90年代を象徴するスター女優・牧瀬里穂、その圧倒的なヒロイン力が眩しい映画「つぐみ」と、35年後を辿る貴重なドキュメント

2025.7.2(水)

50代となった今も変わらない"大人可愛い"魅力を放ち、浜辺美波扮するヒロインの母親役を演じた連続テレビ小説「らんまん」(2023年)では、登場するや、SNSでトレンド入りを果たすなど、瑞々しい存在感を放っている牧瀬里穂。そんな彼女が、デビュー間もない新人時代に主演を務め、日本アカデミー賞の新人俳優賞など各映画賞の新人賞を総なめにした作品といえば、1990年公開の映画「つぐみ」だ。

■名匠・市川準がメガホンをとった青春ストーリー「つぐみ」の瑞々しい世界観

1989年にオンエアされたJR東海のテレビCM"クリスマス・エクスプレス"で脚光を浴びた牧瀬が、スター女優としての人気を決定づけた本作は、吉本ばななのベストセラー小説「TUGUMI(つぐみ)」が原作である。CMディレクターとしても多くの名作を残し、今年で生誕77年となる市川準監督がメガホンをとった青春ストーリーだ。

牧瀬が演じるのは、生まれつき病弱で、ワガママ放題に育てられた18歳の少女・つぐみ。姉の陽子(白島靖代)、従姉妹のまりあ(中嶋朋子)と共に西伊豆の海辺の小さな町でひと夏を過ごすことになり、久しぶりの楽しい時間を満喫する3人の前に、美術館に勤務する青年・恭一(真田広之)が現れる...。

映画公開から35周年を迎える今年、ロケ地となった静岡県・松崎町を35年ぶりに訪ねる特番「牧瀬里穂 あの時の記憶をたどって『つぐみ』－静岡県 賀茂郡 松崎町－」が制作された。牧瀬が当時、撮影で約1ヶ月間過ごしたという懐かしい土地をのんびりと巡りながら、当時の思い出や心境、貴重なエピソードを明かしていく構成だ。

■映画公開から35年...様変わりしたロケ地の景観。牧瀬が安堵の表情を浮かべた「変わらないもの」

伊豆半島の南西部にある静かな港町、松崎町。35年前の記憶を呼び起こした彼女がまず驚くのは、様変わりした風景だ。映画のメインロケ地であった梶寅旅館は取り壊されており、かつてフェリーが発着して賑わった埠頭もひっそりとしている。映画の象徴的なロケ地の変化に寂しさを隠せない牧瀬だが、その後、潮の香りが広がる海を見つめて「ここは変わらないですね」と安堵の表情を浮かべる。

他にも、伊豆の長八美術館、浜丁橋など、今も変わらず映画の名シーンの記憶が息づくスポットを探訪。平成初期にタイムスリップしたような情緒を漂わせる景観、牧瀬が「穏やかな人柄の松崎町の方々」と絶賛する地元の人々との心温まる交流も見どころだ。

■今と昔が交錯するドキュメント...牧瀬里穂と真田広之が繰り広げる、美しい恋模様も必見

特番内では映画の色褪せないシーンの数々も挟み込まれ、当時10代の牧瀬のフレッシュな姿も確認できる。超のつく美少女ぶりはもちろん、その透明感も見る者を惹きつけ、いつも"死の恐怖"と背中合わせの日常を送っている、どこか危うさを秘めた少女のキャラクターと見事にハマっている。小悪魔的で、強い眼差しも印象的。他のキャストは考えられないほど圧倒的なヒロイン力を放つ"つぐみ"がとにかく魅力的だ。

運命のように惹かれ合う恭一との瑞々しく繊細な恋模様も本作の重要な要素で、真田広之と繰り広げる、息を呑むほど美しい2人のシーンは今見ても大きく心揺さぶられる。

35年という長い月日による町の変化や"変わらない"魅力を、映画「つぐみ」を通して牧瀬が再発見するこの特別企画。その中で映し出される、年齢を重ねてもなお輝き続ける彼女の魅力も、きっと多くの人に届くはずだ。

文＝川倉由起子

• 松嶋菜々子と真田広之のW主演でジャパニーズホラー金字塔となった作品「リング」
• 歴代の名優たちにもひけをとらない真田広之演じる「坂本龍馬」が絶品！
• 田村正和が真田広之演じるメディアプランナーや、福山雅治によるメガネ＆白衣着用の化学者とスリリングな頭脳戦を繰り広げた「古畑任三郎」第３シリーズ