市原隼人、『おいしい給食』で得た俳優としての糧 青森・岩手ロケで体感した"食を共有する価値"
2025.11.4(火)
1980年代の中学校を舞台に、給食マニアの教師・甘利田幸男の奮闘を描いてきた『おいしい給食』シリーズ。その劇場版最新作となる『おいしい給食 炎の修学旅行』が公開された。青森・岩手でのロケを敢行し、地域色豊かな食や子どもたちとの交流を交えながら、笑いと人間味あふれる物語が展開する。
2019年から6年にわたり甘利田を演じ続けてきたのが、市原隼人だ。滑稽でありながらも全身全霊で給食に挑む教師を通じて、彼はいかに"食べることの尊さ"を描こうとしたのか。ハードな現場で積み重ねてきた役づくり、俳優としての現在地、そして作品が投げかける普遍的なメッセージについて、深く語ってくれた。
――劇場版もついに第4弾となりました。今回は青森と岩手でも撮影が行われましたが、ご当地の食べ物がどれも美味しそうでしたね
「まず青森ではせんべい汁をいただきました。十和田湖の大自然の中で味わうせんべい汁は本当に美味しかったです。甘利田先生は給食のために学校に通っているような人物ですので、給食以外で熱々の料理を食べるのは珍しく、すごく新鮮でした(笑)。岩手では藤三旅館の源泉かけ流し温泉に入り、初めて"ととのう"という感覚を体験しました。本物の温泉に触れることができて感動しました。劇中では卓球のシーンがあり、共演の田澤泰粋くんと6時間練習する日もありました。芝居をしながら打ち合うのは難しかったのですが、その努力が映像にもしっかり刻まれていると思います」
――岩手名物のわんこそばの食いっぷりも最高でした
「撮影後にお店のご厚意で子どもたちが好きなだけ挑戦させていただけたんです。120杯食べた子や80杯でギブアップした子が笑顔で報告してくれる姿に、この作品の主役は子どもたちなんだと改めて思いました。宮沢賢治記念館にも行きましたし、冷麺を食べに1時間並んだこともいい思い出です」
(C)2025「おいしい給食」製作委員会
――市原さんは子供の頃の給食の思い出はありますか?
「小学校の頃は、足が速い人がかっこいい、なんて価値観がありましたけど、僕は誰より早く食べる人がかっこいいと思っていました(笑)。牛乳が余ったら手を挙げて、おやつが余ればじゃんけんに参加して、そういう時間が大好きでした。あと、班替えで好きな子が見えるポジションに座れるよう頑張っていたのも覚えています」
――ちょっと目が合うだけでドキドキする、あの感じですね(笑)
「そうです(笑)。僕は本当に食べることが好きで、給食の時間はご褒美のような時間でした。作品を通じて小学生時代を思い出すと、給食の時間がいかに尊いものだったかを改めて感じます。みんなで同じものを食べて笑い合うからこそ、あの時間は特別だったんだなと。給食の時間は、親を外して行う人生で初めての会食の体験でもある。誰かと一緒に食べることで、その相手のことをより愛おしく思えるという感覚は、大人になった今も同じです」
――「食を共有することの価値」は、この作品でも一貫したテーマになっていますね
「そう思います。シリーズの中でも"食を共有することは尊い"というセリフがありましたが、本当にその通りだと今でも感じています」
――今作で実際に食べて印象的だった給食はありますか?
「選べないくらい全部美味しかったのですが......やっぱり揚げパンですね。特にきな粉パン。口の周りについた粉をペロッとなめるのも含めて大好きなんです。給食でしかなかなかお目にかかれない特別感もありますし、いつ食べても変わらない美味しさだと思います」
――シリーズ開始から6年近く演じ続けている甘利田先生はどのように向き合ってこられましたか?
「どの作品よりも一番ハードな現場だと思っています。原作がない分、役者が自由に肉付けできる余白をいただいていて、それは信頼していただいている証でもあるのですが、その分寝られないんです。給食のシーンひとつとっても、どんな食べ方をして、どんなリアクションをするか脚本には書かれていない。だから現場で自分なりに動きを考え、時には酔拳のようなアドリブを加えてみたり、阿吽の呼吸で挑戦していく。その積み重ねがあって、ただ食べているだけなのに意識が飛んだりするほどハードなんです」
――実際に映像を見ていても大変な現場なんだろうなってことが伝わってきます
「給食のシーンは長回しで撮るのですが、何度も食べてリアクションを繰り返すんです。しかも給食以外の場面でも甘利田先生は走ったり感情を爆発させたりと、常にアクティブ。怪我も尽きませんし、満身創痍になりながら撮影を終える日々です。正直、楽しむ余裕は一切ありません。ですがそれは本気でコメディと向き合いたいからなんです。チャップリンの言葉にもあるように、近くで見れば悲劇でも、俯瞰で見ると喜劇になる。甘利田先生にとっては給食がこぼれることも、子どもに負けることも"この世の終わり"の悲劇。でも観客からすればそれは笑いになる。そんな滑稽な姿を見せながらも、好きなものを好きと胸を張って生きることの尊さを体現しているんだと思います。失敗や恥ずかしい思いをしても、それを糧にして人生を楽しめるかどうかは自分次第。そこに活力を感じていただけたら嬉しいです」
――長く愛される理由が分かりますし、やはり"食"という普遍的なテーマがあるからこそ、時代を超えて共感を呼ぶのだと思います
「そう思います。まず、2019年に始まってから約6年。このシリーズがここまで続くとは夢にも思っていませんでした。そんな夢を見させていただけたのは、作品を支えてくださるすべてのお客様のおかげだと思っています。だからこそ、まずはお客様に恩返しをしなければいけない。変化を求められる時代にあって、令和という時代はニーズや環境に合わせてどんどん変わっていかなければならないけれど、この『おいしい給食』における甘利田先生の良さは"変わらない"ことにもあると感じています。シーズン1からずっと、滑稽な姿を見せながら、笑われ、恥ずかしい思いをしながらも、給食に振り回され、人生に振り回され、それでも明日こそはと前を向いて生きようとする。その姿が甘利田の魅力であり、多くの方に人生を生きる活力として受け取っていただけたら嬉しいと思っています」
(C)2025「おいしい給食」製作委員会
取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI
公開情報
映画『おいしい給食 炎の修学旅行』
2025年10月24日(金)新宿ピカデリーほか全国公開中
出演:市原隼人 武田玲奈 田澤泰粋 栄信 田中佐季
片桐仁 いとうまい子 赤座美代子 六平直政 高畑淳子 小堺一機
監督:綾部真弥 製作総指揮:吉田尚剛
企画・脚本:永森裕二 プロデューサー:岩淵規
企画・配給:AMGエンタテインメント
(C)2025「おいしい給食」製作委員会
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