話題作を連発する白石和彌監督が香取慎吾とタッグを組んだ重厚な人間ドラマ「凪待ち」
2025.6.3(火)
史上3人目となる2年連続ブリ―リボン賞監督賞受賞者である白石和彌監督。2024年には「極悪女王」(Netflix)を大ヒットさせて話題を呼んだ。精力的な活動ぶりで知られ、毎年意欲作を続々と世に送り出している。
特にアウトローの世界を描く作風を得意とし、2013年には実際に起きた凶悪殺人事件を題材とした映画「凶悪」で数々の映画賞を受賞。2017年には「彼女がその名を知らない鳥たち」、2018年は「孤狼の血」によって高い評価を受けている。そんな白石監督が、2019年に香取慎吾を主演に迎えてタッグを組んだ映画が、「凪待ち」だ。香取との仕事を待望していたという白石監督が新しい「香取慎吾を描きたい」と構想。脚本は白石監督作の「火花」(Netflix)でも組み、「クライマーズ・ハイ」や「ふしぎな岬の物語」で知られるベテランの加藤正人が担当した。
■恋人を死なせてしまった男が転落していく物語
(C)2018「凪待ち」フィルムパートナーズ
本作は「喪失と再生」をテーマにした重厚な人間ドラマ。香取が演じるのは、パートナーの女性・亜弓(西田尚美)とその娘・美波(恒松祐里)と共に彼女の故郷、石巻市で再出発しようとする男・木野本郁男。ギャンブル好きで無為な毎日を送っていた郁男だったが、石巻で真面目に働こうとしていた。亜弓の父で漁師の勝美(吉澤健)は、末期がんに冒されながらも漁に出ており、近所に住む小野寺(リリー・フランキー)が世話を焼いていた。ある日郁男は、スナックで泥酔している中学教師・村上(音尾琢真)と出会う。彼は亜弓の元夫で、美波の父親だった。ある日、美波は亜弓とケンカして家を飛び出す。夜になっても帰らない美波を心配してパニックに陥り、口論となった郁男は怒りのあまり彼女を車から降ろしてしまった。その夜遅く、亜弓は無惨な遺体となって発見される。激しい悔恨の念に悩む郁男の人生は、転落の道を辿っていくのだった...。
小さな綻びが積み重なり、取り返しのつかない事態が起こってしまった郁男の転落ぶりがあまりにも痛々しく、観ていて辛くなる。何しろ郁男を演じる香取の迫真の演技がすごい。その暗い眼差しと、力のない空虚なセリフ回し。全身から漂う負のオーラは凄まじい。ヤクザが営む競輪のノミ屋に入り浸っては、むなしく大金を溶かして借金を重ねる。
(C)2018「凪待ち」フィルムパートナーズ
泥酔してケンカ騒ぎを起こす場面などを体当たりで演じている。若い頃はポジティブで元気抜群のキャラを得意としていた香取だけに、その激しいギャップに驚かされるが、考えてみれば、こんな人物こそ、白石ワールドの中核である。監督の期待に見事に応えて見せた香取がさすがと言うべきだろう。
撮影前に「香取さんのスター感を若干消しながらも、人の生きる強さや優しさを香取さんと一緒に探していきたい」と、意気込みを語っていた白石監督。「喪失」パートでの絶望を容赦なく描き出すからこそ、最後の「再生」に向かう場面が生きてくる。ただ、リアルにこだわる白石監督だけに、再生のメッセージは決して強く発せられるわけではない。だからこそ、説得力がある。香取が演じる郁男のダメっぷりも超リアルだからこそ、心に響くのだ。香取をキャスティングし、彼の隠されたポテンシャルを引き出した功績は見事というほかない。暴力やエロスを全面に出すことの多かった白石監督だが、本作ではその点は抑え、新たな方向性を打ち出した感もある。多くは語れないが、最後に明かされる、亜弓を殺した真犯人も衝撃的だった。
■ヒロイン役の恒松祐里、大ベテランの吉澤健の演技も印象深い
共演陣では、亜弓の父親・勝美を演じる吉澤健が出色だろう。吉澤は本作の演技で毎日映画コンクール助演優秀賞を受賞している。1960年代から活躍する大ベテランだが、映画賞等にはあまり縁がなかった人だけに価値がある。本作では、ずっと冷たく接していた郁男に対し、借金でボロボロになった時に助けようとする人情を巧みに表現してくれた。
美波役の恒松も健闘している。「深い海底の暗闇の中を彷徨っているような作品だけど、最後の方で微かに一筋の光が見えたように感じました」と語った恒松。その解釈も見事だし、演技もポイントをしっかり押えて好演だった。リリー・フランキーは白石監督の「凶悪」での怪演ぶりが印象深いが、本作ではひと味違う味わいを見せてくれる。また、白石監督とは同じ高校の一年後輩という音尾は、出番こそ多くないが存在感抜群。さすがは白石組の常連俳優である。
白石監督と香取慎吾が、それぞれの新境地に挑戦した映画「凪待ち」。2人の意欲が作品に昇華して、見ごたえのある一本になっている。視聴者に考えさせる要素の多い映画でもあり、重厚な人間ドラマとして堪能できる作品と言えるだろう。
文=渡辺敏樹
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