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芳根京子が大地で、高橋海人が動物?!芝居の"自由さ"を再確認した初共演「放牧されてる感じ」映画『君の顔では泣けない』インタビュー

2025.11.11(火)

映画「君の顔では泣けない」より
映画「君の顔では泣けない」より

芳根京子が主演、高橋海人(※「高」は正しくは「はしご高」)が共演する映画「君の顔では泣けない」が11月14日(金)に全国ロードショーされる。

君嶋彼方の小説を実写化した本作。坂平陸と水村まなみは高校1年生の夏にプールに転落。すると、お互いの体が入れ替わっていた。"必ず戻る"と信じて家族にも秘密にし、お互いの人生を歩んで15年ーー。30歳の夏、まなみは「元に戻る方法が分かったかも」と告げて...。

今回は芳根と高橋にインタビューを実施。難しい役と向き合う中でのお互いの印象や、想いをたっぷりと語ってもらった。

――本作の設定を聞いたときの心境からお聞かせください

芳根「過去にも入れ替わりが題材のものをやらせていただいたことがあるのですが、入れ替わりのハッピーエンドって、どこかで『戻ること』だと思い込んでいたところがあったんです。ですがこの映画はそういうことでもないというか。時間が経って相手の人生を生き続けたときに、どちらが自分の人生かが分からなくなる瞬間があるんです。そうなってくると、戻ることがすべてではない...というのが衝撃でした」

高橋「最初に『このタイトル好き!』と思いましたね(笑)。自分は入れ替わりものが初めてだったので、高いハードルを感じました。芳根ちゃんが言うように、戻るというよりも、15年間戻れない日々を2人がどう過ごしてきたのか、これからどう過ごしていくのか...が重要だったので、"生半可な気持ちでは臨めないな"と思いました」

芳根「難しいからこそ、より燃えました。『うおーやるー!怖い!でもやる!』みたいな感じです(笑)」

高橋「めちゃめちゃ怖かったですよね。でも、やる意味が絶対にある作品だし、人間としても成長できる作品なんじゃないかなと思いました」

映画「君の顔では泣けない」
映画「君の顔では泣けない」

(C)2025「君の顔では泣けない」製作委員会

――お互いの仕草を参考にすることもあったのでしょうか

高橋「紆余曲折あったうえで、現場では身振り手振りを省き、感情ベースで戦っていこうという話になりました。でも、自分は最初とにかくエッセンスが欲しいから、どんな戦い方をするのかも含めて、芳根ちゃんのYouTubeを見ていました(笑)」

芳根「多分それは間違ってるよ(笑)」

高橋「最終的にもっていき方は変えましたけど、勉強時間としては有意義な時間だったなと思います」

芳根「入れ替わりというと複雑に考えてしまいますが、『15年間戻らない』がこの作品の面白いところだからこそ、考え方としてはシンプルなんです。『私は陸のこと、高橋くんはまなみのことを一番に考えようね』という作り方をしたので、攻め方としては他の作品と大きくは変わらないということにみんなで気付いてからは少し気持ちが軽くなりました」

映画「君の顔では泣けない」
映画「君の顔では泣けない」

(C)2025「君の顔では泣けない」製作委員会

――入れ替わりをはじめ、それが当たり前になっている会話、年齢がお二人よりも上の設定と、いろいろと要素が詰まっていたと思うのですが、演じる側として面白かったところ、発見がありましたら教えてください

芳根「この作品でお芝居ができたことでの経験値、得たものがたくさんあると思うのですが、本編を見て、高橋くんの存在も大きかったんだなとより感じましたね」

高橋「えー!めっちゃうれしい」

芳根「最初は"どうしたらいいんだろう"と思うこともありましたし、すごく難しかったし....」

高橋「人間的な相性が大事な作品ですもんね」

芳根「『君の顔では泣けない』は、『お芝居ってこういう楽しさがあるよね』と改めて気づかせてもらえた作品なのですが、それはまなみが高橋くんだったからよりそう感じることができたんだなって思います」

高橋「大学生、社会人、30歳になって...と長い時間を過ごしていくのですが、入れ替わったあとの体と心が少しずつリンクしていく『グラデーション』を表現するのがとても楽しかったです。最初はどの時期から撮影するのか、みんなで話し合って進めたのも面白かったですね」

芳根「陸とまなみは定期的に喫茶店『異邦人』に集まって話をするんですが、30歳から撮る方がいいのか、20代から撮る方がいいのか、どちらが作りやすいのか...という話はしました。結局、30歳から撮り、ベースを作ってから過去に戻って撮影をしていこう、という話になりました」

――そんな「異邦人」での2人の報告会も素敵だなと思いました

高橋「『本当の自分』でいられる唯一の場所ですよね。いろいろなタイミングで会ってきたんだろうけど、『異邦人』に行くことが"イヤだな"と思うときもあっただろうし、もちろん"行きたい!"と思うときもあって...。そのなかでも、たくさんの駆け引きをしてきただろうから、陸とまなみにとって『異邦人』は『戦の場』だったのかなって思います」

芳根「15年経っても、ずっと同じ席に座っているのもグッときます。入れ替わった日の朝から今の今まで、あの場所が変わらずあるのが心の支えであり、戦いでもあっただろうな、って思います」

――陸とまなみって唯一無二の関係性ですよね

芳根「正直、もともと友だちだったというよりも、クラスメイトの1人っていう雰囲気があったと思います」

高橋「だから面白いですよね。接点があまりなかった2人が、どんどんかけがえのない存在になっていくって」

映画「君の顔では泣けない」坂平陸役・芳根京子
映画「君の顔では泣けない」坂平陸役・芳根京子

(C)2025「君の顔では泣けない」製作委員会

――初共演ですが、最初にどんな印象を持たれて、どう変わったのか教えてください

芳根「最初の印象...忘れちゃったぐらい不思議な人だなと(笑)。でもすごく話しやすい方だなと思いました。陸とまなみってすごくいいバランスで、この2人だから成立している部分があると思うのですが、私も高橋くんだからこそ苦しみや困っている想いを素直に出せました。まなみの柔らかさや包む力を高橋くんからも感じていました」

高橋「芳根ちゃんって、めちゃくちゃまっすぐ生きている人間だから...」

芳根「分からないですけどね!」

高橋「僕調べですけど(笑)、分からないときは『分からない』と言うし、楽しいときは『楽しい』と言う。感情をストレートに伝える人だから、現場のみんなもすごく助かったと思うし、同じ方向を向きやすかったです。自分が困ってるときも待ってくれて、器の大きい人だなというか。人間として"主人公だな"って思っていました」

――お互いの演技を見て刺激を受けたことはありますか?

高橋「意図してかは分からないですが、長い年数を歩んでいくうえで、目の使い方がすごく印象的でした。目が合う合わないもそうだし、目の据わり方もそうだし、覚悟を決めてる瞬間、揺らいでいる瞬間...。仕草に頼らない分、目や心の部分を大事にしていたんだろうなって。だから、細やかな目の動きで、すごく感情が伝わってきて泣ける。それが素敵でしたね」

芳根「(高橋さんは)いい意味で動物的な感覚があるから、何が飛んできても受け止められるように準備をしなきゃと思っていました。考えて、考えて...でも本番ではちょっとリラックス、みたいなことを絶妙に表現されるんです。次に何が飛んできて、どういう角度の球なのか。決まっていないからこそ"何がなんでも拾う!"と構えていたのが楽しかったです。実際に共演してみて、お芝居の自由さを感じたし、こうありたいなってすごく思いました」

――高橋さんの演技で予想外だったこともあったのでしょうか?

芳根「長い沈黙がありましたよね」

高橋「ありましたね(笑)」

芳根「本当に(物語の中で)気まずい時間で...。"いや、さすがに台詞は飛んでないよね?"って思うくらいでした」

高橋「確かに、普通の作品だったら止められるぐらいの時間を空けましたね」

芳根「"信頼し合えているな"と思えたのは、そうしたシーンがあったからかもしれないです。間があっても止めないし、それがしっかりつながっていく感じがしていました」

高橋「芳根ちゃんは僕を動物と言ってくれましたが、僕は芳根ちゃんを大地だと思っていて(笑)。"ここで楽しんで!"と放牧されている感じ。それこそどんなことをしても返してくれるし、受け止めてくれるからすごく楽しかったです。改めて、のびのびやるのが一番楽しいって感じた現場でした」

映画「君の顔では泣けない」水村まなみ役・高橋海人
映画「君の顔では泣けない」水村まなみ役・高橋海人

(C)2025「君の顔では泣けない」製作委員会

取材・文=浜瀬将樹

公開情報

映画「君の顔では泣けない」
2025年11月14日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
原作:君嶋彼方
監督:坂下雄一郎
出演:芳根京子、高橋海人(※「高」は正しくは「はしご高」)ほか
(C)2025「君の顔では泣けない」製作委員会
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ