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花澤香菜×土屋神葉が語る『Let's Play クエストだらけのマイライフ』の魅力 物語を通して見える「文化の違い」

2025.10.1(水)

TVアニメ『Let’s Play クエストだらけのマイライフ』サム役の花澤香菜(右)、マーシャル・ロー役の土屋神葉(左)
TVアニメ『Let’s Play クエストだらけのマイライフ』サム役の花澤香菜(右)、マーシャル・ロー役の土屋神葉(左)

現在放送・配信中のTVアニメ『Let's Play クエストだらけのマイライフ』は、累計閲覧数9億回を誇る大人気WEBコミックを原作とした青春群像劇。舞台はアメリカ・ロサンゼルス。ゲームクリエイターを夢見る22歳のサム・ヤングが、過去のトラウマや恋愛、仲間との出会いを通して少しずつ心を開き、成長していく姿が描かれる。

そんな本作で、サム役を務めるのは花澤香菜。そして、サムの人生に大きな影響を与える人気ゲーム実況者・マーシャル・ローを演じるのが土屋神葉だ。海外ドラマを思わせるテンポ感やリアルな人間模様など、アニメならではの表現に挑んだ2人が語る「キャラクターの魅力」と「現場で感じた手応え」とは。作品に込めた思いや、互いのお芝居への印象について話を聞いた。

――本作は海外でも人気の高い原作をアニメ化した作品ということもあり、日本のアニメではあまり見られない描写や文化の違いが随所に盛り込まれています。実際にご覧になってみて、特に印象的だった部分はどんなところでしたか?

花澤「まず、定期的にサービスシーンがやってくるんですよね。上裸の男性がとか(笑)。日本の作品にもそういうのがまったくないわけではないんですけど、ちょっとニュアンスが違うんです。そういう意味では、異文化を垣間見ているような感覚で新鮮でした」

土屋「僕もまったく同じことを思いました。マーシャルが上裸で公園を走っているシーンがあるんですけど、日本のアニメだったらかなりコミカルに寄せるところを、この作品ではリアルに描いているんですよね。今年、僕自身がアメリカや香港に行くことがあったんですが、朝ランニングしてると、本当に同じように上裸で短パンのマッチョが走っているのを見かけて。『あ、これって現実なんだ!』って(笑)。そういう意味で、この作品はしっかり現地のリアルを反映しているなって思いました」

――人間関係の描き方についてはどうでしたか?

花澤「友達同士のつながりがすごく深いんですよね。年齢とか性別とか関係なく、自然と集まって支え合っている。サムの周りにはたくさんの仲間がいて、お互いに足りない部分を補い合っている。そういう人間関係の描写って、日本のアニメだとあまり見ない気がします。もっとバディものとかチームものとして強調するか、逆に主人公一人に焦点を当てるか。その中間のリアルな人間関係を描くのは珍しいと思いました」

土屋「そうですね。5話くらいまで進んでもまだ描かれてない部分は多いんですけど、それでも特にサムの周りの人間関係には強い絆を感じます。僕自身、演じながら『自分にもこういう仲間が欲しいな』って思うくらいで。サムを支える人たちがいて、でもサム自身も彼らを支えている。相互の関係性がちゃんと描かれていて、それが物語全体の温かさになっている気がしました」

――海外ドラマのような雰囲気もありますよね

花澤「作りも海外ドラマに近いですよね。私は『アリー my Love』を観て育った世代なんですけど、あのドラマのテンポ感やユーモアの入れ方がすごく好きで。本作もそういう空気があって、セリフのやり取りが自然なんです。大げさに笑わせるんじゃなくて、日常の中でクスッと笑える瞬間がある。そういうところが海外ドラマっぽいなと思いました」

土屋「僕も海外ドラマは結構観てきて、吹き替えで観ることも多かったので、本作を演じているときもアニメを録っているというより吹き替えをしている感覚でした。セリフの間の取り方や強弱のつけ方がアニメと違っていて、何より言葉選びとその紡ぎ方に違いを感じています。だから演じながらもいつもの芝居とは少し違うなと感じていました」

TVアニメ『Let's Play クエストだらけのマイライフ』サム役の花澤香菜
TVアニメ『Let's Play クエストだらけのマイライフ』サム役の花澤香菜

――それぞれ演じられたキャラクターに共感できる部分はありましたか?

花澤「サムは恋愛初心者なので、デートに誘われたり、そこから家で服を着替えるといった繊細な部分が丁寧に描かれているんです。そういうのってやっぱり万国共通ですよね。サムが奥手というのもあって、観ていてすごく共感しやすいし、私自身も自然に見られるというか。『バリバリいろんな人と付き合うぜ!』みたいなキャラクターではないので、むしろその奥ゆかしさや可愛らしさが魅力だなと思います」

土屋「そうですね。まだそこまで"恋愛きゅんきゅん"という感じにはなっていないんです。マーシャルにはすでに彼女がいるので、本人もどこか戸惑っているような状況で。僕自身も『ここからヒロインとどう距離を縮めていくんだろう?』と気になっています。しかも、今いる彼女がマーシャルにとって大きな支えになっているので、その関係がどうなるのか......。青春の甘酸っぱさというより、マーシャル視点ではちょっと一歩先に進んだ、大人っぽいドキドキ感がありますね。もしかしたら、この先は少しドロドロした展開になるのかもなんて想像もしてしまいます(笑)」

花澤「マーシャルの彼女、強そうなんですよね。対決したら絶対負けそう(笑)」

土屋「負けますね(笑)」

TVアニメ『Let's Play クエストだらけのマイライフ』に出演する花澤香菜と土屋神葉
TVアニメ『Let's Play クエストだらけのマイライフ』に出演する花澤香菜と土屋神葉

――花澤さんはご自身も「慎重な性格がサムと似ている」とコメントされていましたが、演じていて共感する部分や、自分にも重なるなと感じる瞬間はありましたか?

花澤「人から言われたことをすごく気にしてしまったり、頭の中でいろいろ考えていてもあまり外に出さなかったり。そういうところは共感しましたね。ただ、私はもう30代半ばになっているので、サムのようなピュアさは少し薄れてきている気がして。だからアフレコでは20代前半に戻るつもりで意識していました。最初の収録のときに『経験値が高すぎます』と言われて、『もっと迷える子羊になってください』というディレクションをいただいたんです。なので今は"迷える子羊"で頑張っています(笑)」

――でも花澤さん、これまでのキャリアを振り返ると、ピュアなキャラクターを演じてきた経験はかなり多いですよね

花澤「そうなんです。だから戻れないなんて思ってはいなかったんですけど、どうしても年齢や経験から出てしまうものがあるんだなと感じました。改めて、アフレコって難しいなと思いながら演じています」

土屋「マーシャルは"インフルエンサー"という立ち位置のキャラクターなので、その立ち振る舞い方には、自分がこれまで実生活で見てきたインフルエンサーさんの軽快さを取り入れています。でも、その裏側には"恐怖"が潜んでいるというか。ネット社会にある底知れない得体の知れなさと常に戦っている感じが、マーシャルの輪郭なんだと思っています。僕自身が演じる上で印象的だったのは、第1話でサムの作ったゲームにダメ出しをするシーンです。そのとき監督から『浅すぎる』と言われたんですよ(笑)。つまり、ゲームを愛しているからこその真剣さをもっと前面に出さないと、ただ悪口を言っている人に見えてしまうんです。だから僕は、インフルエンサーとしていろんなものと戦いながら、自分が標的にならないために潜在的に持っている信念みたいなものを、強くアピールするようにしました。演じるときは、普段の延長線上というよりも1枚か2枚着ぐるみをかぶって出力値を上げるくらいのイメージで演じています」

――現実のインフルエンサーの立ち振る舞いからヒントを得た部分も多いんですか?

土屋「ありますね。YouTuberの方とか、これまで自分が好きで見ていた人たちから影響を受けています。最初の声の出し方やノリなんかは『あ、この人っぽいな』と思いながら取り入れてみたり。そういう意味では、現実のインフルエンサーの空気感を参考にしてますね」

花澤「じゃあ、この先ボイパとか見れるのかな」

土屋「いやいやいや、それは......ちょっと練習しておきます(笑)」

TVアニメ『Let's Play クエストだらけのマイライフ』マーシャル・ロー役の土屋神葉
TVアニメ『Let's Play クエストだらけのマイライフ』マーシャル・ロー役の土屋神葉

――お互いのお芝居についての印象はいかがでしたか?

花澤「マーシャルの魅力はやっぱり恋人への甘えん坊なところですね。普通アニメキャラってかっこいいを優先して描かれることが多いじゃないですか。でもマーシャルは彼女に思いっきり寄りかかっているんですよね。それが人間らしくて可愛いんです。それを演じる神葉くん自身も、持ち前の弟っぽさとか人懐っこさがにじみ出ていて、すごくリンクしてるなって思いました」

土屋「ありがとうございます! サムは本当にスイッチが入った瞬間のかっこよさが魅力的で、花澤さんのお芝居はその切り替えがすごく自然なんですよ。普段は繊細で内向的なんだけど、決意した瞬間に声のトーンがガラッと変わる。その説得力がすごいんです。僕なんかは花澤さんの存在を声優になる前から知っていたので、一緒に現場に立っていること自体が夢みたいで。お芝居を間近で観て『こういうときにこう声を当てるんだ』って、一つひとつ記憶しようとしています」

花澤「いやいや、そんな(笑)。でも現場でそういうふうに思ってもらえるのは嬉しいですね」

――サムの恋のお相手であり、マーシャルにとってはライバル的な存在にもなる中村悠一さんや杉田智和さんがキャストだと聞いたときは、どのように感じられましたか?

土屋「あれ自分、場違いかな?って思いましたね(笑)。本当に強者に囲まれた感じがあって。むしろ"迷える子羊"は僕なんじゃないかっていうくらいでした。でも、コロナ禍の時期って、実は同じ作品に出演していても現場で直接お会いできないことが多かったんです。だから今回こうしてご一緒できるのは本当に大きなチャンスで。僕としては、このタイミングでできる限りみなさんの立ち振る舞いやお芝居を吸収して、コロナによるブランクを少しでも取り戻したい、という気持ちで眈々と現場を見ています」

花澤「キャストがこれだけ揃うと、掛け合いの中で本当に頼りになるんです。杉田さんや中村さんに恋愛要素で絡んでいく、というポジションに私のキャラクターがいるのは、これまであまりなかったので新鮮でしたね。私だったらどっちを選ぶかななんて思いながら楽しんで演じています。でも、下馬評では『やっぱりリンクが一番いいんじゃない?』って声が多いですね(笑)。まっすぐ好意を伝えてくれるし、積極的に話しかけてくれるので気持ちが伝わりやすいですし。チャールズはちょっとミステリアスすぎて『この人、何を考えてるんだろう?』って思うし、計算して仕掛けてくるから油断できないタイプなんですよね」

土屋「そうですね。チャールズとリンクって、声の魅力も含めて僕とはもうジャンルが違うんですよ。だからなるべく忘れるようにしています(笑)。この人たちと物語の中で恋愛バトルを繰り広げるのかもしれない、なんてことは考えないようにしてますね。考えちゃうと、マーシャルにもうちょっと頑張らせようみたいな下心が出てしまう気がして。それをした瞬間、この現場ではすぐバレるんです。特に僕は、みなさん無意識にやっているようなお芝居でも、『今こういうつもりだったでしょ?』ってかなりの確率で当てられてしまいます」

TVアニメ『Let's Play クエストだらけのマイライフ』花澤香菜、土屋神葉
TVアニメ『Let's Play クエストだらけのマイライフ』花澤香菜、土屋神葉

――実際にサムの立場だったらどのキャラクターを選びますか?

花澤「私はリンクですね。現実的に考えたら一番安定してる気がします。ロン毛も素敵だし(笑)。チャールズはちょっと謎が多すぎて緊張しちゃうし、マーシャルはすぐお金で解決しそうだから(笑)」

土屋「僕もリンクだと思います。逆になってみたいキャラで言うとチャールズかな。自分にはない頭脳派タイプで、クレバーに物事を進められるのは憧れますね」

――本作は「ゲーム」がテーマの作品ですが、お二人は普段からよくプレイされますか?

花澤「まったくやらないんです(笑)。マリオカートでも逆走しちゃうタイプで、ゲームセンスがゼロなんです。でも代わりに、ラジオが大好きでのめり込んでるんですよ。イベントにも応募したり、リスナーとしても楽しんでいて、それがもうゲーム感覚に近い。攻略してるみたいに楽しんでます」

土屋「僕も実はゲームはあんまりで......。昔『ボンバーマン』を生配信でやったとき、開始1秒で自爆しました(笑)。でも高校時代にアクションを本気でやっていて、あれはゲームをクリアしていく感覚に近かったです。練習すればするほどできる技が増えていく。『昨日までできなかったことが今日できた!』ってレベルアップ感覚で、夢中になっていました」

――最後に、作品を楽しみにしているみなさんへメッセージをお願いします

花澤「サムはとても慎重で奥手なキャラクターですけど、その中に秘めている強さが回を追うごとに見えてきます。少しずつ成長していく姿を一緒に見守っていただけたら嬉しいです」

土屋「マーシャルは華やかな存在に見えますが、実は弱さや不安も抱えています。彼がどうやって人との関係を築いていくのか、ぜひ注目してください。そして、この作品全体が人間関係や文化の違いを鮮やかに描いているので、そこも楽しんでもらえたらと思います」

『Let's Play クエストだらけのマイライフ』メインビジュアル
『Let's Play クエストだらけのマイライフ』メインビジュアル

取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI

放送情報

『Let’s Play クエストだらけのマイライフ』

10月1日(水)よりフジテレビ「+Ultra」ほかにて毎週水曜24:45〜放送