阿部寛の力量に感服!眼差しやセリフの抑揚で視聴者を引き込んだ東野圭吾原作のドラマ「新参者」
2025.6.24(火)

東野圭吾のベストセラーを原作として、2010年に実写ドラマ化されたヒューマンミステリー「新参者」。異動で日本橋署に赴任した刑事・加賀恭一郎が、人形町で起こった殺人事件の解決に挑むというストーリーだ。
アクション重視だったり、決定的な証拠を見つけることに主眼を置いたりする刑事ドラマとは一線を画し、関係者の心に寄り添い、時に踏み込んで、その奥にある想いや隠された"嘘"を見つけ出して謎を解きほぐしていくところに本作の魅力がある。真実が明らかになった時についホロリとしてしまうエピソードが多数盛り込まれていて、放送当時「泣けた」という感想も数多く見られた。

原作/東野圭吾「新参者」(講談社刊) (C)TBS
そんな心に染みるドラマの主人公・加賀恭一郎を演じたのは、阿部寛。加賀は鋭い観察眼と洞察力を持ち、何気ない会話の中で相手が隠していることや、嘘を見抜いてしまう。ここでは独特の捜査と推理で謎を解いていく加賀を、阿部がどのように演じたのか、見ていくことにしよう。
■圧を帯びたり、哀れみが漂ったり...眼差しの変化で心の動きを伝える阿部寛の秀逸な演技

原作/東野圭吾「新参者」(講談社刊) (C)TBS
第1話の冒頭から、阿部はその演技で加賀という刑事の特徴を強く印象付けてくれる。加賀がたい焼き屋で並んでいると、近くで軽バンが事故を起こした。居眠り運転をしていたお婆さんは一命を取り留め、加賀はお婆さんの家族が営む人形店で息子夫婦から話を聞くことになるのだが、なぜかお婆さんが猫に与えていたキャットフードが気になるようだ。
「ちなみに...」と言って、お婆さんが猫に与える時につまみ食いしていたことを話す場面では、奥さんを見てかすかな笑顔を浮かべつつも、相手の心を探るような圧のある瞳になる。そして仕掛けられたトリックを明らかにし、取り乱す犯人を真っすぐに見つめる時には、その目に少し、哀れむような空気が漂っている。

原作/東野圭吾「新参者」(講談社刊) (C)TBS
阿部は本作に関するインタビューで、関係者の感情の動きに対する加賀の心の反応を、「目に見える芝居にどう反映させていくか」を意識したと語った。普段は飄々(ひょうひょう)としていて何を考えているかわからない加賀だが、インタビューの言葉通り、物語と捜査におけるポイントとなるシーンでは、その眼差しやセリフが普段とは違う空気を帯びるのだ。
■"動かない刑事"加賀の心情の変化にハッとさせられたり、ワクワクする楽しさが本作の魅力

原作/東野圭吾「新参者」(講談社刊) (C)TBS
人形店の一件が解決した後、全話を通じて加賀が挑むことになる殺人事件が発生する。被害者は2カ月前に小伝馬町に引っ越してきた女性・三井峯子(原田美枝子)。マンションの自室で絞殺死体となって発見されたのだ。
名刺や人形焼、コートのボタンやキッチンばさみなど、現場に残されたものや関係者たちの謎を各話で解き明かしていく構成で、第1話では名刺、第2話では人形焼といった具合に、それぞれに関わった人々のエピソードが展開する。阿部が演じる加賀も、その中でさまざまな表情を見せる。
第1話、事件直後の現場で保険会社営業マンの名刺を見つけた時には口元が震えるほどで、加賀の心が強く揺れているのがわかる。第1話のラスト、パリに美容師研修に行く孫娘を祖母が励ますシーンでは、胸に熱いものが込み上げてきているような表情も見せる。

原作/東野圭吾「新参者」(講談社刊) (C)TBS
第3話で、同じ刑事の上杉博史(泉谷しげる)に「親の死に目に会わない息子」と言われた時の、心に何か刺さったような眼差し。第4話で「あなたやっぱり嘘をついています」という時の、突き通すような力のある瞳と声。そして、最終話で犯人に推理を突きつける時の圧のある空気。
阿部は加賀という人物を、"動かない刑事"とも語っている。確かに、このドラマに派手な捕物や立ち回りはないが、眼差しやセリフの抑揚といった静かな演技によって、多くのシーンを印象的なものにしてしまう阿部の力量はさすがと言うほかない。
同時に、加賀の眼差しの変化を見て何に気づいたのか予想したり、「ちなみに...」といって聞き出したことがどう解決につながるのか推理したり、その所作にハッとさせられたりワクワクすることも多々ある。それが本作の大きな特徴であり、主人公・加賀恭一郎の魅力と言えるだろう。
文=堀慎二郎
放送情報【スカパー!】
新参者
放送日時:2025年7月21日(月)10:55~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
-
武士役の岡田健史(現・水上恒司)&妖怪役の本郷奏多の異種バディが楽しい「大江戸もののけ物語」
提供元:HOMINIS10/18(水) -
「俳優・岡田健史」として爪痕を残した映画『死刑にいたる病』...高評価が集まる阿部サダヲとの息詰まる心理戦
提供元:HOMINIS9/16(金) -
朝ドラ「ブギウギ」出演の水上恒司が趣里の印象を語る「背筋を伸ばさないといけないなと思わされます」
提供元:HOMINIS12/2(土) -
映画「あの花」W主演の福原遥と水上恒司がお互いの印象を語る「安心感に支えられました」
提供元:HOMINIS12/8(金) -
品川ヒロシ監督渾身のヤンキー映画「OUT」!倉悠貴、醍醐虎汰朗、水上恒司ら若手俳優の圧倒的なパフォーマンスに注目!
提供元:HOMINIS6/26(水)