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小泉今日子と浅野忠信がにじませる"悲哀"が生み出す化学反応「風花」<4Kレストア版>

2025.10.30(木)

映画「海の沈黙」(2024年)ではかつての恋人と再会する女性を演じ、ドラマ「続・続・最後から二番目の恋」(フジテレビ系)では大人の恋愛青春コメディーを繰り広げるなど、俳優として年々"深み"を増している小泉今日子。

一方、ドラマ「SHOGUN将軍」(2024年、Disney+)の出演で、2024年開催の第76回エミー賞で助演男優賞にノミネートされ、2025年開催の第82回ゴールデングローブ賞では、日本人初となるテレビドラマ部門助演男優賞を受賞するなど、世界から注目されている浅野忠信。そんな、これからも俳優としての活躍が期待される2人が卓越した表現力を見せる作品が、2025年11月12日(水)22:00から日本映画専門チャンネルで4Kレストア版がTV初放送される映画「風花」(2001年)だ。

■生活も性格も、全て正反対な男女のロードムービー

小泉今日子と浅野忠信は卓越した表現力で正反対の男女を演じる
小泉今日子と浅野忠信は卓越した表現力で正反対の男女を演じる

同作品は、鳴海章の同名小説を相米慎二監督が映画化したもので、孤独に追い込まれた男女の喪失から再生までを描いたロードムービー。北海道に残した一人娘に5年ぶりに会いにいく風俗嬢・ゆり子(小泉)と、酔った勢いからドライブに付き合うことになる謹慎中の文部省キャリア官僚・廉司(浅野)。性格も生活も旅の目的も全く異なる2人の、ぎくしゃくとした旅を描く。

相米監督の遺作となった同作は、豪雨、傘、桜、など相米映画で繰り返し描かれてきたモチーフが随所に現れる、まさに"相米監督の集大成"を思わせるもので、ただの風景だけのカットですら心を揺さぶられるほどの"画力"があるのだが、そのパワーに劣らぬ魅力が小泉と浅野の卓越した表現だ。

小泉演じるゆり子と浅野演じる廉司は、共に人生から落伍して「死」に引き付けられているという状況の中で偶然出会い、ひょんなことから一緒に北海道に行くことになるのだが、ゆり子にはゆり子の、廉司には廉司の"希望を失い自暴自棄になった理由"があり、性格も考え方も違うが、運命の渦に引き寄せられるように互いの"喪失感"で共鳴し合ってゆく。

そんな姿を、2人は繊細でありながら色濃く表現。小泉と浅野は全く違うタイプのキャラクターをそれぞれ演じながら"喪失感"だけは共鳴するという、互いの演技に影響されることなく同じ"加減"で干渉し合うことで生まれる化学反応を起こしている。

■小泉と浅野は種類の違う悲哀を見事な演技力で表現

小泉は一人娘を北海道の実家に預けて、一人東京で風俗嬢として生きているゆり子の孤独感からくる"悲哀"を、浅野は酒のトラブルで失職した喪失感からくる"悲哀"を常に纏うことで、どちらがメインというのではなく、2人だからこそ成り立つ関係性から生まれる"変化"を表現。

例えば、旅先で酔っ払ってはしゃいでいるシーンも、どちらにも必ず"悲哀"が漂っているのだ。それは、細かい所作や視線、口調、表情といった物理的な動作で表現されているものではなく、雰囲気としてにじみ出ている。この"悲哀"が常にフィルターのようにかかっているため、どのシーンにも切なさがあり、なんとも言えない筆舌に尽くしがたい化学反応がスクリーンの中に起こって、観る者の心をどうしようもなく揺さぶってくる。

「日本の名優」に名を連ねる2人の、"悲哀"をにじませる演技で生み出される化学反応を、ぜひ堪能していただき、激しく心を揺さぶられてみてはいかがだろうか。

文=山本弘子

放送情報【スカパー!】

風花<4Kレストア版>
放送日時:2025年11月12日(水)22:00~ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
出演:小泉今日子、浅野忠信、麻生久美子、尾美としのり、小日向文世、鶴見辰吾(友情出演)、椎名桔平(友情出演)、笑福亭鶴瓶(声の出演)、木之元亮、寺田農、綾田俊樹、酒井敏也、野間洋子、山本真亜子、高橋長英、柄本明、香山美子
※放送スケジュールは変更になる場合があります。