1st Mini Album [BEGINNING]」をリリースし、その新譜を引っ提げて自身初のソロファンコンサートを行うなど、アーティストとしての一面も話題に。"愛の貴公子"のパブリックイメージを覆すダークな役柄で話題となった「埋もれた心」や「TWELVE トゥエルブ」(共に2025年)のヒットも記憶に新しく、俳優としても大きな飛躍の1年となった。

そんな"俳優パク・ヒョンシク"としての原点が垣間見えるドラマ「シリウス」(2013年)が、12月8日(月)よりホームドラマチャンネルにて4日連続で放送される。

「シリウス」は、2013年に"KBSドラマスペシャル"として放送された全4話のドラマシリーズ。観測できる星の中で最も明るいと言われる"シリウスA"と、その伴星で暗く誰に目にも止まらない"シリウスB"をモチーフに作られた、正反対の兄弟の物語だ。前科者の兄・ウンチャンと、最年少刑事課長の弟・シヌ。そっくり同じ顔の双子の兄弟が、運命の歯車を大きく狂わせていく...。

ZE:Aのメンバーとして活動していたヒョンシクは、もともと早い段階から演技にも取り組んできた。2012年にドラマデビュー後、パク・ソジュンやBTSのVらと共演した時代劇「花郎＜ファラン＞」(2016年)で人気を爆発させると、その後もイケメン御曹司に扮した「力の強い女 ト・ボンスン」(2017年)や、チャン・ドンゴンとタッグを組んだ「SUITS/スーツ～運命の選択～」(2018年)などでキャリアを確立していった。

その結実として、演技の幅を大きく広げたヒョンシク。注目を浴びるきっかけの1つとなった「相続者たち」(2013年)と同じ年に放送された「シリウス」では、若きヒョンシクが1人2役を鮮烈に演じ分ける姿が堪能できる。

出所後のウンチャンと刑事課長シヌを1人2役で演じるのは、「凍える華」(2016年)や「勇敢無双 ヨン・スジョン」(2024年)のソ・ジュニョン。ヒョンシクは、兄弟の高校生時代を演じている。放送当時、ヒョンシクは21歳。役柄より年上ではあるが、表情にもまだあどけなさが残り、爽やかで初々しい制服姿も印象的だ。

学生時代の兄・ウンチャンはケンカが強く自信にあふれ、学校内での人気もあってそれなりに順風満帆な日々を送っているキャラクター。内向的な弟にそっけない態度をとりながらも、トッポッキを買ってきてやったりシヌをいじめる同級生に制裁を加えたりと、弟を気遣うそぶりも見せる。

一方、弟シヌは孤独で目立たない人物。実は韓国大法学部に次席合格するほどの秀才なのだが、クラスメートに目をつけられしょっちゅう暴行を受けている。後半で明らかになるのだが、幼少期に悲しい過去を持ち、愛を知らずに生きてきた。

そんな2人を、ヒョンシクは眼差し1つで演じ分ける。冒頭、まず出てくるのは制服姿のウンチャンだが、もの言いたげで勝ち気なその目を見れば、自信家の兄の方だとすぐわかる。そこへ後ろからやってくるシヌは伏し目がちで、やや猫背。不安が表情にも現れ、黙っていても孤独な弟なのは明白だ。やがて、シヌのためを思って起こした行動が、高校生だったウンチャンを犯罪者へと変えてしまう。

主人公の高校時代という役柄ではあるが、ヒョンシクは全4話全てに回想シーンも含めて登場し、大人になったウンチャン＆シヌのストーリーに説得力をもたらしている。甘いロマンスを演じたかと思えばダークな悪魔や復讐者で視聴者を震え上がらせる現在のパク・ヒョンシク――「シリウス」は、そんな彼の原点としても注目したい貴重な作品だ。

文＝酒寄美智子

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