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小栗旬が繊細に表現する役の深みにより作品の面白さが倍増!野心家の環境省官僚を演じた「日本沈没―希望のひと―」

2025.5.31(土)

映画やドラマ、舞台などの役者業だけでなく監督業もこなす小栗旬。2021年にはハリウッド映画「ゴジラvsコング」にも出演し、その活躍は海を超えている。そんな小栗の圧倒的な演技力を堪能できる作品が、2021年の主演ドラマ「日本沈没―希望のひと―」だ。

同ドラマは、1973年に刊行された小松左京のSF小説「日本沈没」を原作に、地球温暖化が進行しつつある2023年の東京で、未曾有の危機に見舞われながらも一筋の希望の光を見出すために奮闘する人々を描く究極の人間ドラマ。小栗は主人公の天海啓示を演じている。

小栗旬が野心家の環境省官僚を演じた「日本沈没―希望のひと―」
小栗旬が野心家の環境省官僚を演じた「日本沈没―希望のひと―」

原作:小松左京『日本沈没』

2023年、東京。東山栄一総理(仲村トオル)が世界環境会議で、地球物理学の権威である世良徹教授(國村準)のもと、二酸化炭素を出さない次世代のエネルギー物質を海底岩盤の隙間から抽出するシステム「COMS<コムス>」のさらなる推進を高らかに表明した。さらに、官房長官の長沼周也(杉本哲太)が、"未来の日本"を見据え、各省庁から優秀な若手官僚たちを集めた"日本未来推進会議"を発足すると発表。そのメンバーに環境省の天海(小栗)、天海と大学の同期で友人でもある経産省の常盤紘一(松山ケンイチ)も選ばれていた。そんな折、ネットに関東沈没への警鐘を鳴らす田所雄介教授(香川照之)の記事が載る。この記事が原因で一部の団体がデモを起こし、天海は事態収束のために田所教授と対面することに。だが、田所教授は天海の話に耳を傾けず、「近い将来、伊豆沖で島が沈没する。その島の沈没は、私が恐れてきた関東沈没の前兆になる」という不気味な予言を放つ...。

■小栗旬の演技が作品の深みを倍増させる

原作:小松左京『日本沈没』

田所教授の不吉な予言が当たり、日本中は大パニックに陥る。そんな未曾有の危機の中、天海は官僚として、東山総理や政界のドン・里城弦副総理(石橋蓮司)、経団連の会長で世界的自動車メーカーの会長・生島誠(風間杜夫)ら海千山千な大物たちを相手どり、国家のために奮闘していくのだが、本作を「官僚という馴染みのない職業の主人公による奮闘劇」だと断ずることなかれ。もちろんそういう側面もあるのだが、さまざまな要素が絡み合い、決断すること自体がはばかられる難しい状況の中で、確信がなくとも決断していかなければならないという"大人ならではのシーン"が肝となっている。1つのことを決めるにしても、関係各所の都合や立場、その時の状況、過去から現在まで続くしがらみ、各人の思惑など、多様な要因で簡単には前に進んでいかない。また、苦しい状況の中、個人的な問題も浮上し、どちらを先にどうしていくのがベストなのか分からなくなってしまうなど、シチュエーションは大きく違うが、社会の中で生きる"大人ならではの複雑さ"をしっかりと描いており、大人たちにこそ"刺さる"内容となっている。

この"大人ならではの複雑さ"を、小栗が繊細かつ明確に表現。目的のためには手段を選ばず、時には強引な手法で政策を推し進める野心家である天海の大胆さや狡猾さはもちろん、難局に直面して打つ手がなくなってしまった時に進むべき道を選ぶシーンなど、千変万化のさまざまな状況が絡み合う中で選択し、決断をしていく"大人らしさ"を表現する演技のリアルさが、観る者の心を打つ。

生きていくというのは、「白か黒」、「是か非」、「右か左」などといった単純なものではない。いつも正解は分からない中で、正解っぽい方を選び取るだけだ。間違いはもちろんのこと、正解だったのか不正解だったのかも分からないこともざらにある。しかし、それでも選択し続けなければならないし、右を選んだことで左を捨てることも承知で進まなければならない。そんなメッセージを、小栗の演技から受け取ることができる。

小栗の演技が表現する、天海が難しい決断をする瞬間の、さまざまな思考が綾なす、言葉では言い表せない "大人ならではの複雑さ"に着目すると、より同作品の面白さを感じていただけることだろう。

文=原田健

放送情報【スカパー!】

日本沈没—希望のひと—
放送日時:2025年6月14日(土)12:00~全話一挙放送
チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※放送スケジュールは変更になる場合がございます