鈴木京香×山﨑努が繰り広げるいびつな関係性...2人の圧倒的な演技力に引き込まれる映画「こおろぎ」
2025.10.30(木)
愛憎の淵で、むき出しの生命力が交差する青山真治監督作品「こおろぎ」は、その特異な美学と哲学によって、公開から時を経てもなお、観る者に強烈な印象を残し続ける異色作だ。監督は、「EUREKA(ユリイカ)」(2001年)で第53回カンヌ国際映画祭の国際批評家連盟賞とエキュメニック賞をW受賞しており、その独自の映像美とテーマ性で国際的にも評価が高い。そんな青山監督の才能が、俳優たちの凄まじい熱量とあわさって結実した傑作「こおろぎ」が2025年11月4日(火)23:30から日本映画専門チャンネルにて放送される。
■西伊豆で繰り広げられる歪な人間ドラマ
舞台は、荒々しくも美しい自然に囲まれた西伊豆の海辺。そこにひっそりと建つ家で暮らす、1組のワケあり男女。女は妖艶な魅力を放つ女性・かおる(鈴木京香)、そしてもう一人は、目が不自由で口もきけない男(山崎 (※「崎」は正しくは「立さき」)努)だ。彼らの生活は、世間から切り離されたように静か。かおるは男の世話をかいがいしく焼くが、その顔に浮かぶのは、献身とは少し違う、どこか優越感に浸っているようにも見える笑みだ。「それは慈しみなのか、それとも一種の快楽なのか...」。
この2人の関係性はまさに共依存で、一方がなければ他方が存在し得ない、危ういバランスの上に成り立っている。彼らの生活の中では、日常的な会話も、明確な目的も必要とされない。ただ潮騒と風の音だけが聞こえる中、何をするでもなくゆっくりと穏やかに流れていく時間がある。この静謐さこそが、底に渦巻く激しい感情を際立たせる。本作は、そんな2人が繰り広げる純粋な愛の物語というにはあまりにも深く、そして歪な人間ドラマである。
しかし、その静寂を打ち破るのが街にあるバーだ。そこには町の人が集い、怪しい雰囲気で満ちている。店内にはミラーボールに神輿、様々な文化が混ぜこぜの異空間が広がり、日常の均衡が崩れ、異様なエネルギーが噴出する場所。そこで出会った若いカップルがこの物語を大きく動かしていく。
■作品から感じる、鈴木京香と山﨑努の圧倒的存在感

この作品の特筆すべき点は、生命の根源的な衝動の描写だ。特に、かおるが手づかみでチキンをむさぼるシーンは実にエロティシズムを帯びている。それは性的な行為を直接描かずとも、食欲という生命力を通じて、彼女の存在の根っこにある情熱をむき出しにする。観客は、目の前で展開される2人の関係を前に、「愛し合っているのか、憎しみ合っているのか」という究極の問いから逃れられなくなる。物語は、静かに、時に爆発的に、パワフルかつ繊細に描かれていく。
そして、圧倒的な存在感を見せつけた二大俳優の競演。この映画を忘れがたいものにしているのは、やはり主役2人の演技の力にほかならない。かおるを演じた鈴木京香の美貌は、その役柄の複雑な魅力を完璧に表現し、彼女の存在感が作品全体に張り詰めた空気と官能的なムードをもたらしていると言える。
一方、山崎のこの上ない怪演は圧巻の一言。台詞が一切ないにもかかわらず、その表情の微かな変化や手の動きだけで、絶望、怒り、そして依存といった複雑な感情を見事に表現しきっている。台詞を交わすことができないからこそ、2人の間に漂う目に見えない感情のやり取りが、観客の心を深くえぐり、この共依存のドラマを極上の芸術へと高めているのだ。
単なるミステリーか寓話かはたまた愛憎劇か...といった枠では収まらない、人間の業を描いた壮大なドラマ。その緊張感と不穏な美しさに、観ているこちらのゾクゾクが止まらない。
文=石塚ともか
放送情報【スカパー!】
こおろぎ
放送日時:2025年11月4日(火)23:30~ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
出演:鈴木京香、山﨑努、安藤政信、伊藤歩、光石研
※放送スケジュールは変更になる場合があります。
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