綾瀬はるか、堀北真希が演じた「白夜行」とは違う？主演のソン・イェジンが体当たりの演技を見せたR18+の韓国版「白夜行 ～白い闇の中を歩く～」

2025.7.15(火)

稀代のヒットメーカー・東野圭吾による小説を原作とする映画「ブラック・ショーマン」が9月12日(金)に公開を控えている。今作で主演を務める福山雅治との「ガリレオ」シリーズも広く知られるが、東野の作品はこれまでにもたびたびドラマ・映画化されてきた。

小説としての抜群の面白さはもちろん、映像化との親和性も高く、数多くの東野圭吾作品の中で高い人気を誇る名作ミステリーと言えば、1999年に刊行された長編小説「白夜行」が挙げられるだろう。

ある殺人事件の被害者の息子と容疑者の娘。別々の道を歩んでいるように見えた彼らの周囲には、恐るべき犯罪の形跡が見え隠れする。深い因縁で結ばれた男女の数奇な運命を描くミステリー小説だ。2006年に山田孝之と綾瀬はるかのW主演でドラマ化され、今も色褪せない名作ドラマの一つに。さらに2011年には堀北真希主演で映画化された「白夜行」(8月20日(水)にフジテレビTWOにて放送)も大きな話題を集めた。

原作の素晴らしさは日本国外にも波及し、韓国でも映画化されている。その韓国リメイク版が7月24日(木)にフジテレビTWOで放送される「白夜行 ～白い闇の中を歩く～」(2009年)だ。

劇場公開時にR18+となった韓国版は、大胆なベッドシーンと残酷な殺人描写が交互に映し出される、衝撃的な冒頭から始まる。男が惨殺された事件を機に、14年前に起きた殺人事件との関連が疑われ、当時の担当刑事ハン・ドンスに協力要請がかかる。

かつての事件は決定的な証拠は掴めないまま容疑者死亡により一応の解決をみたが、彼だけは腑に落ちていなかった。容疑者の娘である美しい少女イ・ジア、被害者の息子で暗い目をした少年キム・ヨハンが気になっていたからだ。やがて成長した2人の周辺で不可解な事件が立て続けに起こり、意外な関係が明らかになっていく。

時間的な制約のある映画にまとめるべく大胆にカットされている部分はありながら、小説の世界観は損なわず忠実に映像化されている。原作者の東野圭吾お墨付きのハイレベルな仕上がりは、さすが韓国映画クオリティと言ったところだ。

そんな本作の最大の見どころは、容疑者の娘ジアを演じたソン・イェジンだろう。本作より以前には、感動の純愛物語「私の頭の中の消しゴム」(2004年)やペ・ヨンジュンと共演したラブストーリー「四月の雪」(2005年)など、日本でも大ヒットした映画のヒロインを好演。清純派の韓流スター女優として広く知られていたが、そのイメージを覆す体当たりの演技で堂々たる悪女ぶりを披露している。

子どもとは思えない妖艶な魅力を放っていたジアは、 14年の時を経て美しい女性に成長。ユ・ミホと名前を変えて、財閥の会長の再婚相手となっていた。眩い輝きと妖艶な色香を放つ背中には、暗く重たい過去を背負う。女神のような微笑みを絶やさぬ美しい彼女に、ドンスやヨハンをはじめ養母や会長の命を受けた調査員ら周囲の人間たちは、魅了され翻弄されていく。

清らかな涙も端正な顔も体さえも武器にする。ふとした瞬間に暗い陰を落とす瞳、冷ややかな視線まで美しい。ヨハンだけに見せる、人間らしいジアの表情にも惹きつけられた。

一筋の光を頼りに闇の中を歩く悪女を熱演したイェジン。彼女を取り巻く男たちを演じた俳優にも、韓国を代表する豪華キャストが名を連ねた。己の手を血に染めながら一途にジアを思い続ける青年ヨハンを好演したコ・ス、彼らを追い続けるベテラン刑事ドンスを人情味たっぷりに演じたハン・ソッキュもベストな配役で、イェジンに負けず劣らずの存在感を見せた。クライマックスでの3人の演技合戦は圧巻だ。

文＝中川菜都美

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