花組トップコンビ・永久輝せあ&星空美咲のプレお披露目公演「ドン・ジュアン」
2025.5.30(金)
花組トップコンビ・永久輝せあ&星空美咲のプレお披露目公演「ドン・ジュアン」('24年花組・御園座)がタカラヅカ・スカイ・ステージに登場する。2004年にカナダで初演後、パリをはじめ各地で上演されたミュージカルだ。日本では2016年に宝塚歌劇にて雪組が初演し、話題を呼んだ(ドン・ジュアン役は望海風斗)。その後、2019年、2021年には梅田芸術劇場でも上演されている。
日本上演で潤色・演出を手がけたのは生田大和だ。今回の花組版では、初演にあったいくつかの場面を削除・改変し、スッキリとわかりやすくなった印象だ。ドン・ジュアンとマリアの愛にフォーカスして丁寧に描き、プレお披露目公演に相応しい舞台となった。
物語の主人公は刹那的な快楽だけを追い求める男・ドン・ジュアン。容姿と家柄に恵まれ、剣の腕も立ち、女たちは彼を放っておくことはない。娘を一夜の慰みものにされたことを知った騎士団長はドン・ジュアンに決闘を挑み、殺されるが、亡霊となって現れ「お前は愛のために死ぬ」という不気味な言葉を残す。やがて、亡霊に導かれるようにして、ドン・ジュアンは彫刻家のマリアと出会い、真実の愛を知ることになる...。
主演の永久輝せあは、明るく天真爛漫な役も似合うが、「冬霞の巴里」のオクターヴ、「激情」 のドン・ホセなど、自身の心の闇に翻弄される役柄にも定評があり、本作でも恋に溺れ愛に死すドン・ジュアンを熱演。とりわけマリアに出会ってから頑なだった心がみるみる解けてゆく様が魅力的で、それだけに結末が切ないドン・ジュアンであった。
マリアを演じた星空美咲は「冬霞の巴里」のアンブルや「激情」のカルメンで永久輝の相手役を務め、難しい役どころに挑んできた。本作でも凛とした強さと芸術家としての誇り、スペインの女性らしい情熱もみなぎらせ、ドン・ジュアンにとっての特別な女性たる存在感を見せた。
今回の再演では騎士団長の亡霊(綺城ひか理)がドン・ジュアンを真実の愛に導くという役割が明確になっている。彼こそが物語を操っている感覚が初演より強まり、演じる綺城もこの役回りを楽しむ余裕を感じさせる。
ドン・ジュアンをひたすら見守り続ける友、ドン・カルロ(希波らいと)は辛抱役だが、華やかな立ち姿に惹き付けられる。誠実で自制心が強く、ドン・ジュアンとの表裏一体感のあるドン・カルロである。
ドン・ジュアンに心奪われるエルヴィラ(美羽愛)、そのピュアで真っ直ぐな心が他の女性たちの中で際立つが、報われぬ愛の顛末を自分で引き受ける強さも感じさせる。
マリアを愛するラファエル(天城れいん)は男のエゴの中にも人の良さをにじませ、それがマリアとのすれ違いの必然を余計に強く感じさせた。
初演から引き続き出演する二人が作品に深みを与えている。ドン・ジュアンの父ドン・ルイ(英真なおき)が息子への複雑な思いの中に父の情愛を垣間見せ、ドン・ジュアンを愛する女イザベル(美穂圭子)は酸いも甘いも噛み分けた女の業の深さを感じさせた。
紫門ゆりや演じるアンダルシアの美女が大胆にドン・ジュアンを誘惑する。その紫門がスペイン兵を率いるフェルナンドを演じている姿を見ると、同じ演者とは思えずこちらが眩惑しそうだ。
力強く響き渡るフラメンコの足音に圧倒される。セビリアの熱風の中、土埃が舞ってきそうな舞台に、観ている側も血がたぎる。そしてドン・ジュアンの最後の選択は? その時の表情は何を意味するのだろう? 改めて見直して考えてみたい。
文=中本千晶
放送情報【スカパー!】
ドン・ジュアン(’24年花組・御園座)
放送日時:2025年6月1日(日)21:00~ほか
放送チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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