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松たか子の自然な演技と、広瀬すず&神木隆之介のピュアさに心奪われる!岩井俊二監督が「手紙がつなぐ愛」を描く映画「ラストレター」

2025.9.30(火)

第19回日本アカデミー賞優秀作品賞受賞作「Love Letter」(1995年公開)を手掛けた岩井俊二監督が、"手紙がつなぐ愛"をモチーフに作り上げた映画「ラストレター」(2020年公開)。心に染みる温かな物語を始め、豪華俳優陣の起用にも注目が集まった作品だった。

主演は松たか子で、夫と子ども2人と暮らす普通の主婦・岸辺野裕里を演じる。亡くなった姉・遠野未咲の葬儀に出るため実家に戻っていた裕里は、未咲の娘・鮎美(広瀬すず)から、未咲宛に届いていた同窓会の案内を受け取る。姉のことを伝えるため同窓会に出た裕里は、乙坂鏡史郎(福山雅治)と出会い、それをきっかけに手紙を通して、それぞれの物語が幕を開ける。

松たか子演じる主人子と、福山雅治演じる乙坂鏡史郎との再会から物語は動き出す
松たか子演じる主人子と、福山雅治演じる乙坂鏡史郎との再会から物語は動き出す

(C)2020「ラストレター」製作委員会

本作にはほかにも、豊川悦司、神木隆之介、中山美穂、森七菜が出演。それぞれの人物をしっかり演じたのはもちろん、広瀬や森は現在と回想シーンで2役を演じるなど、見どころも多い。ここでは松と広瀬、過去の乙坂を演じた神木の3人に注目してみたい。

■手紙でつながる世界に引き込む、松たか子の演技が秀逸!

松が演じる裕里は、明るくてしっかりしていて、表情豊かな女性。冒頭の葬儀のシーンでは、姉を思い出しているようなまなざしで手を合わせ、悲しみに沈む鮎美の横に座った時は、励ますような瞳で肩に手を置く。

同窓会で未咲と間違われた時には、未咲の妹だと言い出せずに戸惑ったあげく未咲として会に出席したり、帰りのバス停で乙坂の姿を見つけて驚きのあまり飛び退ったり。その時々の裕里の心情が無理のない、自然な演技で表現されており、親しみを感じる。

そうして裕里に親近感を覚えた頃に、物語が動き出す。乙坂から届いたメッセージを見て夫が怒り出し、スマホを湯船に放り込んでしまうのだ。スマホが使えなくなった裕里は、未咲のふりをして乙坂に"手紙"を送ることにする。裕里が現住所を書かずに送ったため、乙坂は裕里の実家宛てに返信。それを受け取った鮎美と、実家に残った裕里の娘・颯香(森)が、さらに乙坂に返信する。メールではなく、"手紙"によって繋がりが広がっていくのだ。

物語が進むと裕里は、手紙でのやりとりを楽しむように。裕里に親しみを覚えた視聴者はきっとその気持ちに共感するだろうし、同時に手紙が想いをつなぐ本作の世界へと引き込まれていく。言ってみれば裕里は、本作における"手紙がつなぐ愛"の世界を作り、いざなう役割であり、自然な演技でそれを成し遂げる松の力量には感服するばかりだ。

■甘酸っぱい高校時代の未咲と乙坂を、ピュアに演じた広瀬すずと神木隆之介

(C)2020「ラストレター」製作委員会

広瀬が演じる鮎美は、最初は母を失った悲しみを抱えている。葬儀の場では、乱れた髪の奥で涙をこぼし、裕里との会話で見せる笑顔も弱々しい。しかし時が経つと、少しずつ明るさを取り戻していく。

夫が飼い始めた犬を裕里が連れてきた時には気取らない様子で喜び、乙坂からの手紙を読んで返事を書こうと颯香を誘う時は、笑顔を見せる。そんな鮎美の変化を自然体で表現する広瀬の演技には好感が持てるし、ピュアなイメージを持つ広瀬が演じているため、鮎美の少女らしい姿が強く印象に残る。

また、広瀬は高校時代の回想シーンでの未咲役も演じていて、広瀬が持つ魅力によって、過去の未咲も純で愛らしい少女としてスクリーンに映る。

そして高校時代の乙坂を演じたのが、神木だ。高校3年生の時に転校してきた乙坂は、友人に誘われて生物部に入り、同じく部員だった裕里と知り合う。その後、未咲に想いを寄せるようになった乙坂は、何度も未咲への手紙を裕里に託していたのだ。

裕里といる時に現れた未咲に心奪われたように魅入る瞳、図書館で未咲を見かけた時に隠れてしまったりするシーンなどからは、高校時代の乙坂の純情さが見て取れる。神木が演じる乙坂からもまた、ピュアで、未熟な空気が濃く感じられる。

未咲がこの世を去った現在と、手紙のやり取りを通じて蘇る高校時代の思い出が融合しながら、物語は進んでいく。そんな中で、今、それぞれの胸にある想いが強く光り輝く。松や広瀬、そして神木らが紡ぎ出したこの温かな物語は、ゆっくりと、じっくりと楽しんでほしい作品だ。

文=堀慎二郎

放送情報【スカパー!】

ラストレター
放送日時:2025年10月18日(土)17:50~、11月13日(木)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます