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佐倉綾音、声優活動は「誰かの心を動かすことが目標」アニメ「TO BE HERO X」インタビュー

2025.7.4(金)

中国を拠点に若者から絶大な人気を誇る「bilibili」と、これまで数多くの名作を世に送り出してきた「アニプレックス」による完全オリジナルアニメーション「TO BE HERO X」がフジテレビほかで放送・Netflix、Prime Videoほかにて最速配信中だ。

ここは「信頼値」によってヒーローのランキングが入れ替わる世界。人々の信頼を得れば得るほどヒーローは力を蓄え、信頼を失えば、その能力も失われる。主人公は10名のトップヒーローたちだ。

今回は、多彩なギミックを搭載したバトルスーツを纏うメカニック・ロリ役の声を担当する佐倉綾音にインタビューを行った。

佐倉綾音が声を担当したメカニック・ロリ
佐倉綾音が声を担当したメカニック・ロリ

――中国発の作品ですが、日本作品との違いを感じるところはありましたか?

「キャラクターの名前が日本馴染みじゃない響きが多かったり、キャラクターが持っている感性も"日本で過ごしている人の感性とは少し違うかもな"と感じる部分がありました。私はほとんど旅行に行かないので、そういった国ならではの自由な多様性を感じられ、作品の中で旅行ができている感じがして楽しかったです」

――感性の違いはどんなところで感じられたのでしょうか?

「日本人だったら内に秘めてしまうようなものを、"そこで口に出すんだ"、"そこで行動に起こすんだ"と、発散方法が表に向いていたように感じます。考え方の個性が出ていて面白かったです」

TVアニメ「TO BE HERO X」にてメカニック・ロリ役の佐倉綾音
TVアニメ「TO BE HERO X」にてメカニック・ロリ役の佐倉綾音

――ロリは、周りからの見られ方に苦しんだり、もがいたりする姿が印象的なキャラクターです。彼女の葛藤も含め、どのように役と向き合って演じられたのでしょうか?

「最初、『このご時世で、この名前をつける意味ってなんだろう』と考えたのですが、彼女を紐解いていくと、ロリが持っている理念にとても共感できました。生まれ持った可愛らしい容姿やピンクが好きといった想いは絶対誰にも否定されるべきじゃないですし、誰もが持っている権利だと思うんです。でも、やっぱり、否定しようとしたり、偏見やレッテルを貼り付けてくる人がいたり、消費してこようとする人が出てくる。そういうものに対して、ありのままの自分で、『否定される権利はない』としっかり主張できるロリはカッコいいなと思いました。いろんなところで戦う人たちに見ていただきたいなと思いましたし、"戦いの中でずっとモヤモヤしている説明できないものを抱えている人たち"の想いも、ロリが言語化してくれるんじゃないかな、と思っています」

――演じる際に意識したことがありましたら教えてください

「昔から考えていることなのですが、体格がある程度声にも影響してくるのかなと思っていて。背の低い人は高い声の人が多い、喉元が太い人は、響きのいい低めの声になるとか...。役づくりのとき、そうした物理的な"身体的特徴"から役の声を想像することがあるのですが、ロリの場合は、"勇ましくいたい"という気持ちはありつつも、彼女の持って生まれた可愛らしい容姿と体格に合う声を出せたらな、と思っていました。今回、原音の方も鈴の鳴るような綺麗な声で演じられていたので、"この解釈でいこう"と、ロリの雰囲気づくりをしていきました。ただ、ロリは非常に活発で、男の子の中に混ざっても決して負けることのない気迫を持っているキャラクター。ヒーローになってからの戦闘は、その華奢な体格をメカニックで補強して媒介するので、しっかりパワーがありつつも身軽に、そして迫力を失わないようにしたいな、と気合いを入れて演じました」

――本作のキーワードである「信頼値」が重要になる世界観について、どんなことを感じられましたか?

「とても今どきで、ある意味、現実に迫ってきている設定だなとも感じました。いまはSNSだと『フォロワー=数値』というかたちでいろんな人の信頼値が見える世界ではあるのですが、フォロワーすべてが肯定的なお客さんではない。ある意味、監視されている観点で言うと非常に現実に近いし、それがこの世界観だとパワーとして可視化されるので、なおさらシビアだと思うんです。命に関わってくるものでもあるので、これを良しとしている国というのも、非常に難儀な存在だなとも感じますね」

――佐倉さんご自身は、信頼を得るためにされていることはあるのでしょうか?

「ありますね。仕事はそれが9割だなと思っています。社会に出るまでは『10割実力』だと思っていた節があったのですが、社会に出てみたら全然そんなことはなくて。"なんでこの人は仕事が途切れないんだろう"と外側から見ていると分からないことも、内側に入ってみると、信頼の積み重ねや、納得感・説得力を持っている人が結構な割合で存在しているな、というのを感じました。仕事は、人間関係と切り離せない部分が大半。自分の力を発揮する場面、求められているものを出力していく場面に関しては、『信頼』や『人間関係』に足を引っ張られないようにする、というのはひとつ大切にしているところです」

――佐倉さんが「心から信頼できる人」ってどんな人なのでしょうか?

「『心から私を信頼してくれようとする人』でしょうか。感情は等価交換だと思っていて、私はズルいし、人間不信気味なので、自分から先手をとって自己開示することがとても苦手なんです。なので、どちらかと言うと、相手側が"どれぐらい自己開示をしてくれるのかな?"と様子を見ながら自分の自己開示のペースを決めていて。そしてやはり同じような感覚の人の方が気が合うことが多いのですが、そういう人とジリジリと、"どれぐらい見せてくれますか?"みたいなやりとりをする期間も好きだったりしますし、そういう人の方が後々強い信頼関係で結ばれることが多い気がしています。あと、シンプルに血の繋がりは大事にしていますね。理屈では説明できない家族との絆のことをかなり信頼しているので、家族には無条件で自分のことをすべて話しています」

――佐倉さん自身が声優として活動されているなかで「誰かにとってのヒーローになれたな」と感じた瞬間はございますか?

「分かりやすいところで言うと、誰かにお会いしたときに伝えてもらえる『ポジティブな言葉』を聞いたときですね。私たちは普段マイクの前で芝居をするので、見据えている方向はキャラが見ている景色。その先にいるお客さんを意識してお芝居をすることはないんです。なのでその手応えを目指して活動しているわけではないのですが、そうやって役と必死に向き合った結果、それを受け取った誰かを救うことになる...それこそがエンタメの最終目標かなと思っていて。個人的には、自己満足だけじゃなく、誰かに届いて心を動かすことが目標なので、そこを達成出来たうえで、誰かが『救われている』と思ってくれるのならとてもありがたいなと思います」

取材・文=浜瀬将樹 写真=MISUMI

放送情報

TVアニメ『TO BE HERO X』
放送:フジテレビほか、毎週日曜朝9:30〜
配信:Netflix、Prime Videoほかにて毎週月曜12:00〜最速配信中
声の出演者:宮野真守、花澤香菜、内山昂輝、中村悠一、松岡禎丞、佐倉綾音、水瀬いのり、山寺宏一、島﨑信長、花江夏樹ほか