生田絵梨花が松本清張『天城越え』で見せた俳優としての覚悟「遊女ハナの運命が変わる場面は『すっぴん』で演じたかった」
2025.6.9(月)

乃木坂46卒業後、ソロの音楽活動、ミュージカルや番組MC、そして俳優とマルチに活躍する生田絵梨花が、特集ドラマ「天城越え」(NHK BS)で遊女・ハナという難役に挑んだ。
松本清張の小説『天城越え』は名作として知られ、これまで何度もドラマや映画になってきた。物語の舞台は昭和31年、小さな印刷会社を営む望月次郎(萩原聖人)は、定年間近の田島刑事(岸谷五朗)から過去の捜査資料の印刷を頼まれる。その中のある事件には、31年前に伊豆の修善寺の遊女・大塚ハナ(生田絵梨花)と14歳の少年が関わっていた。その少年にとってハナは天城峠で出会った初恋の女性だったのだ。
NHK BSでの放送を前に、生田にインタビューを実施。時代劇初主演となる本作で、彼女はどのようにハナの人生に向き合ったのか。作品への理解と俳優としての覚悟について語ってくれた。

(C)NHK
――1978年に制作されたドラマをはじめ、いろんな人が演じてきた松本清張原作『天城越え』のハナ。生田さんが遊女役ということに意外性がありますが、原作小説を読んでどう思いましたか?
「松本清張作品はこの『天城越え』も他の小説も、推理小説でありつつ、人間の美しい部分と泥臭い部分が両方描かれているというのが、とても印象的でした。これまで映像化された作品は全て見ましたが、最初は『私にこの役が務まるのかな』という不安が大きかったです。ハナが生きてきた時代や境遇を、令和に生きる自分がどこまで想像して演じることができるのだろう...と。すごくスリリングな挑戦になるだろうなと感じました」

――当時の遊女をどうやって演じようと思いましたか?
「まず、その頃の資料を読みました。例えば、母親の役など、初めて挑戦する役柄では、事実を調べてみたり経験者に話を聞いたりします。すると、自分の視界が開ける感じがして...。その過程は必要不可欠だと思うので、すごく大事にしています。でも、遊女の場合、経験した人は周りにはいないわけで、難しかったですね。記録を読んで分かるのは、当時はそうやって生きるしかない女性が多かった。その境遇を知ると胸が苦しくなりますが、ハナだけが特別に悲惨な運命というわけではなかったのだろうなとも感じました」
――ハナは修善寺の遊郭を出て天城峠を歩いているときに、下田方面から家出してきた少年・次郎に出会います。この出会いにはどんな意味があったのでしょうか?
「ハナは、過酷な時代に生まれ、苦しい選択をし続けてきた女性です。けれども、そんな人生の中で、次郎と出会った数時間だけは『ありたい自分』でいられた。次郎のようなピュアな存在と触れ合うことで、自分の中の純粋な部分が引き出される。その気持ちは私自身もとても共感できました」

(C)NHK

――作中では「恋は優し野辺の花よ」という歌を口ずさむ場面が印象的でした
「その曲は知っていましたが、歌ったのは初めて。でも、練習しすぎると『ザ・歌』になってしまう気がして、鼻歌のように自然に口ずさむようにしていました。でも、ハナにとってあの歌は、ただ好きというだけではなく、現実から少しの間逃れられるようなものだったのかもしれません。歌詞にハナという自分の名前が入っていることも大きかったでしょうね」
――着物や日本髪がとても似合っていましたが、生田さんはどちらかというと「和風顔」なんでしょうか?
「そうだと思います。メイクによってけっこう印象が変わりますね。メイクが薄いと、昭和っぽい和の雰囲気になるし、しっかりすると洋風に見えるような気がします。今回の作品では、遊郭で遊女の化粧をしている場面はありますが、他の場面ではハナの生きている状況をリアルに表現するため、あえてメイクは最小限にしました」

(C)NHK
――特にハナの運命が変わる取調室のシーンでは、かなり素の表情というか『すっぴん』に見えました
「そうですね。今まで出たドラマの中で一番薄いメイクでした。あの場面では作り込みたくなかった...。撮影中もヘアメイクの手直しを入れずに演じたい、と監督さんたちにお願いしました。『すっぴん』が見えてもいいから、ハナの心情がにじみ出るようにしたかったのです」
――ハナは警察に捕まり「お前が殺したんだろう」と取調べを受けるわけですが、松本清張原作らしく、かなり緊張感のある場面ですね
「2日にわたって撮影しましたが、本当に神経をすり減らすような場面で...。刑事から罵声を浴びせられたり、お互いに視線を強くぶつけ合ったり、芝居とはいえギリギリの精神状態でした。でも、素顔をさらして演じてよかったし、刑事たちに食らいついていくハナの気持ちとシンクロしていたからこそ、私自身も踏ん張れた気がします」


――刑事役の岸谷五朗さんとの共演はいかがでしたか?
「岸谷さんは、本番では厳しい刑事そのものでしたが、その合間では『俺がこうした方が、生田さんは反応しやすいんじゃない?』と言って寄り添ってくださって...。すごく心強かったですし、前に共演したドラマ『残念な夫。』(2015年)では岸谷さんがお父さんで、私が高校生の娘役だったので、撮影が終わったとき『10年前とはまったく別人になっていたね』と言っていただけたのがすごくうれしかったです」

(C)NHK
――ドラマのテーマは「色あせない記憶」ですが、生田さんにとっての『色あせない記憶』は?
「私は15歳のとき乃木坂46に入ったので『青春』の記憶はほとんど乃木坂の活動で過ごした日々。どれも色あせない大切な思い出です。その頃は忙しかったので曖昧になっている部分もありますが、映像がたくさんあって、例えばコンサートでもその裏側まで残してもらっているので、記憶が蘇ってきますね。それが劇中のハナや少年と違うところで、昔はそういう手段がなくて、そのぶん自分の目で見たものとか耳で聞いたもの、かいだ香りを頼りに記憶していた。そういうことが大切に描かれていると思います」
――最後にメッセージをお願いします
「『天城越え』で描かれているのは、生まれた環境によって自由を奪われる時代に生きる人たちの姿。そんな過去を知ると胸に刺さるのではと思いますし、それによって今の自分がどう生きていくかということを考えるきっかけになればうれしいです。けれど、まずは肩の力を抜いて、物語として楽しんでいただけたらうれしいですね」

撮影=大川晋児 取材・文=小田慶子
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