山下美月、「遊びを忘れないこと」が大切だと再認識 映画『火喰鳥を、喰う』インタビュー
2025.9.29(月)

水上恒司が主演を務める映画「火喰鳥を、喰う」が、10月3日(金)に全国ロードショーされる。
「第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞」の大賞を受賞した原浩の小説を実写化した本作。信州で暮らす久喜雄司(水上恒司)、夕里子(山下美月)のもとに、戦死した先祖・貞市(小野塚勇人)の日記が届く。そこには、壮絶な戦地での日々と、彼の異様なまでの"生への執念"が記されていた。その日を境に、夫妻の周辺で不可解な出来事が起こる。真相を探るべく超常現象専門家・北斗総一郎(Snow Man・宮舘涼太)の力を借りるが...。
今回は山下美月にインタビューを行った。本作の魅力はもちろん、デビュー10年を迎える心境を問うた。

――脚本を読んでどんな印象を持たれましたか?
「私は原作を読んでいたので理解する部分もあったのですが、原作を読まれていない方が、初めてこの作品に触れたとき、どう受け取ってくださるのかが気になりました。私自身としては、答えを求めすぎなくてもいいのかな、という思いがあります。夕里子に関しても、答えを出そうとしすぎると面白くなくなってしまうので、"YESかNOではなく、真ん中があってもいい"と思いながら演じていました」
――墓石の破損シーンから始まる冒頭から、世界観に入り込んでしまいました。本作の設定自体については、どう感じましたか?
「東京だと、墓地にお墓がたくさん立っているのが普通の光景だと思うのですが、久喜家のお墓は、広大な畑に墓石がポツンとあって不気味さを感じました。設定に関しては、複雑なようで、意外とシンプルなストーリーなんですよ。最初に"難しい話だ"という見方をすると疲れるので、理屈で考えずに感覚でご覧いただきたいです」
――本作は「執着」がキーワードのひとつになっていると感じます。「執着」については、どのような考えをお持ちですか?
「『執着』って本当に怖いものだなと思いますし、この映画を見てよりそう感じました。たとえば恋愛関係でも、最初好き同士から始まっても、だんだんこじれて、執着に変わり、よくない結末を迎えてしまう...。そういったことはニュースでもよく見ますし、周囲で起こっても不思議ではないと感じます。
社会を生きる上では、自分のまっすぐな気持ちを抑える力が必要で、それが理性として働いてくれないと、大きな事件につながってしまう...。そうした現象を『ミステリー』や『愛のかたち』として表したのが本作なのかなと思います」

――夕里子を演じるなかで意識したことはございますか?
「夕里子には秘密があって、日記が出てきた時点で怯えているし、誰かにすがりたいし、誰かに秘密を話したい気持ちがある。だけど、それを明かすことはできない...。雄司や家族とは、また別のところで戦っているのかなと思います。演じるときにその部分を出しすぎてしまうと色気がなくなってしまうので、監督と話しながら調整しました」
――雄司と夕里子の関係性についてはどう感じましたか?
「亭主関白っぽい感じがしますよね(笑)。ひとつの夫婦のかたちとして成立しているので、素晴らしいとは思うのですが、夕里子はどこにでも染まれるタイプだからこそ、適応できているのかなとも思います。ふたりの夫婦像は素敵だな、とは思いつつ、家庭に入るのってそれなりの覚悟が必要なんだな、とも思いました」
――水上さん、宮舘さんとの共演シーンも多かったと思います。おふたりとのエピソードを教えてください
「宮舘さんが演じる総一郎が登場してからは、私の台詞が少なくなったなって(笑)。私は説明台詞がほとんどなく、基本は受け台詞だったのですが、宮舘さんはお忙しいなか、多くの台詞があって大変だったと思います。撮影中、まったく間違えなかったので、さすがだなと思いました。
水上さんとは、今回初めてご一緒させていただいたのですが、ご自身のiPadにたくさん書き込みをされていたのが印象的でした。私は本読みまでは、あえて感想だけを持っていき、監督から何か言われるまでは、自分の中で"これはこうだ"と決めずにいくのですが、水上さんは違ったアプローチをされていて興味深かったです」

――本編で「日々の暮らしをささやかに続けること」について夕里子が語る台詞がありました。そうした考えに山下さん自身が重なる部分はございましたか?
「仕事をしていると、どうしてもエンタメ過多になってしまうというか。最近だと自分が声優をさせていただいたアニメの映像が電車で流れていたり、本屋さんに行ったら自分が表紙になっている雑誌が置いてあったり、日常のなかに、自分がエンタメの一部として溶け込んでいることに、理解が追いついてないんです。
私は多くの人のことを知らないのに、自分のことは知られているって、すごく不思議で非現実的。私にとっての現実は、毎日家に帰って、お風呂に入って、ごはんを食べること。だけど、タレントとして世の中に出て...というものが非現実としてある。『自分にとってどちらが幸せなのだろう』と考えたときに、答えを出せないなって思うんです。もちろん、仕事を頑張って名誉をいただいたりすることも幸せですが、『誰も知らない場所で生きてみたい』みたいな憧れもあって...。
それって、夕里子とすごく似ているなと思うんですよね。彼女にも別の暮らしの選択肢があったからこそ、そうした台詞が出てきたのかなと感じました」
――お仕事をするうえで、一番大切にしていることはどんなことでしょうか?
「つい最近まで忘れていたと反省しているのですが、『遊びを忘れないこと』ですね。たとえばラブコメをやったときに、"いいものを見た"と思っていただくために仕事をしているのに、自分の仕事の目的が"ちゃんと台詞を入れて現場に行かなきゃ"とか"監督の望むものを表現しなきゃ"とか、別のところにいっちゃっていた気がするんです。忙しくて自分の気持ちを後回しにしていたからこそ、"面白いものを作りたい"という気持ちが薄れちゃっていたな、とすごく反省しました。
それからは、ひとりで海外にたくさん行って、自分のことを知らない人たちに触れて、改めて"自分は日本で人を笑顔にさせたい"という気持ちが湧きました。常に仕事のなかで遊びを取り入れるって大切だなと思いましたし、いまも大事にしています」
――来年デビュー10年を迎えますが、この10年間は山下さんにとってどのような期間でしたか?
「本当にあっという間でしたし、"駆け抜けてきた"という気持ちもあるのですが、芸能活動をしてからは、学校やプライベートの友達を軸として生きてこなかったのもあって、いまは『自分の人生をどうしたいのか』を改めて考えています。
仕事の将来像や、"こういう人になりたい"は10年かけて固まってきましたが、『自分の未来像』はあまり考えてこなかった。正直、考えること自体が悪いことだと思っていたので、これからたくさんの経験や出会いを通じて、そうしたことを明確にしていけたらいいなと思っています」

取材・文=浜瀬将樹 撮影=MISUMI
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