黒木華と中村蒼が織りなす繊細で優しい演技が心に響く・・・映画「アイミタガイ」
2025.7.31(木)
黒木華が主演、大切な親友の死を受け止められず、彼女にむけてメッセージを送り続ける主人公を演じたのが「アイミタガイ」だ。中條ていの連作短編集をもとに脚本の骨組みを作ったのが「台風家族」の市井昌秀。「半落ち」、「ツレがうつになりまして。」などを手掛けた故・佐々部清監督が温めていた企画のバトンを受け継ぐ形で草野翔吾が監督を務めた。
そんな人と人との繋がりによって生まれた作品のテーマは"アイミタガイ=相身互い"。人がお互いに助け合うことを意味する言葉だ。深い悲しみを抱えた人たちの日常を押しつけがましさがない優しさで描き、多くの人たちを涙させた本作で黒木が演じているのはウェディングプランナーとして働く秋村梓。梓の親友で心の支えだった郷田叶海を藤間爽子が演じ、梓が結婚に踏み切れないでいる恋人、小山澄人を中村蒼が演じている。
キャスティングするに当たって監督はヒロイン役に念願だった黒木を起用。佐々部監督の映画「東京難民」に主演していたこともあり、不器用な彼氏の役は中村のイメージにピッタリだとオファーしたという。安藤玉恵、西田尚美、田口トモロヲ、風吹ジュン、草笛光子などキャストも実力派揃い。喪失感を抱えて生きる梓を豊か且つデリケートに表現した黒木と、励ましたいと思いながらやることなすこと間が悪くなってしまう恋人役がハマりの中村に焦点を当ててみたい。
■結婚願望のない梓と恋人を支えるために結婚したい澄人
(C)2024 映画「アイミタガイ」製作委員会
梓にとって、何かあった時に真っ先に報告・相談したい親友が叶海だった。ウェディングプランナーとカメラマンと進む道は違っても梓がネガティブな思考に陥った時には笑って背中を押してくれた存在。2人がどんな風に友情を育んできたかは、作中に挟まれる中学時代の回想シーンで徐々に明らかになっていく。梓に「頼りない」と言われている澄人は、親友を失って、立ち止まったままでいる恋人を不器用なりに支えたいと奮闘する。が、結婚指輪の下見をするために意を決して宝飾店に入ったものの、店内は撮影中で貸し切りというバッドタイミング。出直すか、どこかで時間を潰しそうなものだが、実直を絵に描いたような澄人は店の前に立って取材が終わるのを待つ。
見るからにお人好しで無防備で要領が悪い青年を中村は表情はもちろん、歩き方を含めて微に入り細に入り表現している。澄人が懸命に話しかけても上の空で「大丈夫だから」と寂しそうに微笑むシーンでは黒木の繊細な芝居が光る。
■周囲の景色が少しずつ動いていく中、心と心が繋がっていく
(C)2024 映画「アイミタガイ」製作委員会
笑顔を失ったのは梓だけではなく、叶海の両親も同じ。そんな中、梓は仕事を通じて、ある悲しい事情からずっとピアノを弾くことを封印していた90代の女性、小倉こみち(草笛)と運命的な出会いを果たす。そして、久しぶりに再会した祖母、綾子(風吹)の家ではハプニングに遭遇し、強引についてきた澄人が期せずして大活躍。頼りないイメージを挽回し、二人は"アイミタガイ"という言葉を綾子から初めて耳にする。
綾子の言葉が予言であるかのように、人の想いが巡っていく小さな奇跡が連なっていく人生の物語。親近感のあるカップルを演じた黒木と中村のナチュラルで細やかな演技が心に響き、やがて染み渡っていく。
文=山本弘子
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