眞栄田郷敦が語る、映画『港のひかり』で感じた"人を思う力" 舘ひろしとの再共演で得た気づき
2025.11.15(土)
『正体』で第48回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した藤井道人監督と、名匠・木村大作キャメラマンがタッグを組んだ映画『港のひかり』。過去を捨てた元ヤクザの漁師・三浦(舘ひろし)と、目の見えない少年・幸太(尾上眞秀)の出会いから始まる、年の差を超えた友情と再会の物語だ。
全編35mmフィルムで撮影された映像は、雪に覆われた日本海の厳しくも美しい風景と、人が人のために生きようとする"強さ"を鮮やかに映し出す。12年の時を経て再び"おじさん"と向き合う青年・幸太を演じたのが、俳優・眞栄田郷敦だ。脚本を読んだときの衝撃、藤井監督との現場、そして舘ひろしとの再共演を通して感じた"映画と人間の魂"について語ってもらった。
――まず、脚本を読まれたときの印象からお聞かせください
「話としては、ある意味すごく"王道"だなと思いました。でもやっぱり王道って、一番面白いんですよね。読んでいて純粋に引き込まれるような面白さがありました。藤井監督のもとで、キャメラマンが大作さん、舘さんが主演でこの物語を撮ると知ったときには、わくわくが止まらなかったです。脚本を読み終えた瞬間から、早くこの世界の中に入りたいと思っていました」
――本作は、35mmフィルムで撮影されたことでも話題です。最近ではデジタル撮影が主流ですが、演じるうえで違いは感じましたか?
「技術的な部分で言えば、俳優部として特別に違いを意識することはあまりありませんでした。多少、フィルム特有の緊張感があるくらいです。とはいえ、デジタルだからNGを出してもいいというわけではないですし、常に本番という気持ちで向き合っているので、精神的にはいつも通りでした。ただ、今回はモニターを出さない撮影だったので、監督は大変だったと思います。演者としては普段と同じ感覚で芝居をしていましたが、現場全体に漂う静かな集中みたいなものは、フィルム撮影ならではでした」
――演じられた幸太という人物について教えてください。どんな準備をされましたか?
「一番時間をかけたのは"想像すること"でした。脚本の中には描かれていない12年間がある。その空白をどう埋めるかは、自分の芝居にかかっていました。彼が何を経験し、何を失い、どんな思いで故郷に戻ってきたのか――その時間を丁寧に想像することが、今回の大きな課題でもありました。でも、眞秀くんが演じた少年時代の幸太が、本当に素晴らしかったんです。目の見えない繊細な芝居で、おじさんから"光"をもらう大切なパートを担ってくれていた。その演技にすごく助けられました。僕はその延長線上にいる幸太を演じるだけでよかったし、彼が作ってくれた幸太の原点を大切にしようと思いました」
――尾上さんとは、現場で顔を合わせる機会はあったのでしょうか?
「一度だけ、僕の撮影のときに現場に来てくれました。もう彼のパートは撮り終えていたんですが、『現場を見たい』と言って顔を出してくれたんです。そのときに少しだけ話をしました。役についての相談やすり合わせはしませんでしたが、映像で彼の芝居を見ていたので、そこから感じ取ったものを自分の演技に反映していきました。少年期と青年期では、幸太の中で変わった部分もあれば、変わらず持ち続けている部分もある。だからあえてまったく同じにはせず、ベースにある彼の純粋さを残したうえで、別人のような変化を出したかったんです」
――尾上さんの印象はいかがでしたか?
「最初は少し人見知りなのかなという印象でした。現場でも年上の方々が多くて、最初は静かにしていることが多かった気がします。でも話してみると、ものすごく明るくて、ユーモアがあって、話題も豊富な方。特に漫画の話になるとすごく盛り上がるんですよ(笑)。一緒に過ごすうちに、自然と距離が近づいていった感じがあります。どんな場面でも笑顔でいてくれるし、現場の空気を柔らかくしてくれる存在でした」
――舘さんとは『ゴールデンカムイ』以来の共演でした。今回の再共演はいかがでしたか?
「舘さんとは『ゴールデンカムイ』のときからよく食事に連れて行っていただいていて、俳優としてだけでなく、一人の人間としていろいろなお話をしてくださる方です。今回もたくさん刺激を受けました。今回は舘さんが主演という立場でもあったので、現場での立ち居振る舞いや、撮影の合間の過ごし方など、すべてが勉強になりました。俳優としての姿勢、現場に対する覚悟、それらを間近で見られたことは本当に大きな財産です」
――舘さんは対談インタビューで「眞栄田さんの目の芝居が素晴らしい」と話していました。ご自身では"目の演技"を意識されていますか?
「そう言っていただけるのはありがたいですが、特別に"目"だけを意識しているわけではないんです。すべての表現を一つの流れとして考えているので、結果的に目に感情が表れているのかもしれません。ただ、舘さんには『郷敦の目は武器だ』と言っていただいていて、それは心に残っています。自分の表情や視線が誰かに届いているとしたら、それは嬉しいことですね」
――撮影地は石川県の輪島と、富山県でしたね。現場の雰囲気はいかがでしたか?
「僕は主に富山での撮影でした。冬の日本海は本当に迫力があって、波が荒くて、空気が重たいほど冷たかったですね。まさに"日本海の風景"そのものという感じでした。幸太にとっても、あの場所は特別な意味を持つ土地です。幼少期の苦しさや痛みが残る場所でありながら、大切な人と出会えた場所でもある。そういう相反する感情を自然と引き出してくれる場所でした。立っているだけで、心の奥がざわつくような、そんな感覚がありました」
――撮影の合間には、現地の食や人との交流もありましたか?
「観光はほとんどできなかったですが、石川にいた一日はお寿司を食べに行きました。やっぱり魚が本当に美味しい。富山では監督と一緒に食事をしたり、スタッフの方々と過ごす時間も多くて、あたたかい雰囲気の現場でした。現地の方々の協力も大きくて、寒さの中でも常に支えてくださる人がいて。その優しさに触れることで、作品のテーマである"人と人とのつながり"を自然と感じられた気がします」
――『港のひかり』を通して、ご自身にとっての発見や変化はありましたか?
「やっぱり舘さんの存在が大きかったです。主演として現場を引っ張る姿を初めて目の当たりにして、あらためて"スター"とは何かを感じました。真似できるとは思わないけれど、ああいう在り方を目指したいという気持ちは強くなりました。一つひとつの所作やセリフに説得力がある。存在しているだけで、空気が変わるんです。まさに"映画の中で生きている人"だと感じました」
――最後に、これから映画を観る方へメッセージをお願いします
「この作品は、誰もが共感できる"人と人とのつながり"を描いています。自己犠牲とか、人のために生きるというテーマって、難しく聞こえるかもしれません。でもこの映画では、それが決して重くなく、自然に心に入ってくる。観たあとに、自分の大切な人や、恩返ししたい人のことを思い浮かべるような作品だと思います。僕自身、完成した作品を観たときに"自分の周りの人を大事にしよう"と素直に思いました。観てくださる皆さんにも、そんな気持ちが少しでも届けば嬉しいです」
取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI
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