『ゴッドマザー〜コシノアヤコの生涯〜』で大地真央が見つめたコシノアヤコの強さと優しさ「一歩踏み出せば、人生は変わる」
2025.6.16(月)

15歳から92歳までの一人の女性を演じる――それは俳優にとって、単なる"役作り"を超えた、人生そのものに寄り添う旅でもある。映画『ゴッドマザー〜コシノアヤコの生涯〜』で、大正生まれの実在の女性・コシノアヤコを演じたのは、大地真央。宝塚歌劇団出身、以降も数々の舞台・映像作品で華麗なキャリアを重ねてきた彼女が、全身全霊で挑んだ"一人の女性の一生"とは。
本作は、世界的デザイナーであるコシノヒロコ、ジュンコ、ミチコの母であり、自らも洋裁店を営みながら戦前戦中戦後、そして平成をたくましく生き抜いた女性・コシノアヤコの波瀾万丈な生涯を描く。まさに"生きること"の力強さを伝える本作について、大地が静かに、けれど情熱を込めて語ってくれた。

――出演のオファーを受けたとき、率直にどのような印象を持たれましたか?
「正直申し上げて、『私でよろしいのでしょうか?』という気持ちがまずありました。アヤコさんは、あの素晴らしい世界的デザイナー三姉妹を育てられたお母様。そのアヤコさん役を務めるなんて、少しおこがましいのでは......と。でも、アヤコさんが書かれた著書や、ヒロコさんがお母さまについて綴られた本を拝読していくうちに、とても魅力的な方だと強く惹かれていきました。明るくて、おおらかで、ユーモアがあって、太っ腹で、おてんばで、芯が通っていて面倒見が良くて。こんな素敵な女性を演じさせていただけるなら、ぜひ挑戦してみたいと、お受けすることにしました」
――120分という限られた時間の中で、15歳から92歳までを演じられています。その過程は非常に挑戦的だったのでは?
「そうですね。これまでもガブリエル・シャネルやマリー・アントワネットなど、ある人物の長い人生を舞台で演じる機会はありましたが、年齢の振り幅が大きい役を、映像で一人で表現するというのは初めての挑戦でした。映像は舞台と違ってストーリーに沿って撮っていく訳ではないので、台本には、各シーンごとに『何歳か』『どんな心情か』を丁寧に書き込んで、自分の中でその時のアヤコさんを明確にイメージして臨みました」

(C)「ゴッドマザー〜コシノアヤコの生涯〜」製作委員会
――衣装や髪型など、外見から作り込むことで気持ちが入っていく部分もありましたか?
「もちろんです。前半は着物姿が多く、15歳の頃はおさげ髪だったり。その後はおかっぱと呼ばれるボブスタイルに変わり、時代とともに女性の装いも移り変わっていきます。その一つひとつがアヤコさんの人生の"香り"をまとったもので、装いが変わると自然と気持ちも切り替わる。そうしたビジュアル面の変化は、演じる上でもとても大切でしたね。実際にアヤコさんがお召しになっていたお洋服を、サイズを合わせて着させていただいたシーンもあります。時を超えて、ご本人が纏っていらしたものに袖を通す――それだけでも、感慨深いものがありました」
――今回は関西の中でも独特な岸和田弁での演技となりました
「私は淡路島出身ですが、岸和田はまた独自のリズムとアクセントがあって、神戸とも京都とも河内とも違うんです。言葉にはその土地の"空気"が宿っていますから、今は使わないような方言も、その当時使われていた言い回しやイントネーションを調べて、細かな部分までこだわりました。最近は、ここまで全編に近い形で、方言を使って演じる機会も少ないので、貴重な経験になりました」

(C)「ゴッドマザー〜コシノアヤコの生涯〜」製作委員会
――アヤコさんの"おばちゃんらしさ"も本作の大きな魅力の一つかと思います
「関西のおばちゃんといえば、明るくて面倒見がよくて、ちょっとおせっかいだけど愛情深い。アヤコさんもまさにそういう方だったのではないでしょうか。ただ、その"明るさ"の裏には、戦中戦後の苦しい時代を乗り越えてきた強さと知恵がありました。三姉妹を育てながら、職業婦人としても自立し、一家の大黒柱を務めている。自ら道を切り開いていく姿には、女性として本当に尊敬の念を抱きます」
――特に印象に残ったアヤコさんの言葉はありますか?
「たくさんありますが、やはり『年を取るということは、奇跡を起こす資格をもらえること』というセリフでしょうか。本当に素敵な言葉だと思います。74歳でご自身のブランドを立ち上げるなんて、常識では考えにくいことかもしれません。でもアヤコさんは、何かを始めるのに遅すぎるなんてことはないと、思い立ったら、すぐ行動する方だったんですね。その姿勢に、私自身も強く励まされました」

(C)「ゴッドマザー〜コシノアヤコの生涯〜」製作委員会
――この映画は、若い世代にもきっと響くのではないでしょうか
「そう願っています。今は失敗することを恐れたり、何か始める前に"無理"だと決めつけてしまったりする人も多いように感じます。でも、アヤコさんの生き方から学べるのは、向こう岸に渡ってみなければ、わからないということ。まずは一歩踏み出してみる。その勇気が、新しい世界を開いてくれるのだと思います」
――アヤコさんの人生を演じ終えて、あらためて感じたことはありますか?
「お会いしたことのない方ですが、書籍や資料、そしてアヤコさんをよく知る方々のお話から受け取った印象は、"愛にあふれた人"でした。子育てはほったらかしだったとご本人はおっしゃっていても、心の底ではいつも子どもたちのことを想っていらしたのだと思います。そして、強いだけではなく、乙女心も忘れない。そんな女性に、私もなれたらいいなと。演じることを通して、こんな人生って本当に素敵だなと感じさせていただきました」
――最後に、映画『ゴッドマザー〜コシノアヤコの生涯〜』の見どころを教えてください
「120分という限られた時間のなかで、一人の女性の生涯を描いているので、どこがと言わずに、すべてを観ていただきたいです。テンポ感もあり、クスッと笑えるところもあり、思わず涙する場面もあり、音楽も素晴らしい。そして共演の皆さんが本当に素敵なんです。きっと観てくださる皆さんの心にも、何かしら残るメッセージがあると思います。人生に迷ったとき、立ち止まったとき、ふと背中を押してくれる。そんな映画になっていたら嬉しいです」
取材・文=川崎龍也
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