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彩風咲奈、退団から1年――「宝塚ロス」を経て見つけた自由と挑戦

2025.10.18(土)

宝塚歌劇の日本物を放送する時代劇専門チャンネルの大人気企画「華麗なる宝塚歌劇の世界」。本編前後に放送されるナビゲート番組では、日比谷・東京宝塚劇場のビル内にある"秘密のカフェ"を舞台に、案内人の中井美穂と豪華ゲストが作品の魅力を語り合い、視聴者を宝塚歌劇の世界へと誘っていく――。

10月20日(月)から始まるシーズン7の第1回に登場するのは、雪組トップスターとして数々の舞台を牽引し、2024年10月に惜しまれながら退団した彩風咲奈。番組では、2022年雪組宝塚大劇場公演『夢介千両みやげ』を紹介する。

今回、収録後のインタビューでは、稽古の思い出や"和物の雪組"に受け継がれる伝統への思いを振り返るとともに、退団から1年を経た心境の変化、そしてこれから挑戦してみたい役柄や新しい活動への意欲を率直に語ってくれた。

――収録の感想をお願いします

「本当に楽しく収録させていただきました。新人公演に出演していた頃から『宝塚カフェブレイク』でお世話になり、ずっと中井さんと一緒にお仕事をさせていただいてきたので、収録であることを忘れてしまうくらい、今日は楽しくお話させていただいた感覚でした」

――"和物の雪組"とよく言われますが、役作りの際に時代劇をご覧になることはありますか?

「あります。演出の先生方に紹介していただいた作品を観ることもありますし、時代背景が近い作品を選んで観ることもあります」

――印象に残っている作品は?

「NHK大河ドラマの『西郷どん』です。鈴木亮平さんのお芝居がとても好きで、西郷隆盛のおおらかさが夢介を演じるうえでのエッセンスになればと思いながら観ていました」

――雪組が得意とする日本物で主演を務められた際のプレッシャーや決意については?

「"和物の雪組"と言われていますので、お稽古場からとても厳しかったです。着物の着方ひとつとっても、少し乱れていれば上級生からすぐに直すよう注意されましたし、袖を通した瞬間から整えるようにと教わりました。

所作や座り方など細かな部分までご指導いただき、自分も下級生に伝えていかなければならないという責任を感じていました。日本物に臨むときは、自然と背筋が伸びる思いがありましたね。ただ『夢介千両みやげ』は武士役ではなかったので、"かっこつけなくてもいいんだ"と思えたのは大きかったです。気負いすぎず、ある種の気楽さを持って舞台に立てたように思います」

――収録では夢介の役作りが難しかったとおっしゃっていましたが、訛りのある話し方など苦労されたことはありましたか?

「訛りは特に苦労した覚えはありません。もともと方言のある人間だからかもしれません。私は西の出身なので東の訛りとは少し違うと思いますが、その前に『壬生義士伝』で東北の訛りを使う役を演じたときに、方言指導の先生について学びました。その経験があったので、方言を話すことに抵抗がなく、"あまり考えずに臨めた"のが大きかったのかなと思います」

――作品の面白さを伝えるうえで、大事にされたことは?

「本当にみんなでよくお稽古しました。茶屋の場面では、私が夢介として話す前にいろんな人物がやり取りしていて、私はまだセリフがないけれど一緒にそこにいて、会話を聞きながら"こうじゃない?"と意見を交わしていました。1人だけでは間の取り方が分からない部分もありますし、とにかく全員で探り合いながら作り上げていきました」

――『夢介千両みやげ』で、夢介以外に演じてみたい人物は?

「楽しそうだなと思ったのは、真那(春人)さん率いる"一つ目"の皆さんですね。とにかく個性的で、真那さんが"ザ・悪代官"みたいで面白くて(笑)。チーム全員が個性的で、最後に爆発したあとネギが刺さっているのも可愛くて。"ああ、こういうのもいいな"と思いました」

――雪組での日本物の中で、一番印象に残っている役はありますか?

「いつも緊張して張り詰めながら取り組んでいたのは『星影の人』の桂小五郎です。新選組のお話なので、舞台上はほとんど新選組の方たちで、長州藩側は私だけ。長州を背負って演じるというのは、すごくプレッシャーでした。

さらに舞台上で早替えがあったり、早霧せいなさんと最後に2人きりで立ち回りをしたりと、本当にお稽古を重ねても毎回緊張しました。でも、その緊張があるからこそ"生の自分"が舞台に出せたとも思います。大変でしたが、すごく好きな作品です」

――退団してからの1年間、ご自身の中で心境の変化はありましたか?

「宝塚が大好きだったので、卒業したばかりの頃は"宝塚ロス"に陥り、大切なものをすべて失ってしまったような気持ちで、本当に寂しかったです。

でも『no man's land』という退団後初のコンサートを経て、新しい仲間や、変わらず応援してくださるファンの皆様、新しく舞台を観に来てくださったお客様など、多くの出会いに恵まれました。その中で"宝塚で過ごした日々は自分の中にずっとあるし、みんなとつながっている思いは変わらない"と感じ、今は"何にでもチャレンジできるんだ"と思えるようになりました。

宝塚時代は男役として芝居や表現の面でどうしても制限がありました。男役という一本の道を作った上で、そこからどう広げていくかという世界だったと思います。今はその制限から解き放たれ、自由にできることがたくさんある。その可能性の広がりを感じると、とてもワクワクしますね」

――自由な時間が増えて、初めて夢中になったことや、新しく目覚めたことはありますか?

「私、本当に飽き性なんです。芸事以外でひとつのことをずっと続けることがなかなかなくて...。現役時代は資料以外で配信サイトなどもあまり観なかったんですが、今はよく観るようになりました。

最近は『グラスハート』を一気見しました!音楽が全部良くて、出演されている役者さんも素敵で、とても面白かったです。"芸術を愛する作品を自分が観られるんだな"と感じられて、とても好きでした。あと『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』という、おじいさんがバレエを始めるお話も最後まで観ました。やっぱり自分が夢中になれるのは、芸術や表現に関わる作品なんだなと改めて思いました」

――今後の活動について、挑戦してみたい役や作品はありますか?

「まだ女性の役を演じたことがないので、男役脳から女性役にチェンジできていないんです。外の舞台を観に行っても、どうしても男性キャストさんばかりに目がいってしまって...。でも、個性的な女性の役には挑戦してみたいです。例えば"101匹わんちゃん"のクルエラのような、かっこいい悪役の女性にはとても惹かれます。

『no man's land』に出演したとき、演出の荻田浩一先生から『彩風に似合う役がある。サウンド・オブ・ミュージックのマリアだ!』と言っていただきました。皆さんからも『ああ~!』と声が上がって(笑)、それはすごく嬉しかったです。"大草原を駆け回って大自然の中で歌う姿が似合うと思う"と言っていただいたので、『視野に入れておきます!』とお答えしました」

――『夢介千両みやげ』ともかけて、これから千両を持って道楽修行をするなら、何をしたいですか?(千両=現代の約1億円~2億円)

「やっぱり海外に行きたいですね。日本での道楽修行というより、海外でいろんな"見たことのないもの"を見に行きたいです。特に行きたいと思っているのはトルコ。理由があるわけではないんですが、なぜか惹かれるんです。1人旅をしたことがないので、いつか挑戦してみたいです」

――最後に、オンエアを楽しみにしている読者の方へメッセージをお願いします

「卒業して1年経ちましたが、"彩風は変わらず、でも変わっています"ということをお伝えしたいです(笑)。まだ皆様にお伝えできていないこともたくさんありますが、これからも楽しくいろんなことを見て、学んで、感じて、準備をして...未来につなげていけたらと思っています。そして相変わらず宝塚も大好きなので、私自身も皆様と一緒に宝塚ファンの一員として"推し活"を楽しみたいです」

文=HOMINIS編集部 撮影=MISUMI ヘアメイク=栗原里美

放送情報【スカパー!】

『夢介千両みやげ』(’22年雪組 宝塚大劇場)
放送日時:2025年10月20日(月) 22:00~ほか
放送チャンネル:時代劇専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります