横浜流星が、人間の心が壊れていくさまを秀逸に表現!映画「国宝」の李相日監督が2022年に手掛けた「流浪の月」で見せた演技
2025.6.17(火)
凪良ゆうのベストセラー小説を、広瀬すずと松坂桃李のW主演で映画化したのが「流浪の月」だ。
(C)2022「流浪の月」製作委員会
病気で父親を亡くし、母親とも離れて伯母の家で暮らす10歳の少女・家内更紗(白鳥玉季)。ある雨の日の夕方、公園でびしょ濡れになっていた更紗に、19歳の大学生・佐伯文(松坂)は傘を差し出す。伯母の家に帰りたくない更紗は、文の家へとついて行くことになり、そのまま2カ月もの間、文の部屋で自由な楽しい時間を過ごしていた。しかし、2人で外出した先で、文は更紗を誘拐した罪で逮捕されてしまい、2人は離れ離れに。それから15年後、周囲から"誘拐被害に遭った少女"として扱われ、生きづらさを感じながら過ごしていた更紗(広瀬)は、偶然入った深夜営業のカフェで文と再会する...。
■人の心が壊れていくさまを表現した横浜流星の演技が圧巻
(C)2022「流浪の月」製作委員会
小学生の頃に過ごした伯母の家での経験によって、大人になってからもトラウマを抱えて生きる更紗。事件のこともあって周囲の人間から腫れ物のように扱われたり、文のことを"ひどいことをした犯人"と勝手に語られたりすることにも、息苦しさを感じている。一方で、ずっと心に傷を抱えながら生きている文。そんな2人の心情を繊細に描き出した秀作だ。
本作の監督を務めたのは、「悪人」、「怒り」などで知られる李相日。6月には最新作の映画「国宝」が公開されたばかりだが、主演の吉沢亮と共にメインキャストを務めている横浜流星は、本作にも出演している。
(C)2022「流浪の月」製作委員会
横浜が演じたのは、更紗の恋人・中瀬亮。上場企業に勤めるエリートで、更紗とは婚約中だ。更紗への愛が深く、かつての事件のことも心配しているが、それゆえに次第に支配的に、そして暴力的に変わっていってしまうという役どころだ。
本作での横浜の演技は、"感情を出す"というよりは"感情が沸々と湧き上がっている"という印象だ。文との再会を機に変わっていく更紗の行動や態度に苛立ち、更紗を自分のもとに繋ぎ止めたいがあまり行動を制限したり、衝動的に暴力に走ったりと、亮の言動は度を超えたものになっていく。そんな亮の感情の動きを横浜が細部まで丁寧に表現しており、亮の心が壊れていくさまが実にリアルに映し出されている。
更紗や文が主軸なだけに、2人を追い詰める亮は"嫌われ役"とも言える人物。それを横浜は秀逸に演じきり、これまでの横浜のパブリックイメージを覆すほどの鬼気迫る演技を見せている。また、亮の支配的で暴力的な一面だけではなく、その側面にある心の弱さもしっかりと表現されており、亮もまた更紗や文と同じように心に傷を抱えているのだということが伝わってくる。そんな心の弱さに触れると、"亮にも救いがあってほしい"と思わず願ってしまう人もいるのではないだろうか。このように亮がただの嫌われ役にとどまらず、それ以上に複雑で深みのある人物として映されているのは、横浜の演技の妙ということにほかならない。
横浜は本作で第46回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。新境地とも言える圧巻の演技を、ぜひその目で確かめてほしい。
文=HOMINIS編集部
放送情報【スカパー!】
流浪の月
放送日時:2025年6月19日(木)21:30~
チャンネル:フジテレビTWO ドラマ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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