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前田公輝×水沢林太郎「"離婚"を通して描く愛の形」――ドラマ『おいしい離婚届けます』が映し出す、支え合うことの意味

2025.11.18(火)

離婚案件で高額慰謝料を勝ち取るスゴ腕弁護士・音喜多初(前田公輝)と、そのパートナーで探偵の伊勢谷海(水沢林太郎)が活躍するドラマ『おいしい離婚届けます』(中京テレビ・日本テレビ系)。弁護士と探偵という職業を超えて、生活を共にする"パートナー"として描かれる2人の姿を通して、現代の"愛"や"家族"のかたちを問いかける物語だ。

今回は音喜多役・前田公輝と伊勢谷役・水沢林太郎に、作品に込めた思いやお互いへの印象、そして「人と共に生きること」への考えを語ってもらった。

写真左から、初(前田公輝)、杏奈(増田梨沙)、海(水沢林太郎)
写真左から、初(前田公輝)、杏奈(増田梨沙)、海(水沢林太郎)

中京テレビ

――本作への出演が決まった際のお気持ちと、最初に脚本を読まれたときの印象をお聞かせください

前田「今年、日本テレビさんでオンエアされる作品が、主演としては3本目になります。まさか自分がこんなに主演を務めさせていただける日が来るなんて思ってもいなかったので、信じられない気持ちでした。

脚本を読んだとき、この作品には"自分らしく生きるためのヒント"がたくさん散りばめられていると感じました。以前出演した『完全不倫-隠す美学、暴く覚悟-』では"不倫される男"を演じましたが、今回は"離婚弁護士"として相談を受ける側。愛の境界線をどこに引くかを見つめ直すような役どころで、すごく楽しみでした」

水沢「主演を務められることが本当に嬉しかったです。脚本を読ませていただいたとき、家族の優しさや不条理さなど、いろんな感情を感じました。それをどう表現していこうか考える時間も楽しくて、やりがいを感じました」

――演じるキャラクターについて、どのように捉えていますか?また、演じる上で特に意識された部分は?

前田「初(はじめ)は、人生の中で多くの悩みを抱えながら生きてきた人物だと思います。パートナーの海(かい)と出会うまでは、心を閉ざして誰にも踏み込ませないようなところがあったのだと感じています。姉の楓の存在に救われていた部分もありますが、彼を支えていたのは"法律"だったのかなと感じています。だからこそ、海と出会って心が楽になり、人を"救う側"になりたいと思えるようになったんだと思います。

音喜多法律事務所では完璧に見えて、実は生活力がなくて一人では生きていけない。そんな不器用さを含めて、依頼者に寄り添える人間として描きたいと思いました。感受性が豊かだからこそ、表情を出しすぎると"人見知り"の設定が崩れるので、あえて抑えて演じました。海が柔らかいキャラクターなので、彼との対比として"硬さ"を意識しています」

水沢「海は、年齢や性別に関係なく誰にでも真っすぐ向き合える人。その愛らしさと芯の強さが魅力だと思いました。現場でも、まずは"海ってこういう人なんだ"と思ってもらえるよう、たくさん話して意見を聞きながら作り上げました。尽くすタイプではありますが、ただ優しいだけではなく、相手を支える強さも持っている部分を大切にしています」

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――弁護士と探偵という関係を超えて生活を共にする"パートナー"として、2人の関係をどのように理解し演じられましたか?

前田「実は僕、海の目をあまり見ていないんです。家族ってそんなに見つめ合わないし、一緒にいることが"当たり前"の関係だからこそ、自然に存在している空気を出したくて。こんなに相手の顔を見ない芝居は初めてかもしれません。

林太郎くんとは年齢も離れているので、僕がこれまで経験してきた空気感や現場の雰囲気が、彼にとってやりやすいものになるよう意識していました。初対面のときに"僕の延長線上にいるのが前田さんだと思うんです"と言ってくれて、本当にうれしかったですね。その一言で、この先の撮影は大丈夫だなと思えました」

水沢「似ているようで似ていない、でも根っこの部分では通じ合っている関係だと感じていました。それぞれの信念を大切にしながら、お互いを思いやってお芝居をすることを意識していました。撮影を重ねるうちに空気感が自然と変わっていき、それが2人の関係性の深まりにもつながっていたと思います」

――正反対にも見える2人の"違い"が、物語にどんな化学反応を生んでいると感じますか?

前田「依頼人が何を思って相談に来て、何を抱えて前に進もうとしているのか――それを本当に理解できるのは、この2人だからこそだと思います。家では価値観の違いからケンカになることもありますが、それも"本気で愛について考えている2人"だから。そうした真剣さがあるからこそ、依頼人も心を開けるのだと思います。

そして、杏ちゃんの持つ純粋さが加わることで、物語全体が少しやわらかく、温かい空気になる。そのバランスがこの作品の魅力のひとつだと思います」

水沢「家でのシーンは、全体の中でも少し"休憩"できるような場面だと思っていました。2人の違いがあるからこそ互いを補い合えて、温かい空気が生まれている。少しでも笑っていただけたり、リセットできる時間になればいいなと思って演じていました」

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――初めての共演となりますが、お互いの印象は?

前田「林太郎くんは、僕がどんなパスを出しても物怖じせずに受け止めてくれるんです。第1話の"腕枕"のシーンは実はアドリブでした。本番前に軽く段取りを話していたんですが、セリフを少し変えた瞬間にもすぐ反応してくれて。あの年齢でそれができるのは本当にすごいと思いました。

現場では自分のことで精一杯になりがちですが、彼はちゃんと周りを見ていて、"阿吽の呼吸"で芝居をしてくれる。きっと本人も現場を楽しんでくれていたと思います」

水沢「前田さんは、いろんな役を演じられているからこそ"素の前田さんってどんな方なんだろう"と思っていました。でも実際にご一緒してみたら、情熱的で優しさにあふれた方。
現場では周りをよく見ていて、自然と空気を明るくしてくださる存在でした」

――静かな生活シーンで意識された"距離感"について教えてください

前田「林ちゃんが何を考えているか、常に意識していました。顔をじっと見ていなくても、視界には必ず入れていて、彼のテンションや空気感を感じ取るようにしていたと思います。お互い自然に呼吸を合わせられたので、言葉にしなくても通じ合える感覚がありました。

現場では全キャストに対しても、できる限り心地よい距離感を保つことを意識していました」

水沢「クランクインしてすぐ家のシーンを撮ったので、早い段階で関係性ができたのかなと思います。一緒にいながらも一人でいたい時間はお互いにあると思うので、あまり考えすぎず感覚で距離感をつかむようにしていました。結果的にそれが自然な空気感につながった気がします」

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――"言葉を交わさずに通じ合った瞬間"はありましたか?

前田「本番前に"このテンポで、ここで僕がボケるから"と軽く打ち合わせをしていたんですが、少しセリフを変えたら林太郎くんも即座に反応して、自然にセリフを変えてくれて。あの年齢で瞬発的に対応できるのは本当にすごいと思いました。
そのシーンでは彼はツッコミ役でもあるので、場の空気を読んでテンポを作るのがうまい。おかげで"阿吽の呼吸"のようなやり取りが生まれ、現場でも心地よい時間になりました」

水沢「アドリブのシーンはその瞬間の感情でお芝居をしていました。だからこそ、ところどころ"海"ではなく"水沢"が出ていた部分もあったかもしれません(笑)。
でもそうした"生っぽさ"があったからこそ、2人の関係がよりリアルに見えたのかなと思います」

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――"離婚"というテーマを通して、どんな"愛"を感じましたか?

前田「愛って、寄り添いすぎても、与えすぎてもダメなんですよね。やっぱり"距離感"が大事だと思います。
7月期に出演した『完全不倫-隠す美学、暴く覚悟-』で、"お互いが自然に過ごしている中で、ふと同じタイミングでお茶を飲んでる。そんな夫婦が私は好き"というセリフがあって、それがまさに"愛の形"だなと。相手を理解しようとすればするほど遠ざかってしまうこともあるし、無理に理解しようとしないことで自然に近づけることもある。
だからこそ、自然体でいられる距離が人を支え合うことにつながるんじゃないかと思います」

水沢「うまくいかないところも含めて、"愛"の魅力なんだなと感じました。相手を思うからこそすれ違う――その繊細さが、この作品の中で丁寧に描かれていると思います。演じながら、"愛にはいろんな形がある"と改めて感じました」

――「誰と、どう生きるか」というテーマが根底にあります。お二人が考える理想のパートナーシップ、そして人と共に生きるうえで大切にしていることを教えてください

前田「最近、自分でも"人格形成してるな"って思うんです。この短期間でいろんな役を演じてきたせいか、感覚がどんどん変わっていて。以前は"相手のことを考えて穏やかに生きる"を意識していましたが、今は"全体のことを考えて、相手を思いながら穏やかに生きる"に変わってきています。目の前のことに集中しすぎると視野が狭くなるので、今は少し俯瞰して自分を見られるようになった気がします。仕事でも、相手が何を求めているかを考えて、気を使わせない気遣いを心がけるようになりました」

水沢「お互いを思いやるからこそ、ちゃんと"話し合うこと"が大事だと思います。仕事でもその意識を常に持っていて、この作品を通して改めてその大切さを感じました。相手と向き合い、気持ちを言葉にすることで、信頼や絆が生まれると思います」

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――物語を通して、音喜多と伊勢谷の関係性にはどんな変化や深まりを感じましたか?

前田「僕自身はあまり変わらないような気がしていて、それが逆にいいのかなと思っています。依頼人の方が大きく変化していく中で、僕たちまで変わりすぎると説得力がなくなってしまう気がして。

変わる部分があるとすれば、杏奈が現れたことで"家族"という存在が身近になっていくこと。杏奈に対して、少し"面倒くさい親父"のような距離感を出せたら、人間味が見えるんじゃないかと思いました。一見、威厳がありそうで、なぜか子どもに舐められる――そんな絶妙なバランスを意識していました」

水沢「最初は探り探りでしたが、時間やシーンを重ねるうちに自然と距離が近づいていくのを感じました。特に家のシーンでは、回を追うごとにお互いをより想い合うようになっていて。その関係の変化が、作品の中でも自然に伝わっていれば嬉しいです」

――改めて、音喜多と伊勢谷の"絆"を一言で表すなら?

前田「家族」

水沢「優しさ」

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――最後に、作品を楽しみにしている方へメッセージをお願いします

前田「日々、誰しも我慢していることってあると思うんです。でも、近い人ほどその我慢に気づけなかったり、自分を置き去りにしてしまう瞬間がある。"自分を愛すればいい"という単純な話ではありませんが、僕は"誠実に愛に向かう人が報われる世の中"であってほしいと思っています。

この作品には、そんな気づきを与えてくれる瞬間がたくさんあります。家族に上下関係はなく、"一番愛したい人を愛する"ことが大切。同時に、"自分を愛せるのは自分だけ"というテーマも感じていて、杏奈のような素直な感情を通して、時にキリッと、時にやさしく伝えられたらと思いました。『おいしい離婚届けます』、ぜひ楽しんでご覧ください」

水沢「多くの方々にこの作品を見ていただけているようで、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。まだまだ物語は続いていきますので、さまざまな感情とともに楽しんでいただけたらと思います。引き続きご覧いただけたら嬉しいです」

文=HOMINIS編集部

放送情報

おいしい離婚届けます
放送日時:2025年10月1日(水)より放送中
チャンネル:中京テレビ・日本テレビ系